人道援助をめぐる諸問題を共に考える 「人道援助コングレス東京 2025」を開催
~人道主義と多国間協調、再興の道を探る~ 4月22日~24日開催

国境なき医師団(MSF)は、人道援助をめぐる諸問題を共に考える「人道援助コングレス東京 2025」を、4月22日(火)から24日(木)の3日間、開催します。今年は「人道主義と多国間協調、再興の道を探る」をテーマに、今、明らかに軽視され、後退傾向にある人道主義の実践や多国間協調を再興(再活性化)するための方法やアプローチ、戦略を、皆さまとともに考えます。

開催の背景
今、人道援助はかつてないほどに難しい局面に立たされています。ドナー諸国からの援助カットが続き、米国政府の大幅な援助縮小が検討・進行しています。紛争地においては、援助従事者が支援を必要としている地域に入ることもままならず、避難所や学校、病院までもが攻撃にさらされています。また、これまで人道援助を積極的に支援してきた国々が安全保障や国内政策をより重視するようになり、多国間協調の機運が薄れ、人道主義の実践がないがしろにされているように見受けられます。最も支援を必要とする脆弱な層は、より一層顧みられない存在となり、支援を届けることはますます困難になっています。
第6回目の開催となる今回は、現場の事情を知る識者らが、シリアや、人道危機下のワクチン接種、医療への攻撃といった議題について意見を交わします。人道主義と多国間協調を再興するための議論が深まる場となることを期待します。
日本において人道援助をめぐる諸問題を共に考える場をつくりたいと考え、MSFは2020年より「人道援助コングレス東京」というプラットフォームを開設し、毎年開催しています。国際協力分野の関係者(実務者、政策立案者、研究者等)間の対話促進を目的とする場ですが、人道危機を取材するジャーナリスト、民間企業の方々や国際協力を学ぶ学生など、人道援助に関心を持つすべての人がご参加いただけます。
開催概要
日時:
4月22日(火)17:00~18:50 オンライン配信
4月23日(水)17:00~20:30 オンライン配信
4月24日(木)15:30~18:45 オンライン配信と会場のハイブリッド開催
会場:ベルサール高田馬場(東京都新宿区大久保3-8-2 住友不動産新宿ガーデンタワー1F 会議室1)
※申込締め切り:
オンライン配信 4月24日(会議終了時まで) 定員1000人
会場参加 4月23日 23:59まで 定員100人
いずれの場合も定員に達した場合には、開催日前に申し込みを締め切る場合があります。
言語:配信は日英同時通訳あり(24日の会場内は同時通訳なし)
参加費:無料
主催:国境なき医師団(MSF)
協力:赤十字国際委員会(ICRC)
詳細・申込:https://www.msf.or.jp/congress/
問い合わせ: jindo@tokyo.msf.org
プログラム(登壇者敬称略)
セッション一覧

4月22日(火) 17:00~18:50 |
オープニング&オンラインセッション1: シリア、今そして未来へ |
4月23日(水) 17:00~18:30 |
オンラインセッション2: 人道危機下のワクチン接種 ―特に脆弱な人びとを取り残さないために― |
4月23日(水) 19:00~20:30 |
オンラインセッション3: 医療は攻撃対象ではない:国際人道法と紛争下の医療保護の最前線 |
4月24日(木) 15:30~16:40 |
ハイブリッドセッション1: 日本のユースと考える人道援助の現在地とこれから |
4月24日(木) 17:00~18:45 |
ハイブリッドセッション2&クロージング: 人道主義と多国間協調、再興の道を探る |
4月22日(火)
17:00~18:50
オープニング&オンラインセッション1:シリア、今そして未来へ
10年以上にわたる内戦を経て、昨年12月に旧政権が崩壊し、新たな暫定政権が誕生したシリア。人道状況は今なお深刻で、2月27日時点で1650万人が人道援助を必要とし、740万人が国内避難民となっている(OCHA)。120万人近くが出身地に戻ったが、帰っても自宅が破壊されたことを知り、国内避難民キャンプにまた戻らざるを得なかった人びともいる。不発弾のリスクも高く、また公的なサービスが限られていることも、人々の帰還や生活再建を阻む要因となっている。シリア北東部や南部などで衝突や暴力が起きており、民間人の死傷者が出ているうえ、人道的アクセスは今なお制限されている。シリアに対する人道的対応は著しく資金不足に陥っており、3月までに必要な12億ドルのうち、確保できたのは10%に過ぎない(OCHA)。
本セッションでは、シリア内の異なる場所での人道ニーズ、援助活動が直面する課題、人権分野の現状や取り組みを把握し、今後いかに取り組んでいくべきかを議論する。
パネリスト:
・山崎やよい(イブラ・ワ・ハイト共同代表 / Stand with Syria Japan - SSJ 監事)
・景平義文(難民を助ける会(AAR Japan)中東・ヨーロッパ地域マネジャー)
・リーム・ムゲイス(MSF中東・北アフリカ地域人道・外交担当代表)他
モデレーター:石合力(朝日新聞編集委員)
4月23日(水)
17:00~18:30
オンラインセッション2:人道危機下のワクチン接種 ―特に脆弱な人びとを取り残さないために―
医療技術の進歩に伴い、多くの感染症に対しての治療法や予防法も普及しつつある。ワクチンは、コレラやジフテリア、はしかなどの感染症を予防する最も効果的な手段の一つである。「予防接種拡大計画(EPI: Essential Programme on Immunization)」は、場所や経済的地位に関係なくすべての子どもが公平に基本的なワクチンの接種を受けられることを目指す、世界保健機関(WHO)の取り組みで、2024年に50周年を迎えた。これらの対策の効果もあり、徐々にワクチン接種率は上昇してきた。
しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的まん延以降、特に低・中所得国を中心に世界のワクチン接種率は如実に下がっており、未だに多くの国が2019年以前の水準に達していない。予防接種アジェンダ2030(The Immunization Agenda 2030)は誰ひとり予防接種から取り残さないことを目標としている。しかし、私たちはこれを達成できるのだろうか。
特にアフリカ諸国では、いまだに多くの子どもたちが基本的なワクチン接種を受けられない状況にある。その理由は、脆弱な保健制度や不十分な医療体制、限られた人的資源、また欧米諸国を中心とする国際ドナーの資金援助に依存する状況など、さまざまである。このセッションでは、人道援助団体、WHOなどの国際機関、医療・研究機関、政府関係者など、様々な立場のスピーカーが集まり、特に脆弱な立場の人びとを「取り残すことなく」ワクチンを届けるための道を模索する。
パネリスト:
・サラ・ワニョイケ(世界保健機関(WHO) 国間サポートチーム(IST) 東部・南部アフリカ ワクチンで予防可能な疾病チームリード)
・氏家無限(国立国際医療研究センター 国際感染症センター トラベルクリニック医長)他
モデレーター:⽮野(五味)晴美(国際医療福祉⼤学医学部 国際医療者教育学 教授(代表)、感染症学 教授)
19:00~20:30
オンラインセッション3:医療は攻撃対象ではない:国際人道法と紛争下の医療保護の最前線
紛争地では、医療施設や医療従事者が危険にさらされ、命を救うための活動の継続が困難な状況に陥っている。 国際人道法(IHL)により医療も人道支援も保護されなければならないが、実際の戦時下でその保護が十分に機能しているとは言い難い。本セッションでは、医療施設が攻撃される背景やその結果としてもたらされる人道上の影響に斬りこむ。IHLの遵守はどうやったら徹底できるのか。紛争地で医療へのアクセスを守るために必要な対応策について議論する。
パネリスト:
・キム・ヒョジョン(世界保健機関(WHO)「医療への攻撃」イニシアティブ リード)
・榛澤祥子(ICRC駐日代表)
・クロード・マオン(MSF法務ディレクター)他

4月24日(木)
15:30~16:40
ハイブリッドセッション1:日本のユースと考える人道援助の現在地とこれから
人道援助を支えてきた国際社会の連帯が自国の政治的利益や安全保障を優先する姿勢により後退し、分断が進む中、個人の権利や自由が脅かされ、法の支配や民主主義も危うい状況が日々報道されている。リベラルデモクラシーが瓦解しつつあると感じられる昨今、次世代を担う若者への国際課題に関する意識啓発や支援活動の在り方が問われている。本セッションでは、日本を拠点に人道援助、国際協力や開発に取り組む学生団体の代表と共に、MSFスタッフ、メディア関係者、学者が人道援助の未来について討論する。ユースの現在地や活動団体の課題を共有し、活発な議論を通じて、若者への働きかけの方策を考える機会としたい。
パネリスト:
・竹下由佳(朝日新聞 with Planet編集長)
・園田亜矢(MSF フィールド人事部 アウトリーチ・マネジャー)他
モデレーター:
・武田詩織(早稲田大学国際教養学部4年生)
・鈴木志歩(慶應義塾大学法学部政治学科4年生)
17:00~18:45
ハイブリッドセッション2&クロージング:人道主義と多国間協調、再興の道を探る
今日、人道援助活動は、米国をはじめとするドナー国からの援助カットに直面し、活動地においてはガザやスーダンで顕著なように人道援助従事者が支援を必要としている地域に入ることもままならず、援助物資の搬入・配布も大きく制限され、避難所や学校、病院までもが攻撃にさらされている。多国間協調や援助協調の機運が薄れ、人道主義の実践がないがしろにされているように見受けられる現状を踏まえ、本セッションでは、国際政治と人道援助の関係を見つめ直すとともに、日本社会から、人道主義と多国間協調への理解や支持、実践を盛り立てていくために必要なこと、できることを、多様な分野からのスピーカーを迎えて議論する。
パネリスト:
・竹下由佳(朝日新聞 with Planet編集長)
・内海旬子(ピースウィンズ・ジャパン海外事業部中東・東欧マネジャー / 地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)理事)
・末藤千翔(MSF 活動責任者) 他
講演:佐藤寛(開発社会学舎 主宰)
コメント:田口一穂(外務省 国際協力局 緊急・人道支援課長)
モデレーター:榎原美樹(ジャーナリスト/ドキュメンタリスト、元NHK記者・キャスター)

国境なき医師団(MSF)について
民間で非営利の医療・人道援助団体。紛争地や自然災害の被災地、貧困地域などで危機に瀕する人びとに、独立・中立・公平な立場で緊急医療援助活動を届けている。現在、世界74の国と地域で、医師や看護師をはじめ5万2000人のスタッフが活動(2023年実績)。1971年にフランスで設立、1999年にはノーベル平和賞を受賞。1992年に日本事務局が発足し、日本国内では、援助活動に参加する人材の採用・派遣、人道危機や医療ニーズを伝える証言・広報活動、現地医療活動を支える資金調達などを行っている。
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