国内初のCCS事業化の取り組み
~2030年度までのCO2貯留開始に向け、調査7案件を候補として選定~
(※)CCS長期ロードマップ検討会 最終とりまとめ(経済産業省ホームページ)https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/ccs_choki_roadmap/pdf/20230310_1.pdf
日本政府は2020年10月に、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラル目標を掲げ、2021年4月には2030年度において温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを宣言しました。また「GX実現に向けた基本方針」(注1)において、2030年までのCCS(注2)事業開始に向けた事業環境を整備するため、模範となる先進性のあるプロジェクトを支援していく方針を示しています。
更に日本が主導する「アジアCCUSネットワーク」(注3)を通じて、日本の技術や制度、ノウハウを生かし、アジア全域での知見の共有や事業環境整備を推進しています。
こうした背景のもと、JOGMECは、我が国の資源エネルギーの安定供給と2050年のカーボンニュートラル実現への貢献のため、CCSの普及と拡大に向けて、ハブ&クラスター(注4)による事業の大規模化とコスト削減に取り組むモデル性のある事業を「先進的CCS事業」と位置付け、CO2の分離・回収から輸送、貯留までのバリューチェーン全体を一体的に支援してまいります。
今般、「先進的CCS事業」に対する初めての支援の取り組みとして、国内で排出されるCO2の貯留を2030年度までに開始する事業を想定し、2023年度に事業性調査を行う7案件を候補として選定しました。今後JOGMECは、選定した案件に関して契約締結に向けた協議を開始します。
今回選定した7案件は、発電、石油精製、鉄鋼、化学、紙・パルプ、セメント等の事業分野が幅広く参画し、産業が集積する北海道、関東、中部、近畿、瀬戸内、九州などの地域のCO2の排出に対応します。また、合計で年間約1,300万トンのCO2を貯留することを目標としており、うち5案件が国内での貯留、残り2案件がアジア大洋州での貯留を想定しています。
なお本調査については、事業の進捗に応じて事業実現の蓋然性を高めるための追加的な措置も検討していきます。
本委託調査を契機とし、先進的CCS事業のバリューチェーン全体への事業フェーズに応じた支援を提供することで、日本政府が目指す2030年までに年間600~1,200万トンのCO2貯留量の達成に向けて取り組みを推進していきます。
また国内貯留に留まらず、アジア大洋州を中心に海外貯留を含めてモデル性のあるCCSの展開を支援することにより、アジア大洋州地域全体での脱炭素化に向けた取り組みを促進します。
これにより、2050年時点で年間約1.2~2.4億トンのCO2貯留を可能とし、我が国の資源エネルギーの安定供給とカーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。
(注1)「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました(経済産業省ホームページ)
https://www.meti.go.jp/press/2022/02/20230210002/20230210002.html
(注2)Carbon Dioxide Capture and Storage:CO2の分離回収・貯留
(注3)「アジアCCUSネットワーク」が立ち上がりました(経済産業省ホームページ)
https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210622005/20210622005.html
加盟国は13カ国 (ASEAN10カ国、豪州、米国及び日本)
(注4)複数のCO2排出源からハブとなる拠点にCO2を集めた上で輸送し、貯留する効率的なサプライチェーンの形態
■ 令和5年度「先進的CCS事業の実施に係る調査」の委託先の公募の概要
本公募の詳細につきましては、以下をご確認ください。
令和5年度「先進的CCS事業の実施に係る調査」の委託先の公募(2023年3月30日)
https://www.jogmec.go.jp/news/bid/bid_10_00529.html
■ 令和5年度「先進的CCS事業の実施に係る調査」に選定した案件の概要(以下、北から南に記載)
1)苫小牧地域CCS事業
会社名 | 石油資源開発株式会社、出光興産株式会社、北海道電力株式会社 |
貯留地域 | 苫小牧地域(油ガス田又は帯水層) |
貯留量 | 約150万トン/年 |
排出源 | 苫小牧地域製油所、発電所 |
輸送方式 | パイプライン |
事業の特徴 | CO2を資源として再利用する「CCU/カーボンリサイクル」やバイオマス発電とCCSを組み合わせた「BECCS」とのCO2輸送パイプラインの接続も視野に入れた、CCUS事業を推進する。 |
2)日本海側東北地方CCS事業
会社名 | 伊藤忠商事株式会社、日本製鉄株式会社、太平洋セメント株式会社、三菱重工業株式会社、伊藤忠石油開発株式会社、株式会社INPEX、大成建設株式会社 |
貯留地域 | 日本海側東北地方他(海域帯水層) |
貯留量 | 約200万トン/年 |
排出源 | 全国を幅広くカバー |
輸送方式 | 船舶及びパイプライン |
事業の特徴 | 鉄鋼、セメント産業などを対象に、複数のCO2排出地域とCO2貯留地域を船舶輸送で結ぶ拡張性の高い広域事業を推進する。 |
3)東新潟地域CCS事業
会社名 | 石油資源開発株式会社、東北電力株式会社、三菱ガス化学株式会社、北越コーポレーション株式会社、株式会社野村総合研究所 |
貯留地域 | 新潟県内(既存油ガス田) |
貯留量 | 約150万トン/年 |
排出源 | 新潟県の化学工場、製紙工場、発電所 |
輸送方式 | パイプライン |
事業の特徴 | 化学、紙、電力などを対象に、既存の油ガス田を活用し、脱炭素燃料や環境価値などの付加価値創出を狙った事業を推進する。 |
4)首都圏CCS事業
会社名 | 株式会社INPEX、日本製鉄株式会社、関東天然瓦斯開発株式会社 |
貯留地域 | 首都圏他(海域帯水層) |
貯留量 | 約100万トン/年 |
排出源 | 首都圏の製鉄所を含む複数産業 |
輸送方式 | パイプライン |
事業の特徴 | 首都圏の主要な臨海コンビナートの排ガスなどを対象とした拡張性の高い事業を推進する。 |
5)九州北部沖~西部沖CCS事業
会社名 | ENEOS株式会社、JX石油開発株式会社、電源開発株式会社 |
貯留地域 | 九州北部沖~西部沖(海域帯水層) |
貯留量 | 約300万トン/年 |
排出源 | 瀬戸内・九州をカバー |
輸送方式 | 船舶及びパイプライン |
事業の特徴 | 瀬戸内を含む西日本広域を対象に、海域での大規模CO2貯留事業を推進する。 |
6)マレーシア マレー半島東海岸沖CCS事業
会社名 | 三井物産株式会社 |
貯留地域 | マレーシア マレー半島東海岸沖(海域減退油ガス田、帯水層) |
貯留量 | 約200万トン/年 |
排出源 | 近畿・九州地域等の化学・石油精製を含む複数産業 |
輸送方式 | 船舶及びパイプライン |
事業の特徴 | 日本からのCO2受入れに積極的なマレーシア国営石油会社との協力事業を推進する。 |
7)大洋州CCS事業
会社名 | 三菱商事株式会社、日本製鉄株式会社、ExxonMobil Asia Pacific Pte. Ltd. |
貯留地域 | 大洋州(海域減退油ガス田、帯水層) |
貯留量 | 約200万トン/年 |
排出源 | 中部(名古屋、四日市)の製鉄所を含む複数産業 |
輸送方式 | 船舶及びパイプライン |
事業の特徴 | 名古屋港、四日市港の幅広い産業を対象に、大洋州の海域での貯留事業を推進する。 |
■ (参考)CCS事業への政府支援
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/ccs_choki_roadmap/pdf/20230310_1.pdf
リリース本文はこちら↓
https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_01_00034.html?mid=pr230613_01
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