スーダン:性暴力被害者への支援の拡大を──子どもたちも深刻な被害に

国境なき医師団

スーダンからチャドに逃れてきた人びとが暮らす難民キャンプ=2024年11月 ⓒ Thibault Fendler/MSF

内戦が2年以上にわたり続いているスーダン。西部のダルフール地方では、女性や少女が絶え間なく性暴力の危険にさらされている。男性や少年も例外ではない。国境なき医師団(MSF)は、国際人道法に従って民間人を保護するよう紛争当事者へ求めるとともに、性暴力の被害者に対する医療ケアと援助を早急に拡大することが必要だと訴える。

常に避けられない危険

現地の女性たちは壮絶な経験をMSFに証言した。西ダルフール州の27歳の女性は語る。

 

「夜に複数の人が来て女性たちをレイプして、家畜を含め全てのものを奪っていきました。暴行を受けている女性たちの叫び声が聞こえました。男性たちは、トイレや部屋の中などに隠れていました。私の夫や兄弟もそうです。出て行けば殺されるからです」

 

レイプや暴行を受ける危険があるのは、町が攻撃された時だけではない。人道援助が限られているため、水や食料を得るために長距離を歩いたり、危ない場所で働いたりせざるを得ず、常に危険が避けられないのだ。自宅でも襲われる危険があり、どこにいても安全の保証はない。

 

MSFは、2024年1月から2025年3月までに、南ダルフール州で659人の性暴力の被害者に医療援助を行った。その94%は女性と少女で、18歳未満が31%、10歳から19歳が29%、10歳未満が7%、5歳未満が2.6%という内訳だった。

 

被害者たちは以下のように答えた。

  • 86%が、レイプされたと回答

  • 56%が、民間人ではない者(軍、警察、その他の治安部隊、非国家武装集団の構成員)による襲撃を受けたと回答

  • 55%が、襲撃の最中にさらなる身体的暴力を受けたと回答

  • 34%が、畑で農作業をしている間か、畑に行く途中で性暴力を受けたと回答

憂慮すべき数字だが、実態はこれよりもさらに悪い可能性が高い。

子どもたちが性暴力の被害に

現在80万人超のスーダン難民が避難しているチャド東部も同じ状況にある。国境の町アドレでは、2025年1月以降MSFが治療した44人の性暴力被害者のほぼ半数が子どもだった。ワジ・フィラ州では、2025年1月から3月の間に94人の被害者が治療を受け、そのうち81人は18歳未満だった。

 

スーダンの西ダルフール州ムルネイで、ある男性はMSFに「3カ月前、13歳の少女が3人の男にレイプされ、谷間に置き去りにされました。小さな女の子でした」と話した。

  

複数人にレイプされたと報告する被害者も多い。チャド東部のメチェでは、2025年1月から3月までに治療を受けた24人の被害者のうち11人が、複数の人に襲われたと話した。

 

17歳の少女はこう証言した。

 

「ダルフールのクルブスに着いたとき、3人の女性がRSF(準軍事組織「即応支援部隊」)の戦闘員に取り囲まれているのを見ました。RSFは私たちにも、3人と一緒にいるよう命じました。『お前らはスーダン国軍兵の妻か、その娘だ』と言って…。そして私たちは彼らに叩かれ、路上の公衆の面前でレイプされました。RSFの男たちは9人いて、そのうちの7人に私はレイプされました。その時の記憶は消してしまいたいです」

 

「敵側の支持者」だと決めつけられて被害を受けた人たちもいる。ある女性は、次のようにその経験を語った。

 

「私は救急看護の資格を持っています。RSFは私たちを止めて、バッグを渡すよう要求しました。中にあった資格証を見て、RSFは『お前はスーダン国軍を治療したいのか!敵を治したいということだな!』と言い出したのです。そして、彼らは資格証を燃やし、私を連れ去ってレイプしました。他の人には床に伏せていろと命じて。私は、姉妹や他の女性たちと一緒にいましたが、資格証を持っていた私だけをレイプしたのです」

性暴力被害者の証言を元にしたイラスト ⓒ MSF 

偏見や報復への恐怖──被害者がケアを受ける難しさ 

性暴力は医療上の緊急事態であることから、被害を受けた後、速やかに診療や支援を受ける必要がある。被害直後だけでなく長期にわたって心身がむしばまれ、命に危険を及ぼすこともあるからだ。しかし、性暴力の被害者が治療や保護を受けるには大きな壁が存在する。その背景には、診療や支援を受けられる場が少ないこと、支援の存在が知られていないこと、施設までの交通費の高さ、そして、恥の意識や、偏見や報復への恐怖から被害について話すのを避けることなどがある。

 

チャド東部で、27歳の女性は次のように話した。

 

「家族に恥をかかせることになるので、地元の人には何も言えません。だから、私の身に起きたことを今日まで誰にも話さなかったのです。今ようやく医療の助けを借りに来ました。怖くて病院にすら行けませんでした。家族には『誰にも言わないで』と言われました」

 

診療や支援は、被害者にとって明確で利用しやすいものでなくてはならない。MSFは昨年後半、スーダンで最も多くの避難民が暮らす南ダルフール州で、性暴力の被害者に対するケアとして地域に根ざした支援を始めた。助産師や地域保健に関わる人たちが緊急避妊薬の使用や心理的応急処置の研修を受け、必要な備品も支給された。また、包括的なケアを受けられるよう、MSFが支援する診療所や病院への搬送も行われる。地域に根ざしたこのモデルが導入されて以来、ケアを受けに来る女性や若者の数は急増した。

 

MSFの緊急対応医療マネジャー、ルース・カウフマンはこう訴える。

 

「性暴力被害者のための診療や支援は足りていません。スーダンの他の医療サービスと同様に、今すぐ拡充しなければなりません。女性や少女が大半を占める性暴力被害者は、心のケアをはじめとした医療ケアや、保護を緊急に必要としています。性暴力被害者がケアを受けるまでの高い壁を最小限にしなければなりません」

 

残虐な攻撃やレイプは、今すぐ止めなければならない。そして、紛争当事者は国際人道法に従って民間人を保護しなければならない。ダルフール地方とチャド東部で、性暴力の被害者に対する医療と人道援助の早急な拡大が必要だ。

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会社概要

国境なき医師団(MSF)日本

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URL
https://www.msf.or.jp/
業種
医療・福祉
本社所在地
東京都新宿区馬場下町1-1  FORECAST早稲田FIRST 3階
電話番号
03-5286-6123
代表者名
村田慎二郎
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年12月