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【国立科学博物館】ふたたび見つかった民家の水槽だけで発生するモトスマリモ

文化庁

 独立行政法人国立科学博物館(館長:篠田謙一)は、神奈川県川崎市の民家の水槽から発生したマリモ類がモトスマリモ (Aegagropilopsis clavuligera: アエガグロピロプシス・クラブリゲラ)であることを明らかにした。山梨県甲府の民家で見つかったものに次いで国内で2例目の報告になる。
 自然環境下では見つかっておらず、国内では水槽からのみ見つかっていることから、人工環境下で発生しやすいと考えられる。国立科学博物館では、更なる発生例を探している。
  • 研究のポイント

・川崎市の民家で、熱帯魚(コリドラス)を飼育していた水槽にマリモに似た藻類が大量に発生したため、国立科  

学博物館に持ち込まれた。

・この藻類の種レベルの差違をみるのに重要な遺伝子を解析した結果、オランダの熱帯水族館から報告されたモト スマリモ(Aegagropilopsis clavuligera:アエガグロピロプシス・クラブリゲラ)の配列と一致した。また、顕微鏡観察の結果、形態的特徴も種と矛盾しなかった。

・本種の日本での出現は、2022年に当館が公表した甲府の民家の水槽から見つかった日本新産報告に次いで2例目である。甲府の民家のものと今回川崎の民家で見つかったものは、遺伝的に違いがみられることから由来が異なると考えられる。

・マリモに似た球状の群体をつくるものとしては、「マリモ」「タテヤママリモ」「モトスマリモ」があるが、タテヤママリモとモトスマリモ(Aegagropilopsis属)は、湖沼でのみ見られるマリモ(近縁のAegagropila属)と異なり、人為的な環境下で発生しやすいと考えられた。国立科学博物館では、更なる発生例を探している。


  • 研究の背景

 国立科学博物館では、2011年から山中湖のマリモ類の研究を行っており、山中湖村教育委員会と共同で2度の学術調査も行ってきました。2022年には甲府の民家の水槽からマリモが見つかったと連絡があり、調査の結果、日本新産の Aegagropilopsis clavuligera:(アエガグロピロプシス・クラブリゲラ)であることを明らかにし、モトスマリモと同定しました。

 このモトスマリモの由来を明らかにするために2023年から富士五湖の本栖湖・西湖・山中湖で潜水調査を行ってきましたが、現在まで、モトスマリモを発見することはできていません。ところが今回、川崎市の民家の水槽からマリモ状のものが発生していると当館に連絡があり、調査を進めたところ、日本で2例目のモトスマリモの出現例と判明しました。


川崎市の民家の水槽で飼育されているモトスマリモ(左:図1)その拡大写真(右:図2)川崎市の民家の水槽で飼育されているモトスマリモ(左:図1)その拡大写真(右:図2)


  • 研究の内容

 今回見つかったモトスマリモは、川崎市の民家で、熱帯魚(コリドラス)を飼育していた水槽に発生しました。このモトスマリモ以外の生物はペットショップから購入されたもので一般的に流通している生物です。

 飼育者によると約3年前に多摩川の河川敷から石を拾い水槽に入れたところ、マリモ状の藻類が石の上にモコモコと発生してきたそうです(図1、2)。状況からはこの多摩川の石にモトスマリモが付着していた可能性が高いと考えています。

 1例目の甲府の民家の水槽で発見されたものとは、顕微鏡下での形態や遺伝子(図3)が異なることから由来は別で直接的な関係はないと考えられます。

 モトスマリモを含むAegagropilopsis属は、阿寒湖で有名なマリモを含む近縁のAegagropila属と異なり、飼育環境下で多く見られます。有名なタテヤママリモ(Aegagropilopsis moravica)は、富山県立山町の民家の庭に人工的に作った池から発生しました。モトスマリモは甲府市の民家の水槽で見つかった1例目も今回も家庭の観賞用の飼育水槽で発生しています。外国でもモトスマリモはオランダの熱帯水族館の人工環境下で発生しています。この様にこれらの種類は人工環境下で増えやすい特徴を持っていると推定されます。また、自然環境下では、丸くならず石面上に糸状藻類として生育しているため、見過ごされているのかも知れません。


図3 「モトスマリモ」「マリモ」「タテヤママリモ」のリボゾームRNA(18S rRNA)による系統関係図3 「モトスマリモ」「マリモ」「タテヤママリモ」のリボゾームRNA(18S rRNA)による系統関係


  • 当研究成果から期待されること、今後の課題

 今回を含むモトスマリモの2例目の発見は、いずれも当館が実施するマリモ研究に関わる報道をきっかけとして、発見されました。今回の発見が報道されることで、日本国内で更なる発見につながる可能性があり、それを期待しています。また、発見例が増えることで本種の由来や分布が分かってくると考えています。

 一方、自然環境下での本種の存在を明らかにすることが、その由来を考える上で貴重と考えられ、私たちも昨年来潜水調査などを続けていますが、発見に至っていません。今回の発見により、捜索範囲として多摩川水系も加え、発見に努めたいと考えています。


  • 発表論文

表題:球状になるAegagropilopsis clavuligeraの日本で2例目の出現

Second Record of Algal Ball-forming Aegagropilopsis clavuligera (Cladophorales, Ulvophyceae)

from Japan

著者:辻彰洋 (Tuji, Akihiro)・新山優子 (Niiyama, Yuko)

掲載誌:国立科学博物館研究報告 B類(植物学) 

Bulletin of the National Museum of Nature and Science Series B (Botany)

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1968年06月
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