世界的な教育危機 ユニセフ、教育への投資増加を訴える
15億人以上が初等教育レベルのままおとなに 求められる質の向上と公平な教育
※本信はユニセフ本部が発信した情報をもとに、日本ユニセフ協会が編集・翻訳したものです。
※本信の原文は、http://www.unicef.org/media/media_92766.html からご覧いただけます。
※本報告書のPDFデータ(英文)は、http://report.educationcommission.org からダウンロードいただけます。
【2016年9月18日 ニューヨーク発】
グローバルな教育機会の資金調達に関する国際委員会(International Commission on Financing Global Education Opportunity)が今日発表した報告書では、全ての子どもが学校に通い、教育を受けることができるようにするという意欲的な目標にも関わらず、2030年には低所得国に暮らす生徒の3分の2以上が、基本的な初等教育レベルのスキルを学ぶことができない、と指摘しています。
報告書「学ぶ世代:変わりゆく世界のための教育に投資する(The Learning Generation: Investing in Education for a Changing World)」は、各国政府からの教育への投資が早急に増加しなければ、低所得国の子どもたちは、世代から世代へと引き継がれる貧困の連鎖に囚われ、おとなになった時に社会や経済に貢献するための技能や知識を得られないままになる、と言及しました。
「全ての国の、全ての地域の、全ての家庭の、全ての子どもたちは、単に教室に座っているだけでなく、質の高い教育を、脳の発達においても最も重要な時期である幼少期から受ける権利があります」と、ユニセフ事務局長のアンソニー・レークは述べました。「私たちは、早く、教育の質への、そして公平な教育への投資を行う必要があります。さもないと、多くの子どもたちがもって生まれた能力を活かすための知識やスキルを持たずにおとなにならざるを得なくなるのです」
報告書は、2030年には、初等教育以上の教育を受けていないおとなが15億人以上に達しているだろう、と述べています。ユニセフは、この報告書が述べる提言を背景に、世界的な教育危機と呼べるであろうこの事態に取り組むため、各国の教育に対する支出額を3%から5%増加することを呼びかけています。
報告書からわかるその他の主な調査結果:
- 現在、低~中所得国で基本的なスキルを学習できているのは、初等教育学齢期の子どもの半数と中等教育学齢期の子どもの4分の1強だけである。
- 3億3,000万人の小中学生が、最も基礎的な教育の成果をあげられていない。
- この危機的状況は人口の増加と共に大きくなっており、2030年には低~中所得国の学齢期の子どもは14億人になると試算されている。
- 学校に通うことができない女の子の数は、男の子の2倍になる。
* * *
■ 報告書「学ぶ世代:変わりゆく世界のための教育に投資する」の12の提言
<実行> 成功を収める教育制度は、結果を前面や中心に据える。
・基準を設け、進行状況を把握し情報を公開する。
・最善の結果をもたらすものに投資する。
・無駄を省く。
<技術革新> 成功を収める教育制度は、成果を出すための新しく創造性ある手法を開発する。
・教育分野の労働力を強化し、多様化させる。
・授業や学習のための技術を利用する。
・国家以外とのパートナーシップを拡充する。
<インクルージョン> 成功を収める教育制度は、最も不利な立場にいる人々や社会から疎外された人々を含む全ての人に届く。
・子どもたちや貧しい人々を優先し、積極的な普遍主義を持つ。
・教育を妨げる要因をなくすために、部門を超えた投資を行う。
<融資> 成功を収める教育制度には、より多くより良い投資が必要である。
・より多くより良い国内の財源を教育のために利用する。
・教育に対する国際的な資金を増やし、より効果的に活用する。
・教育のための多国間開発銀行(Multilateral Development Bank)への投資メカニズムを構築する。
・教育を受ける世代のためのリーダーシップと説明責任を確かなものにする。
* * *
■グローバルな教育機会の資金調達に関する国際委員会(International Commission on Financing Global Education Opportunity)について
この委員会は、世界の指導者、政策立案者や研究者が参加する、子どもや若者たちの平等な教育機会のために、新しく、説得力のある投資事例を開発し、資金調達の道を築く国際的な取り組みです。
この報告書は1年に及ぶ分析の総括であり、105か国にわたる300ものパートナー、30以上の研究機関が関わったものです。報告書原文は http://report.educationcommission.org よりご覧いただけます。
■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する34の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国34の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 (www.unicef.or.jp)
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