ロヒンギャ:国連会合に向け、難民キャンプからの声をまとめた報告書を発表──8割超の難民が「ミャンマーに戻っても安全でない」

ニューヨークの国連本部で9月30日、「ミャンマーのロヒンギャ・ムスリムやその他の少数民族の状況に関するハイレベル会合」が開催されるのに合わせ、国境なき医師団(MSF)はロヒンギャ難民からの調査に基づく報告書を発表した。
報告書「選択肢という幻影―ロヒンギャ難民キャンプからの声(原題:The Illusion of Choice: Rohingya Voices Echo from the Camps)」は、ミャンマーでの大規模な迫害から8年が経過した現在も危機が続いており、ロヒンギャの人びとが絶え間ない暴力や援助の減少、そして自らの未来を選ぶことができない状況に直面していることを伝えている。
MSFは、人びとが求めているのは援助だけではなく、権利と安全が保障された帰還か尊厳ある再定住が可能な未来だと訴える。
難民キャンプの427人を対象に調査
調査は、バングラデシュ・コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプにおいて、MSFの医療施設で診療を受けた18歳以上の427人(男性46%、女性54%)を対象に、2025年8月下旬から9月初旬にかけてロヒンギャの言語で実施。以下のような結果が明らかとなり、100万人を超えるロヒンギャが直面する課題を浮き彫りにしている。
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84%が、ミャンマーに戻っても安全ではないと感じている。
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58%が、コックスバザールの難民キャンプで安全ではないと感じている。
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56%が、医療を受けることへの困難が増していると回答。
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国連会合の存在を知っていたのは37%に留まり、大半はソーシャルメディアを通じて非公式に情報を得ていた。
安心して戻ることはできない
報告書には、2024年の新たな避難の波でバングラデシュに到着した難民の証言も含まれている。ミャンマー・ラカイン州北部から2024年にコックスバザールに逃れたある男性は、ドローン攻撃により娘を失った体験を語った。
「ミャンマーで娘と一緒にいた時、ドローンが近くに落ちて私の腹と足に命中しました。私が意識を取り戻したとき、娘はすでに死んでいました。私は傷口を服の切れ端で縛り、地面を這って進み、助けを求めて叫びました。午前3時でした。私は再び意識を失い、翌日救出されました」
新たに到着した難民たちのこうした証言は、なぜ多くの人が現在の状況下では安心してミャンマーに戻れないかを物語っている。
ミャンマーに戻ることへの恐怖がある一方、難民の多くはキャンプでの未来のなさに絶望している。ある難民は涙を流しながらこう語った。
「ミャンマーに帰りたいかと聞かれれば、帰りたくないです。私は子どもの未来に夢を持っています。私は教育を受けていないし、チャンスも一つもない。ここ(バングラデシュ)には、子どもの教育に希望はありません。でも子どもには教育を受けさせたいのです。財産やお金を奪うことはできても、知識や学んだことを奪うことは誰にもできないですから」

権利と安全が保障された帰還か尊厳ある再定住を
キャンプでは必要不可欠なサービスが削減され、状況の悪化が進んでいる。国際社会からの資金が大幅に削減されたことで、援助にほぼ全面的に依存している人びとの生活が危機に瀕している。
2023年後半以降、ミャンマーのラカイン州で紛争が激化し、ロヒンギャの人びとがバングラデシュに逃れる新たな波が押し寄せている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は2025年7月までに、新たに到着した難民の数を15万人と発表した。
今週の国連会合を前に、ロヒンギャの人びとは未来への懸念と要求を明らかにしている──「私たちは、尊厳と平等のある、より良い生活を望んでいます。誰もが平和な生活を望んでいるのです。私たちは、市民権、安全、家屋、アイデンティティのある帰還を望んでいます」
現地の活動を統括するポール・ブロックマンはこう話す。
「コックスバザールで8年間も不安定な状態に置かれているロヒンギャ難民の人道状況は、依然として深刻です。将来への道筋が見えないことや、悪化する精神状態が希望を蝕んでいます。
ロヒンギャの人びとが求めているのは、単なる避難所や食料配給だけではありません。権利と安全が保障された帰還、あるいは尊厳ある再定住の先にある未来を望んでいます。そのためには、すべての議論において彼らの声を中心に据えること、基本的なサービスへのアクセスを提供すること、自立のための機会を確保することが必要です。そして、安全で尊厳が保たれた、自発的な帰還が真に可能となるよう取り組むことが求められます」
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