パソナ総合研究所『全世代型社会保障に関する意識調査』 国民が望む社会保障制度のあり方とは何か 世代別・男女別に分析
株式会社パソナグループ(本社:東京都千代田区、代表取締役グループ代表 南部靖之)で、社内外の専門家とともに様々な社会課題の解決に向けたフォーラムの開催や提言を行う「パソナ総合研究所」(所長:竹中平蔵)はこの度、20代~70歳以上まで全世代を対象に、『全世代型社会保障に関する意識調査』を実施いたしました。
政府は「全世代型社会保障」として、誰もが安心できる社会保障制度に関する検討を進め、昨年12月に中間報告をまとめました。こうした政府の進める検討を受けて、各世代・男女毎に現行の社会保障制度に対する認識や、これからの改革の方向性についての意識を探り、その傾向をまとめました。
政府は「全世代型社会保障」として、誰もが安心できる社会保障制度に関する検討を進め、昨年12月に中間報告をまとめました。こうした政府の進める検討を受けて、各世代・男女毎に現行の社会保障制度に対する認識や、これからの改革の方向性についての意識を探り、その傾向をまとめました。
【調査結果のポイント】
●政府による「全世代型社会保障」を知っている人は僅か3.1%で、聞いたことがある人を含めても3割弱に留まった。現行の社会保障制度が「持続可能」と考える人は僅か4.3%で、わからないとする人を除いたほとんどの人が「持続不可能」と回答した。
●改革が必要な分野は「年金制度」が1位で、次に「医療保険制度」「子育て・教育支援の充実」が拮抗。改革の方向性については、20代~50代の働く世代では、給付水準・内容の見直しを求める声が多かった。
●国に求める年金制度改革の方向性は、「消費税の目的税化などの抜本改革」が1位(18.3%)だったが、意見のまとまりは見られなかった。
●同じく医療保険制度改革の方向性は、国民医療費の増加抑制のために「保険の適用範囲を含む各種見直しを許容」する人が28.2%で、保険料アップや増税、自己負担などの「負担増を許容」する人も合計で22.1%に上った。
●同じく介護保険制度改革の方向性は、高齢者を中心に「健康維持の努力で給付費用の抑制が可能」とする意見が1位(20.3%)で、「担い手の負担増を避けるため制度を縮小」(16.7%)と「サービス内容拡充のため負担増もやむを得ない」(16.0%)が続いた。
●就労人口の拡大策については「65歳以上就労者の増加策」が約4割、「女性就労者の増加策」が約2割だった。高齢者については「定年延長等」を求める声が多く、女性については、「保育所や学童保育の拡充」「短時間労働や在宅労働などの拡充」が多かった。
<調査概要>
調査方法:
インターネットを通じたアンケート方式
調査期間:
2020年2月26日~28日
回答者数:
1,292名
回答者属性:
20代、30代、40代、50代、60代、70歳以上の男女(各属性100名超)
<詳細結果はこちら>
https://www.pasonagroup.co.jp/pi/report/
1.社会保障全般
■「全世代型社会保障」について聞いたことがある人は3割弱にとどまり、現行の社会保障制度が持続可能と考えている人は僅か4.3%。
「全世代型社会保障」とは何か知っているかを聞いたところ、年齢が高いほど認知率が上がり、女性よりも男性の方が高い結果となりました。一方、現行の社会保障制度の長期的な持続可能性については、半数強がわからないと回答しましたが、残りの方の約9割は持続不可能であると答えています。
■ 改革が必要な分野は「年金制度」が1位で、次に「医療保険制度」「子育て・教育支援の充実」が拮抗。改革の方向性は、給付水準・内容の合理化を求める意見が多いが、60代以上は現行の給付水準・内容の維持を求める意見が多数。
改革を進めるべき分野や方向性については、世代により差がみられる結果となりました。
改革が必要な分野では、「年金制度」が20代・30代の女性を除きどの世代でも1位となりましたが、2位は「医療保険制度」と「子育て・教育支援の充実」が拮抗しています。前述した20代・30代の女性では「子育て・教育支援の充実」が半数を超えて1位になる一方、60代以上の方では「医療保険制度」を挙げる方の割合が高くなっており、世代に応じた優先順位が表れています。また、70歳以上の男性は「就労支援」、同年代の女性は「介護保険制度」の割合が高くなるのも特徴です。
改革の方向性では、30代~50代を中心に全ての世代で「働き手の負担増には限界があるため社会保障給付水準・内容の合理化を行う」が1位となりました。しかし60代以上になると、働き手の増加策や増税等により「現行の給付水準を維持する」とした回答の合計が、「給付水準・内容の合理化を行う」とする回答を上回り、現在年金制度の受益者かどうかで意見が分かれました。
■ 制度改革の方向性は、「消費税の目的税化など抜本的な改革」、「働き手の増加」、「支給開始時期を70歳に向けて延ばす」の順だが、意見が収れんしていない。
年金制度の改革の方向性は、70歳以上を除いて「消費税の目的税化など抜本的な改革」を求める意見が1位ですが、他の回答を大きく上回るわけではなく、具体的な方向についての意見は収れんしていない現状が窺われます。70歳以上の方では、回答により前提条件は異なるものの「現行の給付水準の維持」を求める声の合計が半数を超えています。
■ 改革の方向性は、国民医療費の増加抑制のため「保険適用範囲を含めた各種見直しはやむを得ない」が1位となり、水準の維持のため増税や自己負担増など「負担増加で対応」とする回答の合計が続いた。
少子高齢化が進む中これ以上の負担増は困難として、「公的医療の適用範囲を含めた見直しをやむを得ない」とする回答が1位(28.2%)となりましたが、現行制度の維持のため「保険料の引上げや増税」、「自己負担の増加」を許容する方の割合も合計で22.1%に達しています。
一方、健康維持のための運動や未病対策で「国民医療費の増加は抑制できる」と考える方は年齢が高くなるほど増え、70歳以上では1位となり、願望も含めて楽観的な見方をしていることが窺えます。
4.介護保険制度
■改革の方向性は、高齢者を中心に「健康維持等の取組で給付費用の抑制は可能」が1位で、「担い手の負担増を避けるため制度を縮小」と「サービス内容拡充のため負担増もやむを得ない」が拮抗。
制度改革の方向性を聞いたところ、高齢者を中心に「健康維持等の取組みにより給付費用の抑制は可能」が1位(20.3%)となり、「担い手の負担増は困難なため制度を縮小」(16.7%)と「サービス内容の拡充のため自己負担増もやむを得ない」(16.0%)が続きました。
男性が女性より「負担増もやむを得ない」とする傾向が強い一方、女性は「健康維持等の取組みにより給付費用の抑制は可能」とする意見が多く、男女の違いが表れる結果となりました。
■就労人口の拡大策は、約4割が「65歳以上就労者の増加策」、約2割が「女性就労者の増加策」と回答。高齢者向け施策は定年や再雇用期間の延長が、女性向け施策は保育所等の拡充が1位。
就労人口の拡大策について聞いたところ、「65歳以上の就労者の増加策」が42.6%で最も高く、続いて「女性の就労者の増加策」が21.1%、「外国人労働者の大幅な拡大」が11.0%になりました。
20代では「女性就労者」が「65歳以上」を上回りますが、年代が上がると共に「高齢者」とする回答が非常に多くなります。
また、具体的な拡大策については、高齢者向けには「定年や再雇用期間の延長」を挙げる回答が多く、50代以降は半数を超えました。一方、「米国のように定年廃止や弾力的な賃金設計」にも40代(22.6%)を中心に一定の支持があることがわかりました。
女性向けの拡大策としてどのような対策が必要か聞いたところ、「保育所や学童保育の拡充」が1位となりましたが、「短時間労働や在宅勤務の拡充」や「同一労働同一賃金などパートタイムの処遇向上」も大きな支持を集めました。
●政府による「全世代型社会保障」を知っている人は僅か3.1%で、聞いたことがある人を含めても3割弱に留まった。現行の社会保障制度が「持続可能」と考える人は僅か4.3%で、わからないとする人を除いたほとんどの人が「持続不可能」と回答した。
●改革が必要な分野は「年金制度」が1位で、次に「医療保険制度」「子育て・教育支援の充実」が拮抗。改革の方向性については、20代~50代の働く世代では、給付水準・内容の見直しを求める声が多かった。
●国に求める年金制度改革の方向性は、「消費税の目的税化などの抜本改革」が1位(18.3%)だったが、意見のまとまりは見られなかった。
●同じく医療保険制度改革の方向性は、国民医療費の増加抑制のために「保険の適用範囲を含む各種見直しを許容」する人が28.2%で、保険料アップや増税、自己負担などの「負担増を許容」する人も合計で22.1%に上った。
●同じく介護保険制度改革の方向性は、高齢者を中心に「健康維持の努力で給付費用の抑制が可能」とする意見が1位(20.3%)で、「担い手の負担増を避けるため制度を縮小」(16.7%)と「サービス内容拡充のため負担増もやむを得ない」(16.0%)が続いた。
●就労人口の拡大策については「65歳以上就労者の増加策」が約4割、「女性就労者の増加策」が約2割だった。高齢者については「定年延長等」を求める声が多く、女性については、「保育所や学童保育の拡充」「短時間労働や在宅労働などの拡充」が多かった。
<調査概要>
調査方法:
インターネットを通じたアンケート方式
調査期間:
2020年2月26日~28日
回答者数:
1,292名
回答者属性:
20代、30代、40代、50代、60代、70歳以上の男女(各属性100名超)
<詳細結果はこちら>
https://www.pasonagroup.co.jp/pi/report/
1.社会保障全般
■「全世代型社会保障」について聞いたことがある人は3割弱にとどまり、現行の社会保障制度が持続可能と考えている人は僅か4.3%。
「全世代型社会保障」とは何か知っているかを聞いたところ、年齢が高いほど認知率が上がり、女性よりも男性の方が高い結果となりました。一方、現行の社会保障制度の長期的な持続可能性については、半数強がわからないと回答しましたが、残りの方の約9割は持続不可能であると答えています。
■ 改革が必要な分野は「年金制度」が1位で、次に「医療保険制度」「子育て・教育支援の充実」が拮抗。改革の方向性は、給付水準・内容の合理化を求める意見が多いが、60代以上は現行の給付水準・内容の維持を求める意見が多数。
改革を進めるべき分野や方向性については、世代により差がみられる結果となりました。
改革が必要な分野では、「年金制度」が20代・30代の女性を除きどの世代でも1位となりましたが、2位は「医療保険制度」と「子育て・教育支援の充実」が拮抗しています。前述した20代・30代の女性では「子育て・教育支援の充実」が半数を超えて1位になる一方、60代以上の方では「医療保険制度」を挙げる方の割合が高くなっており、世代に応じた優先順位が表れています。また、70歳以上の男性は「就労支援」、同年代の女性は「介護保険制度」の割合が高くなるのも特徴です。
改革の方向性では、30代~50代を中心に全ての世代で「働き手の負担増には限界があるため社会保障給付水準・内容の合理化を行う」が1位となりました。しかし60代以上になると、働き手の増加策や増税等により「現行の給付水準を維持する」とした回答の合計が、「給付水準・内容の合理化を行う」とする回答を上回り、現在年金制度の受益者かどうかで意見が分かれました。
2.年金制度
■ 制度改革の方向性は、「消費税の目的税化など抜本的な改革」、「働き手の増加」、「支給開始時期を70歳に向けて延ばす」の順だが、意見が収れんしていない。
年金制度の改革の方向性は、70歳以上を除いて「消費税の目的税化など抜本的な改革」を求める意見が1位ですが、他の回答を大きく上回るわけではなく、具体的な方向についての意見は収れんしていない現状が窺われます。70歳以上の方では、回答により前提条件は異なるものの「現行の給付水準の維持」を求める声の合計が半数を超えています。
3.医療保険制度
■ 改革の方向性は、国民医療費の増加抑制のため「保険適用範囲を含めた各種見直しはやむを得ない」が1位となり、水準の維持のため増税や自己負担増など「負担増加で対応」とする回答の合計が続いた。
少子高齢化が進む中これ以上の負担増は困難として、「公的医療の適用範囲を含めた見直しをやむを得ない」とする回答が1位(28.2%)となりましたが、現行制度の維持のため「保険料の引上げや増税」、「自己負担の増加」を許容する方の割合も合計で22.1%に達しています。
一方、健康維持のための運動や未病対策で「国民医療費の増加は抑制できる」と考える方は年齢が高くなるほど増え、70歳以上では1位となり、願望も含めて楽観的な見方をしていることが窺えます。
4.介護保険制度
■改革の方向性は、高齢者を中心に「健康維持等の取組で給付費用の抑制は可能」が1位で、「担い手の負担増を避けるため制度を縮小」と「サービス内容拡充のため負担増もやむを得ない」が拮抗。
制度改革の方向性を聞いたところ、高齢者を中心に「健康維持等の取組みにより給付費用の抑制は可能」が1位(20.3%)となり、「担い手の負担増は困難なため制度を縮小」(16.7%)と「サービス内容の拡充のため自己負担増もやむを得ない」(16.0%)が続きました。
男性が女性より「負担増もやむを得ない」とする傾向が強い一方、女性は「健康維持等の取組みにより給付費用の抑制は可能」とする意見が多く、男女の違いが表れる結果となりました。
5.制度の支え手の拡大策
■就労人口の拡大策は、約4割が「65歳以上就労者の増加策」、約2割が「女性就労者の増加策」と回答。高齢者向け施策は定年や再雇用期間の延長が、女性向け施策は保育所等の拡充が1位。
就労人口の拡大策について聞いたところ、「65歳以上の就労者の増加策」が42.6%で最も高く、続いて「女性の就労者の増加策」が21.1%、「外国人労働者の大幅な拡大」が11.0%になりました。
20代では「女性就労者」が「65歳以上」を上回りますが、年代が上がると共に「高齢者」とする回答が非常に多くなります。
また、具体的な拡大策については、高齢者向けには「定年や再雇用期間の延長」を挙げる回答が多く、50代以降は半数を超えました。一方、「米国のように定年廃止や弾力的な賃金設計」にも40代(22.6%)を中心に一定の支持があることがわかりました。
女性向けの拡大策としてどのような対策が必要か聞いたところ、「保育所や学童保育の拡充」が1位となりましたが、「短時間労働や在宅勤務の拡充」や「同一労働同一賃金などパートタイムの処遇向上」も大きな支持を集めました。
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