梅棒がフルメンバーで届ける、少年漫画のような熱いバトルファンタジー 梅棒 20th Breakdown『FINAL JACKET』 稽古場レポート

ダンス×J-POPで演劇を創り上げるダンスエンターテインメント集団「梅棒」。劇場での主催公演に加え、嵐やAKB48といったアーティストのライブ公演、映画「コンフィデンスマンJP 英雄編」や「NHK紅白歌合戦」をはじめとする映像メディア、宝塚歌劇団や2.5次元舞台、「EXPO2025 大阪・関西万博」などの演出・振付も行っている。

2025年11月にスタートする梅棒 20th Breakdown『FINAL JACKET』は、9月に加入したSuGuRuを加えたフルメンバーでの新作公演。初日が迫る中、作・総合演出の伊藤今人も参加し、全員で行った通し稽古の様子をレポートしよう。

公式HPにあらすじが掲載されているように、今回は文明を崩壊させるほどの力を持つ“伝説のジャケット”を巡る物語だ。5つに引き裂かれたジャケットのパーツが見つかったことから、軍やならず者たちなどあらゆる勢力がぶつかり合う。梅棒らしいコミカルさ、バラバラになったパーツが持つ不思議な力などのファンタジー要素もありつつ、土煙や血が似合うハードボイルドな世界観だ。各陣営によるバトルも多く、シンプルながら迫力あるアクションと骨太な人間ドラマによって、魅力あふれる作品が描かれている。

オープニングでは全員が軍服に身を包んでダンスを披露。物語のテーマに合わせてか、非常に力強さを感じる振り付けになっている。キャラクターの関係性や物語を理解した後だと、ソロパートや複数人でのダンスからも様々なドラマが見えてくるのが熱い。そして作中では、主人公たちアウトローの無骨なたくましさ、軍が見せる統率の取れた勇猛さ、ジャケットのパーツによって引き出された不思議なパワー、荒々しく圧倒的なまでの力を持つ悪人……と、陣営ごとに種類の違う“力強さ”を見せてくれる。

梅棒作品は基本的にセリフなしのノンバーバルで構成されている。今回も、懐かしい曲から最近の流行曲まで幅広くカバーしたラインナップだ。一人ひとりの表現力、誰もが知る楽曲の力によって、キャラクターの個性や感情の動きが伝わってくるのも大きな見どころだ。歌詞がストーリーやキャラクターに意外なハマり方をしていたり、客席が一緒に盛り上がれたりするナンバーも多い。作中で使われることで改めて曲の魅力に気付けるほか、新たな味わい方ができるのも魅力の一つと言えるだろう。

通しとはいえ稽古段階のため、時折動きや振付の確認が入る。緊張感がありつつ、和気あいあいとした雰囲気で進んでいた。全員が真剣に取り組み、全力で楽しむ姿勢が、何度見てもワクワクできる作品に繋がっているのではないだろうか。

また、東京公演の一部は日替わりゲストが参加するものの、メンバーのみの公演のため、作品世界を彩るモブキャラクターもすべて梅棒メンバーが演じる。メインの役とは180度印象が違う性格やビジュアルのキャラを演じるメンバーも多く、ここぞとばかりに楽しんでいるように見える場面も。別人のようなパフォーマンスにより、それぞれのギャップやダンススキルも楽しめる配役となっていた。

ここからは、極力ネタバレを控えつつ、一人ひとりの印象や魅力についても書いていこう。

今回の主演を務める櫻井以外は、役のポジションや関係性に関係なく梅棒への加入順で紹介するが、事前に情報を一切入れたくないという方はご注意を!

櫻井が演じる主人公・マグナスは、気だるげながら着実に依頼をこなしていく姿が格好いい。ダンスにおいても周囲に巻き込まれるような入り方が多く、関わる人々との関係性やスタンスが窺える。クールだが面倒見がよく情に厚い、“男が憧れる男”という言葉が似合いそうな主人公として作品の軸を担っている。来るもの拒まずな態度のため次々トラブルに巻き込まれつつ、タバコ片手にクールな表情で対応する姿もたまらない。

梅棒公演へ役者として全ステージ出演するのは2022年の15th “RE”PLAY『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』ぶりとなる伊藤は、登場する度に作品の雰囲気をグッと引き締める。直前のシーンがコミカルでもシリアスでも、一気に場を掌握する圧倒的パワーと存在感が見事だ。客席も伊藤演じるキャラへの忠誠を求められる場面があるため、目を付けられたら臆さず応えよう。

梅澤はストーリーテラーの役割も担い、客席と物語を繋げてくれる。マグナスとはまた違う意味で周囲に翻弄されている、不憫かつ愛嬌たっぷりな、愛すべきキャラクターだ。いい意味で振り切れた梅澤の芝居とダンスに、袖で見ているメンバーやスタッフ陣からも笑いが起きていた。

鶴野は可愛らしく危なっかしいキャラクターを好演。コミカルで元気なタイプだが、物語が進むにつれて膨らんでいく葛藤を丁寧に見せている。物語を大きく動かす一人として悩みや苦しみといった感情をダンスに乗せ、目が離せない魅力ある人物を描き出していた。

強烈な個性を持つキャラクターを演じることが多い遠山は、今回どちらかというと静かな印象の役。それでいて芯にある熱さや矜持が伝わるのはさすがと言えるだろう。表情や視線でキャラクターの思いを繊細に表現しており、ちょっとした変化も見逃したくないと思わせられる。

塩野が演じるのは、見た目と中身のギャップが魅力的な人物だ。自らの信念と情の間で揺れる人間らしさが愛おしく感じられる。迷いや苦悩を身体全体で表現する姿に共感する人も多いのではないかと感じた。演じるモブキャラクターのインパクトが強く、役柄の幅広さにも驚かされた。

そして、個性豊かなキャラクターの中でも一際異彩を放っているのが楢木だ。男臭い世界観、それに相応しく荒々しいナンバーが多い中、しなやかでセクシーなダンスをイキイキと披露。作中のキャラクターたちだけでなく客席も手玉に取るだろうと予感させ、本番の反応を含めて楽しみになる。

天野が演じるキャラクターは、柔和で上品な雰囲気とそれゆえに生まれる多少の胡散臭さや不気味さが非常にいい味を出している。個性が確立されたメイン曲に加え、ちょっと意外な交流関係など、楢木と同じく作品にとって魅力的なスパイスになっていると感じた。

野田が今回演じるのは作中の清涼剤のような存在。登場人物の多くがヒール的な要素を持っている中、まっすぐなキャラクターで癒しを与えてくれる。芝居・ダンスともに可愛らしさ満点なのはもちろん、関係性が強いキャラクターとのドラマも見応え充分で、つい目で追ってしまう。

多和田は演技力を存分に発揮し、憎たらしさとユーモアのバランスが絶妙なキャラクターを好演。セリフなしで心の動きを正確に伝えるのは中々難しい役だと感じるが、わかりやすく表現している。多和田の思い切りの良さと遊び心が見える役とも言えるだろう。

2024年の19th GIFT『クリス、いってきマス!!!』を経て梅棒に加入した新メンバー・SuGuRuが演じるのは、非常にコミカルながら強さもある梅棒作品らしいキャラクター。静と動の緩急、楽曲の音に合わせた細やかな動きなど、ダンススキルと身体能力が活きる役をエネルギッシュに演じている。

どのキャラクターも見事にハマっており、目が足りなくなることは必至だ。だが、各シーンの中心を担う人物に注目していればストーリーは問題なく掴むことができるのでご安心を。何度か見るという場合は、お気に入りの登場人物を追っていくと、そのキャラクターの心がどんなふうに動いて後の行動につながっているのかという伏線に気付くこともできる。

さらに、今回の大きな見どころとして、SuGuRuの加入により、振り付けに新たな色が加わったことが挙げられるだろう。梅棒らしい多彩さと楽しさはそのままに、ところどころで新鮮さも感じられる。誰がどの楽曲の振り付けを担当しているかなど、改めて注目しながら楽しんでみてほしい。

本作は2025年11月8日(土)~24日(月・祝)まで池袋サンシャイン劇場にて上演。その後、11月29日(土)・30日(日)に愛知・ウインクあいち、12月5日(金)~7日(日)に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールでも公演が行われる。梅棒フルメンバーで届ける熱く・泥臭く・壮大な物語を見届けに、劇場に足を運んでみてはどうだろうか。

取材・文 吉田沙奈

撮影 角田大樹

梅棒 20th Breakdown『FINAL JACKET』あらすじ

遠い昔、人々の心をひとつに束ねることができる"伝説のジャケット”が存在した。

ーー計り知れない力が秘められたそれを人々は<ファイナルジャケット>と呼び崇めたが、その余りある力はやがて文明すらも崩壊させた。

その後、ジャケットは5つのパーツに引き裂かれて世界各地に散り、いつしか伝説は忘れ去られようとしていた。

ある日、ひとりの男が偶然その一片を手に入れた瞬間、欲望の渦が動き出す。

強大な力を手にしたい政府軍、絶海の監獄にうごめく野蛮な囚人たち…

あらゆる勢力が動きだし、裏切り、復讐、野望が火花を散らす!

力と陰謀がぶつかり合うこの世界で、最後に袖を通すのはいったい誰になるのか。

これは、壮大で、そして限りなくバカげた“最後の一着”を巡る大冒険!

■公演概要

梅棒 20th Breakdown『FINAL JACKET』 公演概要

【作・総合演出】伊藤 今人[梅棒]

【振付・監修】梅棒

【出演】伊藤 今人、梅澤 裕介、鶴野 輝一、遠山 晶司、塩野 拓矢、櫻井 竜彦、楢木 和也、
    天野 一輝、野田 裕貴、多和田 任益、SuGuRu [以上、梅棒]

【日替わりゲスト】

千葉 涼平[w-inds.]…11/11(火)・11/12(水)、福田 悠太[ふぉ~ゆ~]…11/13(木)、

滝澤 諒…11/14(金)、高橋 健介…11/15(土)、松崎 祐介[ふぉ~ゆ~]…11/16(日)、

辰巳 雄大[ふぉ~ゆ~]…11/18(火)、鳥越 裕貴…11/19(水)、

越岡 裕貴[ふぉ~ゆ~]…11/20(木)、小越 勇輝…11/21(金)・11/22(土)

【日程・会場】

<東京>2025年11月8日(土)~11月24日(月・祝)@サンシャイン劇場/24ステージ 

<愛知>11月29日(土)~11月30日(日)@ウインクあいち/3ステージ 

<大阪>12月5日(金)~12月7日(日)@COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール/5ステージ

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ビジネスカテゴリ
映画・演劇・DVD

会社概要

URL
https://sunrisetokyo.com/
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区北青山2-11-3 A-PLACE青山6F
電話番号
03-5772-7221
代表者名
高橋一仁
上場
未上場
資本金
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設立
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