文春新書『なぜ日本は原発を止められないのか?』が、第5回「ジャーナリズムXアワード」の最高賞であるX賞(大賞)を受賞!
「原発安全神話」に加担してきた、政・官・業・学、そしてマスコミの大罪を白日の下にさらした渾身の書
株式会社文藝春秋(本社:東京都千代田区紀尾井町 社長:飯窪成幸)から刊行された、文春新書『なぜ日本は原発を止められないのか?』(青木美希著)が、第5回「ジャーナリズムXアワード」(運営:ジャーナリズム支援市民基金)の最高賞であるX賞(大賞)を受賞しました。同賞は、自由で公正な社会を創る報道や活動などを市民の視点から顕彰する目的で2020年に設立されました。本作の講評は以下の通りです。

■「ジャーナリズムXアワード」X賞(大賞)講評
「なぜ私たちは原発に反対するのか、日本の原発の何が問題で、何が福島第一原発の事故を招いたのか、これらの問いへの答えを、実に総括的かつ整然とまとめた秀作」という選考委員の一人によるコメントが、本書の価値を要約している。
史上最悪とされる過酷で複合的な核事故の記憶も反省も風化しつつあるいま、新聞記者として鍛えた取材力と、日本の原子力政策が抱える闇を解明しようとする執念に近い意志力で書き上げた内容は、原発問題に通じていると自負する人でも一読に値する。
そして、著者が「おわりに」に記す次の言葉は、X賞授賞の背中を押した。
「原発問題は、声を大きく伝えてこなかった報道機関、原子力ムラの一角だったマスコミにも重い責任がある。長く新聞社にいる一員としても、ここで声をあげることに躊躇してはならない。忘れれば、政府は再び同じ道を歩む。私たちの税金を使い、忘却させようとする大きなキャンペーンが行われている。微力でも伝え続けていくしかない。」
■ジャーナリズムXアワードとは〈*ジャーナリズム支援市民基金HPより抜粋〉
私たちジャーナリズム支援市民基金は、健全なジャーナリズムが力をつけていくためには、その中身(内容・コンテンツ)と器(媒体やプラットフォーム)の両面で進化/深化が必要不可欠と考え、それら両面のいずれか、あるいは両面のシナジー(相乗効果)を実現した取り組みを応援するため、公募による「ジャーナリズムX(エックス)アワード」を実施しています(エックスは未知のX、NextのX、CrossoverのX、ExperimentのXなど…)。
自由で公正な社会のための情報伝達・交換と行動とを促進する創造力/想像力豊かな取り組みを、市民社会のメンバーが選び出す「ジャーナリズムXアワード」にご注目ください!
■青木美希さんの受賞コメント
「出版は認められない」
長年、個人的に自費で調べ、考えてきたことを出版しようとしたところ、現在勤務している全国紙の上司に認めないと言われ、役員に直談判してもかなわず、私は絶望しそうでした。
そのとき手を差し伸べてくれたのが、文藝春秋の皆さまでした。「自分で、考えていることを、 読者や編集者に気兼なしに、 自由な心持で云って見たい」という菊池寛の精神を引き継いでいらっしゃる気骨のある方々に支えられました。文春新書の西本幸恒編集長、松崎匠さん、織田甫さん、それに喜田村洋一弁護士、本当にありがとうございます。
私はエネルギー研究者の娘として生まれ、学生時代から原発について30年調べてきました。地方紙2社と全国紙で新聞記者を計23年間していましたが、2020年に突然、記者職を外されました。原発政策の実態が伝えられていない。何とか伝えたいと切望していたところ、皆様のお力で出版がかないました。おかげ様でこの本は脱原発文学大賞、貧困ジャーナリズム賞、隆祥館書店ノンフィクション大賞入賞と受賞が続き、6刷となり、朗読版、韓国語版も出版されました。今回は、映像配信や、私の講演もご評価いただき、「大賞」の受賞、とても勇気づけられます。ありがとうございます。文藝春秋の皆様、取材を受けてくださった方々、講演を企画してくださった皆様、そして動画を拡散し、励ましてくださる皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
一方で、出版翌日から上司に呼び出され、今も圧力を受け続けています。個人の言論を圧倒的な権力でつぶそうとする。戦前に戻ったかのような恐ろしさを感じます。
福島第一原発事故から14年7カ月たちました。いまも日本は原子力緊急事態宣言中で、数万人が避難を続けていますが、政府と県は避難先住宅提供の打ち切りを進め、来年3月末には帰還困難区域の方々を含め、全員の住宅提供を打ち切ります。帰還困難区域では家々が崩れていき、避難者の方々は「見捨てられている」と嘆いています。この地震国日本で、再び原発事故が起きたとき、家を追われる人たちは何十万人になるのだろうか、と大変懸念しています。
いかなる圧力を受けようと、一人の人間として取材し、伝えていこうという思いを新たにしました。本当にありがとうございました。

■プロフィール
青木美希(あおき みき)
ジャーナリスト、作家。札幌市出身。1997年、北海タイムス入社。同紙の休刊にともない、1998年9月に北海道新聞入社。札幌での警察担当のときに北海道警裏金問題を手がける。2010年9月、大手紙に入社。東日本大震災では翌日から現場で取材した。現在も個人として取材活動を続けている。「道警裏金問題」取材班として菊池寛賞。同取材班と、のちの原発事故検証企画「プロメテウスの罠」、「手抜き除染」報道の両取材班で、新聞協会賞を3度受賞。初の単著『地図から消される街』(講談社現代新書)は福島第一原発事故の実情を描き、貧困ジャーナリズム大賞、日本医学ジャーナリスト協会賞特別賞、平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞を受賞した。ほか単著に『いないことにされる私たち』(朝日新聞出版)。2023年から日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。
■書誌情報
書 名:『なぜ日本は原発を止められないのか?』
著 者:青木美希
刊 行:2023年11月20日
定 価:1210円(税込)
判 型:新書判
頁 数:288
ISBN:978-4-16-661433-2
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