業界初 不動産アセットが有する分散型エネルギーリソースを活用した「エネルギー・リソース・アグリゲーション事業」の実証実験を開始
再生可能エネルギー主力電源時代を支える新事業領域
本リリースのポイント
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業界初、自社の保有・管理する不動産アセットが有する分散型エネルギーリソースを統合管理・制御することで生まれた調整力を売却するエネルギー・リソース・アグリゲーション事業の環境整備に向けて、柏の葉スマートシティにおいて、複数の実証実験を開始
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実証実験には、ダイキン、エクセルギー・パワー・システムズ、Yanekara、Shizen Connectが参画。今後も連携パートナーを拡大
三井不動産株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:植田俊、以下「三井不動産」)は、ダイキン工業株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長 兼 COO:竹中 直文、以下「ダイキン」)、エクセルギー・パワー・システムズ株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長 CEO:ムセル・マイク・イグナス、以下「エクセルギー・パワー・システムズ」)、株式会社Yanekara(本社:千葉県柏市、代表取締役社長:松藤 圭亮、以下「Yanekara」)、株式会社Shizen Connect(本社:東京都中央区、代表取締役CEO:松村 宗和、以下「Shizen Connect」)と連携し、2025年冬より、柏の葉スマートシティにおいて、不動産アセットが有する空調機器や給湯器、発電機、蓄電池、EV充電器等の分散型エネルギーリソースの統合管理・制御による「エネルギー・リソース・アグリゲーション事業[1](以下「本事業」)」の環境整備に向けた複数の実証実験(以下「本実証実験」)を開始します。
近年、脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの主力電源化が進んでいます。こうしたなかで、電力系統の安定運用に向け「需給調整市場」が設立され、需要側が電力使用を制御することで生まれる「調整力」を売買する仕組みの本格運用が24年度より開始しています。
三井不動産としては、自社の保有・管理する不動産アセットが有する分散型エネルギーリソース機器を統合管理・制御し、「需給調整市場」に生み出した調整力を拠出することで、持続可能な脱炭素社会の実現に大きく貢献できると考え、本実証実験に着手しました。本事業を通して、再生可能エネルギー主力電源時代における日本の電力系統の安定化に寄与し、脱炭素社会、再生可能エネルギーのさらなる普及へ貢献してまいります。
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[1] エネルギー・リソース・アグリゲーション事業: 分散型のエネルギーリソース(自家発電設備、空調、給湯、蓄電池など)を集約・統合し、それらを一つの仮想的なエネルギー資源として管理・運用する事業です。個々のエネルギーリソースを束ね、大規模の電力需要量を管理・運用することで、電力の供給と需要のバランス確保や再生可能エネルギーの普及促進に寄与します。
■需給調整市場について
電力の安定供給を維持するためには、電力を作る量(供給)と電力を使う量(需要)が同時同量になっている必要があります。これらの量が常時一致していないと、電力の品質(周波数)が乱れ、大規模停電が発生する可能性があります。
需給調整市場とは、一般送配電事業者が電力の需要と供給のバランスを取るために必要な「調整力」を効率的に調達するための市場です。2021年3月までは各エリアの一般送配電事業者が公募により調整力を調達していましたが、21年4月より需給調整市場が創設され、エリアを超えて市場から調整力を調達可能となりました。需給調整市場では、調整力を拠出できる応動時間や継続時間に応じて5つの商品があり、24年度には全商品の市場取引が開始されました。
「調整力」とは、例えば、天候不良等で太陽光発電等の再生可能エネルギーの発電量の予測と実績に誤差が生じた場合に、電力の需要と供給のバランスが崩れるのを防ぐために活用されます。供給が不足する場合に需要側を制御するデマンドレスポンス(DR:Demand Response)を行うことで、電力の需給を一致させ、安定供給に貢献します。今後、日本が再生可能エネルギー主力電源化に進む中で、調整力の重要性はますます増加することが見込まれます。
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■本実証実験の概要
需給調整市場が求める調整力を生み出すためには、系統用蓄電池事業など、様々な手法がありますが、不動産アセットが有する、複数の分散型エネルギーリソース(空調機器、給湯器、発電機、蓄電池、EV充電器等)を統合制御し、調整力を総合的に生み出す実証実験は業界初となります。
公民学連携のオープンイノベーションによる新産業創造を推進し、また柏の葉の街全体でエネルギー利用の最適化を進める「柏の葉スマートシティ」を舞台に、以下の連携パートナー及び役割分担のもと、複数の実証実験を段階的に実施し、事業経済性を評価いたします。社会課題解決に向け、今後も連携パートナーを拡大し、パートナー企業と街がともに成長する未来を目指します。
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目的 |
不動産アセットが有する、分散型エネルギーリソース機器(空調、給湯、発電機、蓄電池、EV充電器等)の統合制御による、エネルギー・リソース・アグリゲーション事業展開に向けた環境整備 |
場所 |
柏の葉スマートシティ内アセット等、三井不動産の保有・運用アセット |
内容 |
STEP1: 制御実証 ・分散型エネルギーリソース機器により創出可能な調整力量の詳細化 STEP2:市場投入実証 ・需給調整市場からの模擬的な指示に応じた制御実行による達成度評価 STEP3:市場運用実証 ・需給調整市場からの模擬的な指示に応じた制御・市場運用による事業経済性評価 |
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■本実証実験における連携パートナー各社の役割
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三井不動産 |
・実証実験全体取りまとめ(場所・環境の提供含む) ・エネルギー・リソース・アグリゲーション事業の事業経済性評価 ・不動産アセットが有する分散型エネルギーリソース機器をベースとした調整力拠出に向けた、施設運営側の課題抽出及び解決策の実行 |
ダイキン |
・同社クラウド型空調制御サービス「DK-CONNECT」を用いた、業務用個別空調機器の制御による調整力拠出の検証 |
エクセルギー・パワー・システムズ |
・同社独自のパワー型蓄電池「エクセルギー電池®」及びエネルギー・マネジメント・システム(EMS)等を用いた蓄電池及び発電機の制御による、実際の市場取引を通じた調整力拠出の検証 ・CO2排出量の少ないバイオ燃料に対応した発電機等の選定・評価 |
Yanekara |
・同社独自のプラグイン型EV充電コントローラ「YaneCube®」及びEV充放電器等の制御による調整力拠出の検証 |
Shizen Connect |
・分散型エネルギーリソースの統合システム環境整備に向けた検証 |
■三井不動産について
三井不動産は、2024年4月に策定したグループ長期経営方針「& INNOVATION2030」において、「産業デベロッパーとして社会の付加価値の創出に貢献」することを“ありたい姿”として掲げています。また、2021年に「脱炭素社会実現に向けたグループ行動計画」を策定し、社会と共生・共存・共創し、時代のニーズに応える新しい価値の創造に挑戦しています。本事業を通じて、電力系統の安定化に寄与し、脱炭素社会、再生可能エネルギーのさらなる普及へ貢献してまいります。
■ダイキンについて
ダイキンは、グローバルに事業を展開する空調のリーディングカンパニーとして「環境ビジョン2050」を掲げ、環境技術を生かした製品・サービスを世界中に提供するなど、気候変動への影響を抑制しながら事業を成長させていくための取り組みを推進しています。また、再エネ電源の急速な普及に伴う需給調整ニーズの高まりを背景に、空調機を用いたデマンドレスポンスの実証実験を様々なパートナーと取り組んでいます。ダイキンは、事業活動を通じてカーボンニュートラル社会の実現に貢献しています。
■エクセルギー・パワー・システムズについて
エクセルギー・パワー・システムズは、再生可能エネルギー普及拡大や脱炭素社会の実現に向け、独自のパワー型蓄電池・EMSを活用したハイブリッドソリューションを用いて、多様な分散型電源をマルチユースし、フレキシビリティサービスを提供する東京大学発のスタートアップ企業です。日本と同じ島国で、再生可能エネルギー導入が先行するアイルランド・英国において、2020年から商用事業展開しているフレキシビリティサービスの日本展開を進めています。
■Yanekaraについて
Yanekaraは、「地球に住み続ける」をミッションとする東京大学発のディープテック・スタートアップです。EV充電ピークシフトを工事不要で実現する「YaneCube」に代表される独自の「プラグイン技術」により、分散型電源を前例のないスピードで普及させ、20世紀の集中型電源に代わる仮想発電所「21世紀の黒部ダム」を構築します。三井不動産の創立80周年記念事業「未来特区」で優勝、AEA2023で柏の葉賞を受賞し、2024年より柏の葉スマートシティにおいて「三井のカーシェアーズ」EV群の調整力活用を見据えたエネルギーマネジメントを実証しています。
■Shizen Connectについて
Shizen Connectは、自然電力グループの一員として分散型エネルギーリソースの統合管理プラットフォームを提供しており、大手電力会社・ガス会社など12社と資本業務提携を締結しています。これまで家庭用から系統用のエネルギーリソースのプラットフォームとして大手電力会社、大手ガス会社、大手不動産会社などに採用されています。
■柏の葉スマートシティの取り組み
https://www.kashiwanoha-smartcity.com/
柏の葉スマートシティとは、「世界の未来像をつくる街」を目指した、柏の葉キャンパス駅を中心としたエリアです。公(千葉県・柏市)・民(住民・民間企業)・学(大学)の連携で「環境共生」「健康長寿」「新産業創造」の3本柱で街づくりを推進しています。都心から約30分とアクセスも優れており、東京大学や千葉大学、国立がん研究センター東病院、産総研柏センターをはじめとする国内屈指の研究機関が柏の葉キャンパス駅から半径2km圏内に集まる知の集積地でもあります。
住宅、商業施設、オフィス、ホテル、病院、大学、公園など、街のあらゆる機能が凝縮した「ミクストユース型」の街づくりを進めており、駅周辺に便利な生活環境と豊かな自然が広がっています。新産業創造に向けては「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」を中心に、大企業からスタートアップまでさまざまな企業の成長を後押しする環境づくりに取り組んでおり、コラボレーションを生み出すコミュニティや、街をベースとした実証フィールド、ロボットやドローンなどの開発をサポートするテストサーキット、ライフサイエンス領域における産学医連携を促す場やコミュニティの形成、人や街のデータから豊かな生活を実現するためのデータプラットフォーム、国際的なイノベーションアワードなど、オープンイノベーションを促進するさまざまな仕組みがあります。
■三井不動産グループのサステナビリティについて
三井不動産グループは、「共生・共存・共創により新たな価値を創出する、そのための挑戦を続ける」という「&マーク」の理念に基づき、「社会的価値の創出」と「経済的価値の創出」を車の両輪ととらえ、社会的価値を創出することが経済的価値の創出につながり、その経済的価値によって更に大きな社会的価値の創出を実現したいと考えています。
また、2024年4月の新グループ経営理念策定時、「GROUP MATERIALITY(重点的に取り組む課題)」として、「1. 産業競争力への貢献」、「2. 環境との共生」、「3. 健やか・活力」、「4. 安全・安心」、「5. ダイバーシティ&インクルージョン」、「6. コンプライアンス・ガバナンス」の6つを特定しました。これらのマテリアリティに本業を通じて取り組み、サステナビリティに貢献していきます。
【参考】
・「グループ長期経営方針策定」
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/innovation2030/
・「グループマテリアリティ」
https://www.mitsuifudosan.co.jp/esg_csr/approach/materiality/
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