米国の政策が世界の援助を揺るがした1年──公衆衛生ニーズに基づいた援助がないがしろに

米トランプ政権が国際援助資金の大幅削減を発表してから1年が経過した。人類全体の健康の向上を目指す「グローバルヘルス」の取り組みと、人道援助における世界的な協力と連帯は深刻な影響を受け、多くの人命が脅かされた。
2025年を通して、国境なき医師団(MSF)はこうした資金削減がもたらした甚大な被害を世界各地で目撃してきた。MSFは、米国が対外援助の枠組みを作り替える動きがもたらす影響はまだ始まったばかりだと警鐘を鳴らすとともに、グローバルヘルスの支援は政治的、経済的な打算ではなく公衆衛生上のニーズに基づいて決められるべきだと訴える。
国際援助削減で脅かされる命
MSF米国のグローバルヘルス・アドボカシーおよび政策責任者であるミヒル・マンカドはこう話す。
「世界は今も援助削減の影響を受けていますが、これがトランプ政権によるグローバルヘルスと人道援助の再編成の始まりに過ぎないことは明らかです。これまで米各政権はグローバルヘルスに関してそれぞれ異なる優先事項と政策課題を掲げてきました。しかし今、人道対応の基本原則、感染症や栄養失調や予防可能な病気への対応、疎外されたコミュニティのための援助──から大きく逸脱しています」
MSFは米国政府から資金提供を受けていないが、米国政府の援助削減がもたらす影響を目の当たりにしてきた。
例えばソマリアでは、援助が途絶え、治療用ミルクの輸送が数カ月にわたってストップした。MSFが支援する施設に入院した重度栄養失調の子どもの数は、2024年1~9月期の1937人から、2025年の同時期には3355人に増加した。南西部バイドアのベイ地域病院だけで、2025年上半期には重度栄養失調児の死亡が前年同時期と比べて44%増加した。
コンゴ民主共和国では米国際開発局(USAID)の解体により、レイプ被害者に提供するキット10万個の発注が取り消された。これはHIVなど性感染症を予防するための薬などが収められたキットだ。同国では性暴力の被害が深刻で、MSFが2025年上半期にケアを提供した人は2万8000人に上る。

米国の新戦略が与える影響
これらの例は、予算が削減されているということだけでなく、世界における米国の役割の転換を表している。
昨年9月、トランプ政権は「米国第一グローバルヘルス戦略」を発表した。これにより、米国がグローバルヘルスにおいて担う役割は大幅に縮小すると位置づけられた。この戦略は視野が狭く短絡的であり、米国の政策を誤った方向へ転換させ、効果の見込みが薄い感染症対応へと導いている。米国が長い間リーダーシップを果たしてきた、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)や栄養、非感染性疾患などの分野には触れられていない。
米政権はこの戦略を実行に移すにあたり、米国の援助を受ける国々と次々に二国間協定を締結しようとしている。援助の影響を受ける市民社会や地域からの声を聞かず、閉ざされた場で取引重視の新しいアプローチが進められている。
米政権は、こうしたやり方が各国の主体性を促し、主権を強化すると主張している。しかしその一方で、疎外された人びとへの支援や性と生殖に関する保健分野などでは、米政権が掲げるイデオロギーに従ってサービスへの制限をかけるよう受益国に圧力をかけている。
公衆衛生上のニーズに基づいた援助を
マンカドはこう訴える。
「これらの協定が国家の主体性を促すという主張は、『グローバルヘルスの支援は米国との鉱物資源取引に応じるかどうかで左右される』と米国務省が各国に公然と伝えている状況では空虚に響きます。グローバルヘルスの援助は、公衆衛生上のニーズ、確かな医学的根拠、そして疫学にもとづいて決められるべきであり、政治的打算や経済的搾取、イデオロギーによる強制によって決められてはなりません」
2025年の援助削減は、すでに壊滅的な打撃を世界にもたらした。今こそ、米国が援助を提供する理由と方法、そして保健と人道課題に関して国際社会とどう関わっていくのか見直される時だ。
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