派遣会社も「人手足りず」 倒産件数が2015年以降で最多に 人件費高騰が経営に重し 派遣料金に転嫁できない業者の倒産増える可能性
「人材派遣業界」倒産動向:全国企業倒産集計2023年11月報
<調査結果(要旨)>
派遣会社も「人手足りず」 倒産件数が2015年以降で最多に
集計期間:2023年11月30日まで
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関:株式会社帝国データバンク
人が足りない企業と労働者との橋渡し役として、昨今の人材需要の高まりに活況を呈する人材派遣業であるが、足元では倒産も増えてきている。スタッフを企業に派遣して収益を得る「人材派遣」の倒産は、2023年1-11月までに72件発生し、2015年以降で最多となった。年間件数はコロナ前の水準である80件弱に達する見込みだ。
人材派遣業界は、業種を問わず発生する人材需要を取り込み、コロナ禍においてもマーケットを拡大してきた。しかし同時に、派遣スタッフの不足により「人件費高騰」が派遣業者の重しとなっている。22年度に「増収」となったにも関わらず、収益が「悪化」した派遣業者は38.7%に上った。コロナ禍の巣ごもり需要で業績を伸ばしていた物流関連の人材派遣業者マックスアルファ(東京都)も、派遣社員の「人件費」上昇が倒産の一因となった。
高騰する人件費に対する「価格転嫁難」も深刻だ。帝国データバンクの調査では、人材派遣業者は100円のコストアップに対し約33円分しか価格転嫁できていないことが分かった。「自社の正社員の賃上げも満足にできないなか、派遣料金は上げられない」と価格転嫁に難色を示す派遣先企業の経営事情も重なり、十分に派遣料金に転嫁できずコストを自社負担せざるを得ない状況がみられ、派遣業者にとって経営の舵取りはますます難しくなっている。
業界全体では、人手不足やコスト増に対応できる業者と、そうでない業者との二極化の様相を呈している。派遣社員を確保できず、高騰するコストを転嫁しきれない中小零細企業を中心に淘汰される形で、人材派遣業者の倒産は今後も増加していく可能性がある。
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