「CREA夜ふかしマンガ大賞2025」発表!現代社会の「わかりあえなさ」と手を繋ぐ物語 藤見よいこ『半分姉弟』が第1位に
株式会社文藝春秋(本社:千代田区紀尾井町 社長:飯窪成幸)のウェブサイト『CREA WEB』は、10月15日、第4回「CREA夜ふかしマンガ大賞」を発表いたしました。
総合電子書籍ストア「ブックライブ」の2022年のデータによれば、マンガ作品の書籍購入が一番多い時間帯は22時以降、ピークは深夜0時。マンガは電子書籍で読むということがあたり前になりつつある今、仕事に子育てに忙しい大人世代の女性においても、夜の貴重なひとり時間にスマートフォンやタブレットでマンガに没頭するという現象が起きています。そこで眠りにつく前のひとときに、日中のあれこれを忘れさせ、新しい世界に連れ出してくれる力のある作品を称える「CREA夜ふかしマンガ大賞」が2022年秋に誕生し、今年第4回が開催されました。
今年ははじめて、マンガ家と二人三脚で作品を世に送り出す、マンガ編集者15名に選考委員をお願いしました。また、特別選考委員として、マンガを愛するテレビプロデューサーの佐久間宣行さん、漫画家のつづ井さん、お笑い芸人の菅良太郎さん(パンサー)の3名にそれぞれ個人賞を選出していただきました。
*2024年7月~25年8月末に単行本の新刊が発売された(ただし、合計5巻以内)、もしくは、雑誌などに最新話が発表された作品から選出。
◆第1位は、藤見よいこさんの『半分姉弟』
第4回の大賞受賞作は藤見よいこさんの『半分姉弟』(リイド社)に。第1話の主人公・米山和美マンダンダはフランス人と日本人の間に生まれた褐色の肌の持ち主。弟が改名し、自分の名から「マンダンダ」を取ったこと、「普通になりたい」と漏らすことにショックを覚える場面から始まります。和美マンダンダはWEBライターとして活動する際に、「黒人ライター」が日本を体験するというキャラ立ちを活用して生きており――そうした側面も含めた設定はあまりにリアル。

「グローバル精神を持ちましょう」と言いながら、私たちはいまだに数えきれないほどの壁の中にいるのだと改めて気づかされる本作は、重要なテーマを突きつけながら、もちろん一級品のエンタメ作品。登場人物たちとともに怒り、泣き、笑い、考えさせてくれる名作です。現代的なテーマの物語を描いた意欲作に、多くの支持が集まりました。
作者の藤見よいこさんは、1992年、福岡県生まれ。スペイン人の父と日本人の母を持ち、2014年『ふたりじめ 戦国夫婦物語』(実業之日本社)でメジャーデビュー。著書に『こんな夜でも、おなかはすくから。』(ボルテージ)『だんだん街の徳馬と嫁』(小学館)などがあります。
第一位記念イラスト

選考委員コメント
「違うことで生じる孤独感。理解し合おうとする尊さ。他者への想像力を助けてくれる、素晴らしい一冊です」
ミックスグリーン代表取締役 林士平さん
「わかりあえないかもしれないけど、わかりあいたいを諦めないぞ、という気持ちで物語を追いたいです」
秋田書店「月刊プリンセス」編集長 山本侑里さん
「この力強い物語をぜひすべての人に読んでほしい」
文藝春秋 ライフスタイル出版部 白川恵吾さん
「お説教っぽく見えがちなテーマの扱いが、当事者ならではのバランス感でむしろ楽しくなる不思議な体験」
元「このマンガがすごい!」編集長・文藝春秋 薗部真一さん
「わかりあえなさと分断を描きながら、それでも諦めていない。その視線の切なさと優しさに胸が熱くなる」
テレビプロデューサー・佐久間宣行さん(特別選考委員)
◆「夜ふかしマンガ大賞2025」授賞式を開催
10月上旬、文藝春秋に藤見先生をお迎えして、「夜ふかしマンガ大賞2025」授賞式が行われました。

藤見先生ご受賞コメント
「CREA夜ふかしマンガ大賞の第1位をいただき、本当にありがとうございます。選考委員の方々からいただいたお言葉を光栄に感じるとともに、背筋が伸びる思いです。『半分姉弟』は、特に今年に入ってから『いまだからこそ読まれてほしい』という評価をいただくことがとても多く、常に行き場のないような思いでいるというのが本音です。
一方で、移民や外国人、そのルーツを持つ人たちは、メディアの中でまだまだ異文化、あるいは他者として『まなざされる存在』として描かれることが圧倒的に多い現状を感じています。少ない方の人たちが主体を持った主人公として、多い方の人たちをどうまなざすのか。私はその視座から描かれた物語こそがもっと読みたいし、これからさらに必要だとも考えています。
『半分姉弟』は、企画を立ち上げようとした段階では、あまりポジティブな反応はもらえなかった作品でした。ですが、想像以上に多くの方に読んでいただき、こうした賞までいただくことができました。そのことで、誰かの、まだ語られていない物語が世に出る後押しが少しでもできたなら、それ以上に幸せなことはありません。
これからも、自分が読者としてマンガから受け取ってきたたくさんのものを、私なりの形でつないでいけるよう頑張ります」

受賞作品の詳細

『半分姉弟』藤見よいこ/リイド社 880円 (既刊1巻)
「ハーフ」と呼ばれる人々の日常と溢れる感情を鮮やかに描いた、わかりあえなさと手を繋ぐ群像劇。「姉ちゃん、俺、改名したけん。」フランス人の父と日本人の母を持つ〈米山和美マンダンダ〉は、弟から突然の告白を受ける。生まれ育ったはずの日本で「異物」と見なされても、笑って流していたけれど……。アイデンティティに揺れるすべての人へおくる、共生を模索する希望の物語。
第2位以下にも、大ヒット作『東京都北区赤羽』で知られる作者と、あの超人気タレント・壇蜜の結婚生活を綴った話題作『壇蜜』(清野とおる)、ポップで洗練された絵柄で人間の深い哀しみを描く『邪神の弁当屋さん』(イシコ)、本好きから絶賛の声が集まった古本屋が舞台の『本なら売るほど』(児島青)など、今という時代を象徴する作品がランクインしました。
◆「CREA夜ふかしマンガ大賞2025」ベスト10ラインナップ
1位『半分姉弟』藤見よいこ/リイド社
2位『壇蜜』清野とおる/講談社
3位『邪神の弁当屋さん』イシコ/講談社
4位『本なら売るほど』児島青/KADOKAWA
5位『元気でいてね』藤原ハル/祥伝社
6位『おかえり水平線』渡部大羊/集英社
7位『バルバロ!』岩浪れんじ/双葉社
8位『楽園をめざして』ふみふみこ/講談社
9位『ごはんが楽しみ』井田千秋/文藝春秋
10位『寿々木君のていねいな生活』ふじもとゆうき/白泉社
◆「CREA夜ふかしマンガ大賞」とは
マンガを愛する選考委員とCREA編集部の推薦により選ばれた「思わず夜ふかしして読みたくなる」そして、「いま、CREA読者に本当におすすめしたい」作品に贈る賞。今年は初めて、15名のマンガ編集者の皆さんに選考委員をお願いしました。2024年7月~25年8月に単行本の新刊が発売された(ただし、合計5巻以内)、もしくは、雑誌などに最新話が発表された作品から選出されます(※選考委員の担当作は推薦不可、現在所属する出版社が発行する媒体の掲載作品は1作まで推薦可)。その他、マンガ好きの著名人の方々が選ぶ「個人賞」もあります。
記事中の「ハーフ」という呼称について
『半分姉弟』第1巻の冒頭で〈「ハーフ」という呼称に関しては、その意味合いに傷ついてきた当事者の方も多くおり、議論が存在します。本作品では、このような事実を踏まえた上で、今なお多くの人が「ハーフ」という呼称を利用している実態を反映させ、また、呼称の持つ「半分」という意味合いを改めて問い直す意図から、あえて使用しています〉というメッセージが表明されています。作品の意図に基づき、記事中でもカッコ付きの表現で使用しています。
CREA WEB(https://crea.bunshun.jp/)では「夜ふかしマンガ特集」と題して特設ページを開設(https://crea.bunshun.jp/list/manga_gp2025)、マンガに関するオリジナルコンテンツを続々公開予定です。ぜひご注目ください。
【掲載媒体情報】
CREA WEB
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