能登半島に工場、全国から136社が進出 主要企業の4割 能登での生産「再開未定」

「令和6年能登半島地震」関連調査(事業所・工場立地等)

株式会社帝国データバンク

帝国データバンクは、2024年1月1日に発生した能登半島を震源とする地震(「令和6年能登半島地震」)による企業活動への影響について、特に被害が大きい能登半島を中心に、2023年11月時点の企業データに基づき調査・分析を行った。

<調査結果(要旨)>

  1. 能登半島に「工場」、全国136社・177拠点が進出 総拠点数は890社・1300拠点

  2. 能登半島に工場を置く主要企業26社、4割が再開時期「未定」 被害大きく復旧長期化

[注1] 調査対象としたのは、「能登半島」に工場・営業所等を置き、かつ本社を「能登半島以外」に置く企業。単体での所有のほか、100%出資子会社の設備分も対象。金沢市など、能登半島の市町村以外を含む石川・富山両県も含む。能登半島の定義は半島振興法に基づく。

<能登半島>

石川県:七尾市・輪島市・珠洲市・羽咋市・かほく市・河北郡津幡町・同内灘町・羽咋郡志賀町・同宝達志水町・鹿島郡中能登町・鳳珠郡穴水町・同能登町

富山県:氷見市

[注2] 主要企業の定義:本調査では、能登半島外に本社があり、国内証券取引所に上場している、または年間売上高が100億円以上の企業

※調査機関:株式会社帝国データバンク



能登半島への進出、全国890社・総数1300拠点に 工場は136社・177拠点が進出

石川県・富山県の13市町村が含まれる能登半島に対し、他地域から営業所や工場などの拠点進出を行った企業は、2023年11月時点で890社・1300拠点が判明した。市町村別でみると、最も多いのは「七尾市」で293拠点(構成比22.5%)だった。以下、「かほく市」148拠点(11.4%)、「津幡町」134拠点(10.3%)、「氷見市(富山県)」130拠点(10.0%)の順となった。震源地に近く、特に被害が大きいとみられる「輪島市」は74拠点(5.7%)、「珠洲市」は50拠点(3.8%)、「能登町」は53拠点(4.1%)だった。拠点数が100を超えたのは13市町村中5市町に上った。


1300拠点のうち、製造拠点など「工場」は全国から136社・177拠点が進出していた。工場の拠点数で最も多いのは「志賀町」の29拠点(構成比16.4%)で、「津幡町」24拠点(13.6%)、「七尾市」22拠点(構成比12.4%)と続いた。特に被害が大きいとみられる「輪島市」は9拠点、「珠洲市」は15拠点、「能登町」は8拠点だった。


工場を有する企業のうち、国内の証券取引所に株式上場する企業または売上高が100億円以上の企業(主要企業)26社を対象に、工場の被害状況等について1月15日時点の開示書類を集計した結果、約4割にあたる10社で生産を停止し、再開時期を「未定」とした。未定となった主な理由として、工場施設等に損壊を受けた、または従業員等が被災した等で設備等の点検や安全確認が必要となったほか、周辺道路や電気などインフラの復旧が不透明な点が挙げられた。一方で、設備の被害は軽微であることから段階的ながら生産再開を見込める企業や、既に生産再開を進めた企業も合わせて4割に上り、能登半島での生産再開動向は企業によって対応が分かれた。



能登半島への進出、都道府県では石川県(能登半島外)が最多 北陸4県で約7割を占める    

工場以外の拠点では、営業所や支店・支社など「営業拠点」が471拠点(構成比36.2%)だった。主な施設として配送センターなどの「物流・倉庫」が55拠点(4.2%)、ソーラー発電など「発電所」が30拠点(2.3%)だった。営業拠点で最も拠点数が多い市町村は「七尾市」が142拠点、物流・倉庫では「津幡町」が16拠点、発電所では「志賀町」が6拠点だった。



能登半島に拠点を有する企業を都道府県別にみると、最も多いのは能登半島外の「石川県」で427社(構成比48.0%)だった。氷見市外の「富山県」159社(17.9%)、「福井県」34社(3.8%)、「新潟県」8社(0.9%)を合わせると、能登半島に拠点を置く企業の7割が北陸4県の企業だった。北陸地方外では、「東京都」が最も多く76社(8.5%)、「大阪府」50社(5.6%)、「愛知県」41社(4.6%)が続いた。


業種別では「サービス業」が最も多い201社(構成比22.6%)で、物流や配送などを行う「卸売業」が165社(18.5%)、「製造業」が157社(17.6%)で続いた。



能登地方が本社の企業と合わせて5000社に影響 供給網の混乱など今後顕在化する見通し    


1月1日以降発生した能登半島を震源とする巨大地震により、死傷者や避難者、停電など甚大な被害が広範囲にわたって発生。特に、震源地に近く最大震度7を記録した能登半島では、道路やライフラインが寸断されるなどマヒ状態が続き、2週間が経過した1月15日時点でも被害の全容が見えない状況が続いている。


 政府は、北陸地方を「半導体、エレクトロニクス、自動車部品の重要な生産基盤」と指摘し、重要物資の安定供給について万全を期すことを強調した。ただ、被害の大きい能登半島の工場では復旧見込みが立たず、国内の他工場で代替生産を行うケースや、サプライチェーン(供給網)が被災し稼働の見通しが立たないケースもあり、当面は保有する在庫での生産を余儀なくされる企業もあるなど、足元で影響が表面化してきた。


  能登半島に本社を置く4000社を超える企業と、他地域から能登半島に進出し事業活動を行う企業の合計は約5000社に達し、こうした企業からの供給停滞や遅延、取引の見合わせといった影響が今後次第に顕在化するとみられる。ただ、従業員や設備の安全確保が各企業にとって最優先事項である点や、アクセスが容易ではない状況を踏まえると、事業やサプライチェーン全体への影響が判明するまで長期間を要するとみられる。



参考資料:「北陸4県」におけるBCP(事業継続計画)に対する動向

北陸4県に本社を置く企業577社に対し、自社における事業継続計画(以下「BCP」)※の策定状況について2023年5月に調査を行った結果、「策定している」企業の割合(以下、BCP策定率)は16.8%となった。「現在、策定中」(8.5%)、「策定を検討している」(23.2%)を合計した『策定意向あり』とする企業は48.5%だった。震災で大きな被害を受けた「石川県」企業の「BCP策定意向あり」割合は52.8%と、全国を上回る水準だった。震災による被害は大きいものの、従業員の安否確認手段や調達・仕入の分散などバックアップ体制の整備を進めてきた企業も多く、企業活動面では速やかな復旧・復興体制への移行が期待できる。


他方、北陸地方では2022年までの10年間で地震の回数が少なかったことも背景に、震災への備えを進めている企業の割合は低かった。現時点で地震が多発していない地域でも、今後も避難の準備や設備の「揺れへの対策」の再点検が必要となる。

<BCPとは>

「Business Continuity Plan(事業継続計画)」の略。自然災害など不測の事態が発生した際、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画。BCPを策定することで、万一の不測の事態に有効な手段を講ずることが期待できる。

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


ビジネスカテゴリ
シンクタンク
ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

株式会社帝国データバンク

156フォロワー

RSS
URL
https://www.tdb.co.jp/index.html
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 信夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月