倒産件数、21カ月連続で前年同月を上回る 10カ月累計、2022年度の件数超える ― 全国企業倒産集計2024年1月報
2. 負債総額は842億2900万円(前年同月507億6900万円、65.9%増)、今年度最小
<概況>
倒産件数は700件(前年同月546件、28.2%増)と、21カ月連続で前年同月を上回った。前年同月より154件多く、1月としては4年ぶりに700件台となった。2023年4月-2024年1月の累計件数は7277件と、1月時点で2022年度(6799件)を超えた
負債総額は842億2900万円(前年同月507億6900万円、65.9%増)。今年度最小となったものの、2カ月連続で前年同月を上回った
<主要ポイント>
業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月143件→195件、36.4%増)は1月としては東日本大震災翌年の2012年(194件)以来、12年ぶりの高水準となった。『不動産業』を除く6業種が、2カ月を残して2022年度の件数を超えた
主因別にみると、『不況型倒産』が575件となり、21カ月連続で前年同月を上回った
態様別にみると、『清算型』倒産が680件、「特別清算」は2カ月連続で前年同月を上回った
規模別にみると、負債「50億円未満」が6カ月連続で50%以上の増加率を記録した
業歴別にみると、『新興企業』が217件で、23カ月連続で前年同月を上回った
地域別にみると、9地域中7地域で前年同月を上回った。『中国』(前年同月20件→33件、65.0%増)が、13カ月連続で前年同月を上回った。2023年4月-2024年1月の10カ月間で、32都道府県が2022年度の件数を超えており、全国的に増加基調が続いている
集計期間:2024年1月1日~1月31日
発表日:2024年2月8日
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
集計機関:株式会社帝国データバンク
■業種別
7業種中6業種で前年同月を上回る 6業種が2022年度を超える
業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月143件→195件、36.4%増)が最も多く、『小売業』(同109件→134件、22.9%増)、『建設業』(同100件→124件、24.0%増)が続いた。『サービス業』は、1月としては東日本大震災翌年の2012年(194件)以来、12年ぶりに高い水準となった。増加率でみると、『卸売業』(同54件→84件、55.6%増)が最も高かった。『不動産業』(同21件→26件、23.8%増)を除く6業種の2023年4月-2024年1月の累計件数が、2カ月を残して2022年度を上回った。
業種を細かくみると、『サービス業』では、労働者派遣など「広告・調査・情報サービス」(前年同月39件→57件)や「医療業」(同7件→16件)の増加が目立った。『小売業』では、「飲食店」(同39件→67件)が16カ月連続で前年同月を上回った。
■倒産主因別
『不況型倒産』は575件、21カ月連続で前年同月を上回る
主因別にみると、「販売不振」が565件(前年同月430件、31.4%増)で最も多く、全体の80.7%(対前年同月1.9ポイント増)を占めた。内訳を業種別にみると、「サービス業」(前年同月111件→153件、37.8%増)が最も多く、「小売業」(同93件→114件、22.6%増)が続いた。「業界不振」(同3件→4件、33.3%増)などを含めた『不況型倒産』の合計は575件(同436件、31.9%増)となり、21カ月連続で前年同月を上回った。
「その他の経営計画の失敗」(前年同月13件→29件、123.1%増)は前年同月の2.2倍となり、8カ月連続で20件を超えた。一方、「経営者の病気、死亡」(同23件→17件、26.1%減)は3カ月ぶりに前年同月を下回った。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■倒産態様別
『清算型』は680件、「特別清算」は2カ月連続で前年同月を上回る
倒産態様別にみると、『清算型』倒産は680件(前年同月526件、29.3%増)となり、全体の97.1%(対前年同月0.8ポイント増)を占めた。『再生型』倒産は20件(同20件)発生し、3カ月ぶりに20件台となった。
『清算型』では、「破産」が651件(前年同月508件、28.1%増)で最も多く、22カ月連続で前年同月を上回った。「特別清算」は29件(同18件、61.1%増)発生し、2カ月連続で前年同月を上回った。
『再生型』では、「民事再生法」が20件(前年同月20件)発生した。このうち、個人が15件、法人で5件発生した。
■規模別
負債「5000万円未満」が最多 「50億円未満」は6カ月連続で50%以上の増加
負債規模別にみると、「5000万円未満」が408件(前年同月334件、22.2%増)で最多となった。「50億円未満」が9件(同6件、50.0%増)発生し、6カ月連続で前年同月から50%以上の増加率を記録した。「100億円以上」は3カ月連続で発生しなかった。
資本金規模別にみると、『個人+1000万円未満』の倒産が500件(前年同月378件、32.3%増)となり、全体の71.4%を占めた。
■業歴別
業歴「30年以上」が最多 『新興企業』は23カ月連続で前年同月を上回る
業歴別にみると、「30年以上」が216件(前年同月176件、22.7%増)で最も多く、全体の30.9%(対前年同月1.3ポイント減)を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は8件(同4件、100.0%増)発生し、6カ月連続で前年同月を上回った。
業歴10年未満の『新興企業』[「3年未満」(前年同月36件→38件、5.6%増)、「5年未満」(同39件→54件、38.5%増)、「10年未満」(同91件→125件、37.4%増)]は217件(前年同月166件、30.7%増)と、23カ月連続で前年同月を上回った。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同47件→74件、57.4%増)が最多、「小売業」(同45件→48件、6.7%増)、「建設業」(同29件→45件、55.2%増)が続いた。
■地域別
9地域中7地域で前年同月を上回る 32都道府県が2022年度の件数を超える
地域別にみると、9地域中7地域で前年同月を上回った。最も増加率が高かったのは『中国』(前年同月20件→33件、65.0%増)で、13カ月連続で前年同月を上回った。「福島」(同1件→9件)の増加が目立った『東北』(同22件→34件、54.5%増)が続いた。
件数別では、『関東』(前年同月172件→251件、45.9%増)がトップ。「東京」(同78件→136件)は前年同月を74.4%上回った。『近畿』(同154件→194件、26.0%増)は、1月としては過去10年で最多となった。『北陸』(同14件→20件、42.9%増)は、「新潟」(同7件→12件)の増加が目立った。2023年4月-2024年1月までの10カ月間で、32都道府県が2022年度の件数を超えており、全国的に増加基調が続いている。
<注目の倒産動向>
■ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産
2024年1月は53件発生 前年からの増加率は初めて10%台に縮小
「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、2024年1月に53件(前年同月47件、12.8%増)発生した。増加率は初めて10%台にとどまり、急増ペースが一段落した。「不良債権(焦げ付き)」に相当するコロナ融資喪失総額は推計で約746億5600万円にのぼり、国民一人あたり600円超の負担が発生している計算になる。
■人手不足倒産
2024年1月は30件発生、過去最多
「人手不足倒産」は、2024年1月に30件(前年同月12件、150.0%増)発生した。単月の件数としては、過去最多だった2023年4月(30件)に並んだ。2023年8月以降、前年同月を大幅に上回る水準で推移している。また、2024年1月に発生した、従業員や経営幹部などの退職・離職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」の倒産は9件だった。
■後継者難倒産
2024年1月は40件発生 3カ月ぶりに前年同月から減少
「後継者難倒産」は、2024年1月に40件(前年同月49件、18.4%減)にとどまり、3カ月ぶりに前年同月を下回った。このうち、「経営者の病気・死亡」が要因となった倒産は13件発生し、1月全体の32.5%を占めた。ポストコロナで先行き見通しが厳しくなるなかで、事業承継をあきらめる企業の倒産が数多く発生した。
■物価高(インフレ)倒産
2024年1月は55件発生 「値上げ難型」は10件、過去最多を更新
「物価高(インフレ)倒産」は、2024年1月に55件(前年同月50件、10.0%増)発生した。2023年10月(86件)をピークとして、「物価高」直撃の影響は緩和されつつある。他方、十分な価格転嫁ができず経営破綻に至った「値上げ難型」の物価高倒産は2024年1月に10件発生し、単月の件数としては2023年11月(8件)を上回り過去最多を更新した。
<今後の見通し>
■ 2023年度は9000件前後に達し、2014年度以来9年ぶりの水準へ
2024年1月の企業倒産は700件発生し、前年同月(546件)を28.2%(154件)上回った。2022年5月から21カ月連続で前年同月を上回り、1月としては2019年(713件)以来4年ぶりに700件台となった。中小・零細企業を中心に、物価高や人手不足、コロナ支援策縮小の影響を受けた倒産が目立ち、「ゼロゼロ融資後倒産」が引き続き高水準で推移した。
年度ベースでみると、2023年4月-2024年1月の累計は7277件となり、1月時点で2022年度(6799件)を超えた。このままのペースで推移すれば、2023年度は9000件前後に達し、2014年度(9044件)以来9年ぶりの水準になる見通し。
負債総額は842億2900万円となり、過去50年で最小となった前年同月(507億6900万円)からは65.9%増となったものの、今年度最小となった。負債50億円以上の倒産は発生せず、今後も中小規模の倒産が中心となりそうだ。
■「令和6年能登半島地震」による企業活動への影響注視
「令和6年能登半島地震」から1カ月が経過した。一部の地域では今なおライフラインの完全復旧には至っておらず、北陸地方の広い範囲で今後の経済活動への影響が懸念される。こうしたなか今回の地震が最後の追い打ちとなり、事業継続を断念するケースも発生した。
食品スーパーの「新湊商業開発」など2社(富山県射水市)は、1月26日までに事業を停止し、自己破産申請の準備に入った。従前から人口減少や競合激化で業績悪化が続くなか、地震発生後は売り上げが急減。資金繰りが急速に悪化するなか、行き詰まった。
震源地周辺の復旧が進み、経済活動が正常化するにつれて、今後は石川および富山県の倒産増が懸念される。1月時点では両県の倒産件数(いずれも2件)に顕著な変化はみられないものの、地震を機に事業の継続をあきらめる地元経営者がこれから増えるおそれは十分あるため、地域経済を支える手厚い支援が急がれる。
■今後は「廃業」「代位弁済」「ゾンビ企業」の動向に注目
倒産だけでなく、廃業の動きも広がっている。2023年の休廃業・解散(全国・全業種)は5万9105件にのぼり、比較可能な2016年以降で最も少なかった前年(5万3426件)から10.6%増えた。2024年は「優勝劣敗」や「新陳代謝」の流れが徐々に進み、倒産、廃業ともにさらに増加する可能性がある。とりわけ新年度の節目を迎える「4月」以降に、中小・零細企業の破綻リスクが一段と高まりそうだ。
事業継続の危機に瀕した“予備軍”も、確実に増えている。2023年の各信用保証協会による「代位弁済」は4万1572件で、前年(2万6454件)から大きく増えた。とくに2023年12月は3972件に急増し、前年同月(2822件)から4割増え、コロナ禍後で最多を更新した。保証協会が代位弁済した案件には、金融機関に借入金の返済が遅れている存続企業が数多く含まれる。「件数=社数」ではない点に留意は必要だが、トレンドとしては資金繰りが限界に近い企業は明らかに増えている。
帝国データバンクが1月19日に発表した調査レポート『「ゾンビ企業」の現状分析』によれば、本業の利益や利息・配当金で借入金の支払い利息分をまかなえない「ゾンビ企業」は、2022年度に推計25万1000社にのぼることが分かった。金融機関によるリスケ(借入金の返済条件変更)や政府の資金繰り支援策などで延命されたことで、コロナ禍前の2019年度(14万8000社)から大きく増えた。ゾンビ企業と一口に言っても、実際の経営状態には大きな違いがあるものの、仮に2022年度の25万1000社のうち、1%(2510社)でも破綻すれば、それだけで倒産件数を約3割押し上げるインパクトがある。
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