エマニュエル・トッド『西洋の敗北 日本と世界に何が起こるのか』が10万部を突破! 日本の読者に向けて、緊急メッセージも!
9月刊の文春新書『西洋の敗北と日本の選択』も大重版で6万部を突破
株式会社文藝春秋(本社:東京都千代田区 社長:飯窪成幸)から昨年11月8日に刊行した『西洋の敗北 日本と世界に何が起きるのか』(エマニュエル・トッド著、大野舞訳)が、10万部を突破いたしました(紙書籍と電子書籍累計)。歴史人口学者・家族人類学者であるトッド氏はこれまで、ソ連崩壊、リーマンショック、トランプ現象など数々の歴史的事象を“予言”してきており、本著もウクライナ戦争でのロシアの勝利、ガザ紛争の激化、トランプ政権下の米国の混乱、欧州の迷走など、まさに今起きている世界の混迷を見事に“予言”。さらに最新著『西洋の敗北と日本の選択』(文春新書、2025年9月19日発売)も6万部を突破、その言論はますます注目を集めています。

『西洋の敗北』(フランス語版・原著)は2024年11月に刊行。22年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻に始まる世界情勢の激動を概観しながら、「制裁で経済破綻する」とされていたロシアは、グローバルサウスをはじめとした「その他の世界」の後ろ盾を受けて一向に倒れず、むしろ英米を中心とした「西洋」が倫理的にも経済的にも敗北を喫している、とさまざまなデータをもとに論証しています。本書はすでに27カ国語で翻訳が決定していますが、「不都合な真実」に目を背けたいのか(トッド氏のこれまでの著作がそうであったように)、真っ先に刊行されるはずの英語版は未だ刊行されていません。「私の多くの予言のなかでも『西洋の敗北』は、最もすぐに実現したものですが、『西洋の敗北』が具体的にどんな形をとるかについては、すべてを明確にはしていません。今後、想像もしてこなかったことも起こり得るでしょう」――それはNATOやドル基軸体制の終焉、すなわち米国覇権の終わりなのか。そこで日本はどうすべきなのかーーいま知っておくべきことが、『西洋の敗北』そして続編的位置づけの文春新書『西洋の敗北と日本の選択』に記されています。

◆ 10万部突破に寄せて、トッド氏からのロング・メッセージが到着!
改めて問う。日本は「西洋」なのか?
私が著者として日本の読者の皆さんと関係を築けたことは、私の人生における最大の喜びの一つです。とはいえ、『西洋の敗北』(さらには続編である新書『西洋の敗北と日本の選択』)が、とりわけ日本で多くの読者に恵まれたことは、日本の読者と私との間の特別な関係だけでは説明できないと思います。そこには2つの独立した要因――『西洋の敗北』の本としての性質と日本人が直面している根本的な課題――が働いているようです。
まず『西洋の敗北』という本の性質について。
世界的な地政学的転換を現在進行形で分析した本書は、愚かしいほどの希望的観測に満ち、道徳まで説く、西洋諸国の支配的言説とはまったく正反対のことを述べています。私の解釈は冷徹で悲観的なものですが、正確であることが瞬時に明らかになりました。あたかも「地政学的未来予測の“新幹線”」であるかのように。
『西洋の敗北』の執筆段階から「本書は特別なテキストになる」という予感がありました。 2023年夏、72歳だった私は、西洋の支配的言説に逆らって、“共犯者”であるバティスト・トゥヴレイを相手に本書の草稿を口述するなかで、半世紀にわたって蓄積した私の知識を総動員しました。
フランスの最西端〔ブルターニュの別荘〕にいた私とフランスの最東端にいたバティストが行なったオンライン作業のことを鮮明に覚えています。私は、さまざまなメモを記した厚紙のカードの束を手に書斎に入り、5時間後、米国に関する3つの章を口述し終えて、椅子から立ち上がりました。生涯をかけて得た知識をこれほど短時間のうちに凝縮した後、本質的な一句をひと筆で一気に書き上げる老書家の姿が頭に去来しました。
本書の成功を説明する上でより重要だと思われる第2の要因、すなわち、この戦争の行く末だけでなく、日本人自身のあり方に関わる日本特有の不安について。
米国の政治・軍事システムの支配下にある日本は、対露経済制裁への参加を強いられたことで、ウクライナという自国とはまったく無関係な遠隔地での戦争に巻き込まれています。「西洋の敗北」に事実上、加担させられているわけです。
しかしここで1つの問いが生まれます。この「敗北」は本当に「日本の敗北」とみなされるべきなのか、と。というのも、米国システムの崩壊は、すべての日本人にとって根源的な問い――「日本は西洋なのか?」という問い――を提起するからです。
明治維新によって非西洋諸国で最初に経済発展を遂げた日本は、1900年頃の第一のグローバリゼーションにおける唯一の“BRICS”でした。第二のグローバリゼーションの終焉が猛スピードで近づいている今、日本は、欧米とともに沈みゆく運命にあるのか、それとも「BRICS」と「西洋」――より具体的には「中国」と「米国」――の間で仲介役を果たすために「自由」を取り戻す運命にあるのか。
ヒロシマとナガサキのトラウマを抱えると同時に、西洋を模倣していた植民地主義時代の振る舞いを糾弾され続ける日本において、地政学を冷静に合理的に考えることが困難なのは確かです。そんななかで、『西洋の敗北』(とその続編である新書『西洋の敗北と日本の選択』)は、「危機にある西洋がいかなる状態にあるのか」「危機にある西洋がいま何を成しているのか」について、客観的かつ冷静な考察を可能にします。
日本の読者が『西洋の敗北』を読むことで、次のことを理解し、さらにもう一つのことを思い出してほしいと願っています。
理解してほしいこと――西洋がこの戦争で敗北しつつあるのは、〔ロシアの勝利というより〕西洋が内部崩壊しつつあるからだ、ということ。
思い出してほしいこと――この敗北は「日本の敗北」ではなく、「日本が模倣した側の敗北」「1945年に日本を占領するに至った側の敗北」であろう、ということ。
2025年10月、私は〔1992年の最初の訪問から33年ぶりに〕広島を再び訪れました。
〔日本人の〕この「気づき」、この自己の再発見に少しでも貢献できるとすれば、これほど光栄なことはありません。
◆ 著者プロフィール
エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
1951年生まれ。フランスの歴史人口学者・家族人類学者。国・地域ごとの家族システムの違いや人口動態に着目する方法論により、『最後の転落』(76年)で「ソ連崩壊」を、『帝国以後』(2002年)で「米国発の金融危機」を、『文明の接近』(07年)で「アラブの春」を、さらには16年米大統領選でのトランプ勝利、英国EU離脱なども次々に〝予言〟。著書に『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』『シャルリとは誰か?」『問題は英国ではない、EUなのだ』『第三次世界大戦はもう始まっている』『人類史入門』(以上、文春新書)『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(文藝春秋)など。
◆ 書籍情報
書 名 『西洋の敗北 日本と世界に何が起きるのか』
著 者 エマニュエル・トッド
訳 者 大野 舞
頁 数 416ページ
判 型 四六判 上製 並製カバー装
発売日 2024年11月8日
ISBN 978-4-16-391909-6
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163919096
書 名 『西洋の敗北と日本の選択』
著 者 エマニュエル・トッド
ページ数 208ページ
判 型 新書判
発売日 2025年09月19日
ISBN 978-4-16-661507-0
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