新電力会社の撤退・倒産、2年で7倍 支払い負担増で約4割の企業が料金値上げ
「新電力会社」事業撤退動向調査(2024年3月)
<調査結果(要旨)>
2024年3月時点で「撤退」「倒産・廃業」した新電力会社は累計で119社(構成比16.9%、前年同月比43.4%増)。2年前(2022年3月、17社)から7倍に増え、2021年4月に登録のあった706社の2割弱を占めた
「新規契約停止」は累計で69社(構成比9.8%、前年同月比38.4%減)、「再開」は47社(同6.7%、2023年6月比51.6%増)。前回調査で「新規契約停止」となった87社のうち、今回は16社(同18.4%)がサービスを再開(一部再開を含む)した
約4割の新電力会社が料金変動について公表し、差別化を推進
[注1] 帝国データバンクは、資源エネルギー庁の「登録小売電気事業者一覧」から、みなし小売電気事業者(旧:一般電気事業者)を除く「新電力会社」を対象として、事業撤退動向について調査した
[注2] 調査に際して、2021年4月7日時点で登録のあった「新電力会社」706社を定点として、これまで5回の調査(2022年3月、6月、11月、2023年3月、6月)を行い、今回は6回目となる
※調査結果は下記HPでも掲載している。
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p240314.html
2020年末からのエネルギー価格高騰で電力調達コストが膨らみ、新電力会社は「逆ザヤ」状態に悩まされてきた。だが、2023年には市場価格が下落し、契約先の新電力会社の倒産や撤退により大手電力会社等から供給を受ける事態となった「電力難民」数を示す「最終保障供給契約件数」も3月1日時点で5912件と、ピーク時の2022年10月(4万5871件)に比べ87.1%減少した(電力・ガス取引監視等委員会、3月15日公表)。
資源エネルギー庁は、価格高騰の負担軽減策として実施してきた「電気・ガス価格激変緩和措置」において、5月分から緩和の幅を縮小する。他方、再生可能エネルギー推進のために運用している「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」を、2024年度は1キロワット時あたり3.49円と2年ぶりに引き上げた。さらに、電力の安定供給のために電力広域的運営推進機関(OCCTO)が2020年度に開設した「容量市場」の運用開始に伴い、2024年4月から容量拠出金も課金されることとなり、負担増となる新電力会社の先行きが注目される。
エネルギー価格高騰の影響で、撤退・倒産企業が1年で4割増加
2021年4月7日時点で登録のあった「新電力会社」(登録小売電気事業者)706社のうち、2024年3月22日時点で「撤退」「倒産・廃業」が判明したのは累計119社(構成比16.9%)。1年前(2023年3月時点)の83社(同11.8%)から36社(43.4%)増加し、2年前(2022年3月時点17社)の7倍に急増した。
内訳をみると「撤退」(これから予定している企業含む)が累計87社(構成比12.3%、前年同月比52.6%増)、「倒産・廃業」は累計32社(同4.5%、同23.1%増)。「撤退」では、前回調査(2023年6月)から23社増加した。エネルギー価格が不安定で安定供給が困難と判断した企業や、親会社の方針などで決定した事業再編の過程で合併や事業移管が発生したため、登録小売電気事業者の登録を廃止・撤退することとなった企業が増えた。
「倒産」は、地元電力(株)(福岡県、2023年12月破産、負債5億9000万円)、(株)スマートテック(茨城県、2024年2月民事再生、負債45億7100万円)とグループ会社の水戸電力(株)(茨城県、2024年2月民事再生、負債4億8000万円)の3社が今回調査で判明した。3社とも、電力販売事業に際しての電力の調達は卸市場や他企業など外部からの仕入れが中心で、市場での調達価格と需要家への販売価格が逆ザヤとなり収益を圧迫した。
「新規契約停止」は累計69社(構成比9.8%、前年同月比38.4%減)となり、市場価格の落ち着きなどから「契約受付再開」は累計47社(同6.7%、2023年6月比51.6%増)へと増えた。前回調査で「新規契約停止」となった87社のうち、今回は16社(同18.4%)がサービスを再開(一部再開を含む)した。
約4割の新電力会社が料金変動について公表
「撤退」や「倒産・廃業」119社を除いた、事業を継続している587社の動向をみると、244社(構成比41.6%)が各社ホームページなどで料金の変動について公表している。公表の形式は、料金改定や約款改定のほか、変動要因となる燃料費調整金などの調整金の導入という形だ。2023年秋以降、需要期を過ぎ電力市場も落ち着いたことから値下げに動く新電力会社もわずかにみられるものの、公表企業の9割の料金が実質値上がりするとみられる。そうしたなかでも魅力を発信しようと春に向けた新生活や引っ越しなどを足がかりにキャンペーン施策を打ち出し、顧客獲得を図っている。
しかし、変動要因は4月以降も発生しそうだ。政府は安定的な電力の供給力を確保するため、「容量市場」という新しい市場を導入した。同市場は、将来の電力の供給力を取引するもので、4年後に使われる見込みの需要を試算し、その需要を満たすために必要な容量を決定する。新電力会社は未来の電力調達のために、4月から市場管理者である電力広域的運営推進機関(OCCTO)に「容量拠出金」を支払う必要がある。そのため、料金が実質値上げになることも一部新電力会社で公表が始まっている。
さらに、3月19日には再生可能エネルギー普及を目的として電気料金に上乗せされている「再エネ賦課金」の引き上げを背景として、大手電力会社10社で5月から値上がりする見通しであることが21日に報じられた。新電力会社は大手電力より割安な料金設定で顧客の囲い込みをしてきたが、課される各種支払いによっては値上げも考えられる状況にあり、安定した顧客獲得や収益向上に課題を残し、今後の経営への影響が懸念される。
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