走行列車の回生電力のエネルギーを有効利用します
○JR東日本では「エネルギービジョン2027」のもと「つくる」「送る・ためる」「使う」のすべてのフェーズでエネルギーの3E(環境性、経済性、安定性)を向上させC(地域社会)の発展につなげる取り組みを推進しています。 ○「送る」のフェーズでは、これまでの取得データを活用してき電電圧※1を調整することで、走行列車の回生電力※2を有効利用する実証実験を2024年5月から横須賀線の一部区間※3で実施し、エネルギーの使用量を3%程度(CO2換算 約300t/年)削減します。「ためる」のフェーズでは、電力貯蔵装置や回生インバータ装置を導入し、これまで有効利用できていなかった回生電力の活用を推進していきます。 ○今後、首都圏線区を中心に同様の取り組みを拡大し、さらなる省エネに取り組んでいきます。 |
※1 き電電圧:列車が走行に使用する電気の電圧のこと
※2 回生電力:ブレーキ操作に伴い発生する電力のこと
※3 横須賀線の一部区間:西大井~新川崎間の約10kmのこと
1.き電電圧低減による回生電力有効利用(送る)
(1) 回生電力の仕組み
列車は架線から供給される電力により加速しますが、減速するときは列車の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回生電力を発電します。発電した回生電力を、付近を走行している列車に供給して有効利用することで鉄道における消費エネルギーを削減しています。
(2) 回生電力有効利用の取り組み
回生車両の近傍に力行車両※4が存在しない場合、回生電力の発生によりき電電圧が上昇して、一定の電圧に達した場合、設備故障が発生しないよう、回生電力を抑制(回生絞り込み)するため、本来、他の列車で利用できるエネルギーが有効利用できません。そこで、変電所から供給する基準となるき電電圧を低減して回生絞り込みが発生しにくい状況を作ることにより、回生電力の有効利用につなげる検討を行ってきました。
一方、き電電圧を低減した場合、当該区間を走行する列車の加速性能が低下し、列車運行ダイヤへの影響が懸念されますが、車両データなどにより回生電力の抑制がかかりやすい区間を把握することにより、列車運行ダイヤに影響を与えない範囲で、き電電圧を抑制することが可能になりました。
※4 力行車両:列車がモーターの動力を車軸に伝えて加速または上り勾配で速度を保つこと
(3) 導入線区
列車の編成数が比較的少なく、使用電力量が小さい横浜線小机駅~八王子駅において、き電電圧低減による回生電力の有効活用の実証実験を行い、2023年6月から本運用を開始しています。また、横浜線と編成数が近い埼京線は2023年10月から同様の実証実験を開始しており、南武線でも2024年6月から実証実験を開始します。
2024年5月からは、列車の編成数が多く、使用電力量が大きい横須賀線西大井駅~新川崎駅において、長期的な実証実験を開始します。当該区間では、エネルギー使用量3%程度(CO2換算 約300t/年)の削減効果を期待しており、実証実験の結果を踏まえ、本運用への移行を検討していきます。
2.回生電力有効利用設備の導入推進(ためる)
き電電圧低減による回生電力有効利用のほか、回生車両の近傍に力行車両が存在しない場合などに、一時的に充電して加速する列車に供給する電力貯蔵装置や、駅などに供給する回生インバータ装置の導入も進めています。これまでに、電力貯蔵装置4台、回生インバータ3台を導入しています。
3.今後の「送る」フェーズの有効利用
今後は、き電電圧低減による回生電力有効利用について首都圏線区を中心に拡大を検討します。また、列車の運行本数は、ラッシュ時間帯とそれ以外の時間帯で大きく変化します。そのため、時間帯別にき電電圧を調整することで、さらなる回生電力の有効利用につなげられることが期待されます。走行する列車本数などの負荷に応じて自動でき電電圧を調整できる変電所設備の導入検討や車両と変電所で取得できる各種データを分析することで、ゼロカーボン・チャレンジへの貢献やエネルギーコスト抑制につなげていきます。
【参考】エネルギービジョン2027
JR東日本グループが目指すエネルギー戦略として「エネルギービジョン 2027~つなぐ~」を2022年7月に策定し、JR東日本の強みである「つくる」「送る・ためる」「使う」の一貫したエネルギーネットワークにおいて、3E(環境性、経済性、安定性)を向上させC(地域社会)の持続的発展につなげる取り組みを推進しています。2050年度までにJR東日本グループ全体のCO2排出量を「実質ゼロ」にすることを目指しています。(URL:https://www.jreast.co.jp/eco/pdf/energy_vision2027.pdf)
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