かつて、海は❝緑⾊❞だった !?「緑の海仮説」が『Nature Ecology & Evolution』に掲載で話題! 生命と宇宙の最前線がわかる松尾太郎著『宇宙から考えてみる「生命とは何か?」入門』
「第2の地球」探査で活躍する松尾太郎さんによる入門書『宇宙から考えてみる「生命とは何か?」入門』。本書で初公開された「緑の海仮説」が、生物学分野で権威のある科学雑誌に掲載されました。
株式会社河出書房新社(東京都新宿区/代表取締役 小野寺優)は、宇宙生物学者・松尾太郎さんの初の著書『宇宙から考えてみる「生命とは何か?」入門』(14歳の世渡り術シリーズ/全国学校図書館協議会選定図書/2023年10⽉刊)内で発表された「緑の海仮説」が、科学雑誌『Nature Ecology & Evolution』に掲載されたことをお知らせいたします。
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『宇宙から考えてみる「生命とは何か?」入門』は、宇宙での生命探査に実際に携わる松尾太郎さんによって書かれた、宇宙と生命の最前線がわかる入門書。14歳からでも、また文系でもわかるようにと豊富な図版で構成された本書は、まさに生物学と天文学の世界を自由に旅するための羅針盤のような一冊です。本書は、朝日新聞の「著者に会いたい」欄や毎日新聞のインタビュー欄でも、紹介されました。
朝日新聞「著者に会いたい」
https://book.asahi.com/article/15074315
毎日新聞インタビュー
https://mainichi.jp/articles/20240115/dde/014/040/003000c
「宇宙とは何か?」「生命とは何か?」――人類が、今日に至るまで挑み続けてきた、この大問題をめぐる壮大な知の歴史を紹介しながら、松尾さんは、地球上に棲むすべての生物を❝地球生命❞としてとらえ、宇宙に無数にいる❝宇宙生命❞の中の一つの種類としての❝地球生命❞を考えてみようと提案します。
そこで初めて語られたのが、「緑の海仮説」です。
(名古屋大学プレスリリース https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2025/02/-25.html)
太陽の光という大きなエネルギーを利用できるかどうか――それは原始的な生命が、複雑化・高度化するための大きな鍵の一つでした。それに成功したのが光合成生物のシアノバクテリアです。シアノバクテリアはこれまで太陽光の緑の光を利用して繁栄してきましたが、その理由はわかっていませんでした。この謎に着目した「緑の海仮説」は、酸素を発生する光合成生物が誕生した水中の光の環境を進化とともに3つに分けています。
(1) シアノバクテリアの祖先が誕生した時代│光の環境=青 海の色=青
(2) 現代のシアノバクテリアに進化した時代│光の環境=緑 海の色=緑
(3) 現代の植物が誕生した時代│光の環境=白 海の色=青
1と2番目の時代は、地球大気に大量の酸素が放出された時期である「大酸化イベント」以前ですが、緑の海仮説はちょうど2番目の時代にあたり、3番目が7~5億年前に起こった2回目の酸化イベント「新原生代酸化イベント」以降の時代になります。
興味深いのは、地球から生物、生物から地球へと、地球と生命は互いに影響を及ぼし合いながら、共に進化していることです。
生息域が青い光の環境の(1)の時代、シアノバクテリアの祖先は、青の光を利用して光合成を行なっていましたが、次第に自ら発生した酸素によって作られた酸化鉄が青の光を吸収して、青の光が水中の生息域に届かなくなります。やがて緑の光に満たされた海の中で、進化の過程で偶然、緑の光を吸収できる色素を持ったシアノバクテリアが優勢になります(2)。その後、24億年前と6億年前の2回の酸化イベントが起きて、大気に酸素が蓄積されオゾン層が形成されると、紫外線の脅威がなくなり、シアノバクテリアはさらに水面近くまで生息域を広げていきます。この生息域では、シアノバクテリアは青から赤までの光(白の光環境)を利用できるようになりました。さらに酸化鉄が海から完全に除去され、現在と同じ、青い海となったのです(3)。
カール・セーガン博士は、かつてボイジャー1号から可視光で撮影された真っ黒な宇宙に浮かぶ小さな点の地球の写真を見て、ペイル・ブルー・ドット(Pale Blue Dot 淡く青い点)」と表現しました。ぺイル・ブルー・ドットは、地球をふくむ生命を宿す惑星を表す象徴的な言葉になりました。
もし緑の海の時代に、地球を写真でとらえたら、地球は青がかった緑のぺイル・グリーン・ドット(Pale Green Dot)に見えたことでしょう。地球と生命の共進化の現場となった、光合成生物が作りかえた緑の海は、今後、宇宙に生命が存在することを示す新たなサインになるかもしれません。
著者も参加するNASA の宇宙生命探査計画ハビタブル・ワールズ・オブザバトリー(Habitable Worlds Observatory)でも、ぺイル・グリーン・ドットが生命活動の新たな指標として注目されています。
「緑の海仮説」は、生命・地球・宇宙という自然科学全体を見わたす、スリリングで壮大な射程をもつ説なのです。
あなたも本書を通して、宇宙生命探査の最前線をのぞいてみませんか。そして互いに影響を及ぼし合いながら共に進化してきた、かけがえのない地球と私たち❝地球生命❞の未来に思いを馳せてみませんか。
■『Nature Ecology & Evolution』掲載を記念し、「緑の海仮説」部分 3章「宇宙生命を考えるヒント」の章を無料公開!
https://web.kawade.co.jp/tameshiyomi/119409/
■著者略歴
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松尾 太郎 (まつお・たろう)
2008年、名古屋大学博士後期課程修了。その後、NASAジェット推進研究所でウェスリー・トラウブ博士に師事した後、国立天文台、京都大学、大阪大学、NASAエイムズ研究センターを経て、現在、名古屋大学准教授。専門は、太陽系外惑星の大気を分光する手法や技術の開発。欧米での「生命を宿す惑星」を探査するための宇宙望遠鏡の開発に参加するかたわら、光合成生物の進化の研究にも取り組む。宇宙からの視点を通して、生命の普遍的な性質の理解を目指している。
■書誌情報
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書名:宇宙から考えてみる「生命とは何か?」入門
著者:松尾太郎
装画 カシワイ
ブックデザイン 高木善彦(SLOW-LIGHT)
仕様:四六判/240ページ
発売⽇:2023年10⽉23日
税込定価:1,562円(本体価格1,420円)
ISBN:978-4-309-61757-2
URL:https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309617572/
●全国学校図書館協議会選定図書
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