誰もが「つながり」を持てる地域へ 新潟市でひきこもり理解広める全国キャラバン
「人に頼る一歩を踏み出して」とメッセージ
パルシステム連合会が企画委員を務める、厚生労働省による「ひきこもり広報事業」の一環である「ひきこもりVOICE STATION全国キャラバン」が10月11日(土)、NOCプラザ新潟卸センター(新潟市東区)で開催されました。会場とオンラインで133人が参加し、ひきこもり経験者や家族、支援者のパネルトークを通じて当事者のさまざまな思いに触れ、理解を深めました。
当事者から支援者になり見えたものは
厚生労働省が主催し文部科学省が後援するひきこもりVOICE STATION全国キャラバンは、8月23日(土)から11月8日(土)にかけて神奈川、高知、秋田、新潟、奈良、大分の6県の会場で開催されています。社会の多様性への不寛容に違和感を持ち、心にブレーキをかけ、ひきこもり状態にある人たちへの理解を広めるイベントです。
4会場目となった新潟市では、ひきこもり経験があるNPO法人新潟ねっと(新潟市西区)代表理事の村山賢さんがアンバサダーを務めました。「ひきこもりVOICE STATION事務局」のメンバーであるNPO法人グリーンズ(東京都千代田区、鈴木菜央代表理事)の東善仁さんが司会を務め、2人のゲストとパネルトークをしました。ゲストが当事者から支援者になって見えてきたものを「渦中にいた頃」「家族」「つながるタイミング」「今見えているもの」の4つのキーワードから引き出しました。

渦中の思いと家族の存在
登壇したのは、新潟市西区「親の会」世話人の永井磨澄さんとひきこもり経験をもつ福祉専門職の安田翔馬さんです。永井さんは息子の高校と専門学校時代の不登校をきっかけに、親の会に参加しました。義務教育の間は相談に乗ってくれた学校の支援がなくなり、NPO法人新潟ねっととつながったことで、現在は青年を対象とした親の会を立ち上げ運営しています。
安田さんは大学での就職活動に失敗したことをきっかけに「自分は他人より劣っていて、社会に出て働く能力がない」と思い込むようになり、無気力な自分を責めながら10年を過ごしました。渦中にいた頃は、何もやっていないのに「何をやってもうまくいかない」との思いで、「自分の責任で陥っているひきこもりの状況に対し、他人に助けを求めるのはおこがましい」と考えていたそうです。家族は、ゲームばかりしている安田さんを叱って働けと言うこともなく、食事は一緒に取るなど普通に接し、良い意味で放置してくれていたと話します。
永井さんも、息子の不登校を「他の子が普通にできることができないのは、本人の甘えで育て方が悪かった」と自分を責め、当初は学校に行かせようと説得をしていました。しかし親にできることは、メンタルの回復に欠かせない「安心して過ごせる場所づくり」くらいしか無いと考えるようになりました。食事と睡眠の確保をフォローしながら、家事の役割を持ってもらうなど、大人としての本人の尊厳を大切にして接していたそうです。

「つながり」から見えてきたこと
永井さんは、息子のメンタル回復のためにさまざまな相談機関を探すなか、当初は「もっと大変な状況にある人もいるのに、自分が相談しても良いのか」とためらいがあったそうです。しかし、ステージⅠのがん患者が「もっと重症の人がいる」と受診をためらわないのと同じで、早期の対応が必要と考え支援につながりました。自身が介護の仕事をしていたことから「家族だけで抱え込む必要はなく、地域の第三者だからできることやアドバイスもあります」と話します。現在は社会福祉士の資格を取り、助けてくれる人がいる世の中に対し、微力ながらでもできることを返していきたいと伝えました。
安田さんは、ひきこもっていた時期にオンラインゲームのコミュニティに参加し、運営の役割を担うようになりました。メンバーが楽しくゲームをできるよう、交流や意見交換を重ねるなか、つながり続けていきたいとの気持ちが生まれはじめました。そのためには社会に出て、賃金を得て経験や知識を積む必要があると自分の内側から気力が湧いてきて、心療内科や就労支援機関につながりました。福祉の仕事を始めてからは「何もできないと思っていた自分にも意外とできることはあるし、不安でもやってみれば何とかなる」と思えるようになったと話します。
二人は、ひきこもりにある状態は「苦しい」としか言葉では表現できず、「助けて」と言えない気持ちも理解できますが、人を頼ってと話します。「相談機関でも友人でも、手を差し伸べて受け入れてくれる人は必ずいます。諦めず一歩を踏み出してください」と伝え、トークを締めくくりました。
ワークショップで「つながり」作るアイデアを
イベント第2部は、会場の参加者約60人でワークショップを実施しました。参加者それぞれが当事者の声や望みに思いを馳せ、新潟にある人や物、事などの地域資源を掛け合わせ支援につなげるアイデアを出し合い「新潟みらい新聞」にまとめました。
安田さんのオンラインゲームから生まれたつながりにアイデアを見いだしたグループは、バーチャル空間で自分の得意なことを必要とする人に提供し、対価も得られる場所づくりを提案しました。農業が盛んな新潟の地域資源にアイデアを得たグループは、人手不足の農家とのマッチングシステムで農作業に参加し、収穫した農産物を調理し交流するつながりづくりなどを提案しました。


ひきこもりの状況にある人だけでなく、多様な世代が地域の中でつながりをつくり、それぞれができることで役割を果たしていくことで、誰もが生きやすい地域づくりを目指そうという、多様なアイデアが出されたワークショップとなりました。
国際協同組合年に生協として理解広める
ひきこもりVOICE STATION全国キャラバンは、当事者や家族、支援団体など知見を有する委員が参加し、企画が検討されています。パルシステムは生活協同組合の立場から、より多くの消費者に「ひきこもり」への理解を広めるため参加しています。「つながり」による協同組合の力を社会に広く周知する国際協同組合年に、生協の力を発揮します。
新潟会場で参加したパルシステム新潟ときめき(本部:新潟県西区、理事長:瀬野悦子)の管理・運営室の五十嵐大輔室長は「実際に当事者の話を聞いたのは初めてですが、生協として何ができるのか身につまされる思いがしました」と話しました。金沢ゆかり理事は「パルシステムが連携する地域団体による電話相談などで『つながり』を作る一助になれば」と課題を受け止めました。
今後の「ひきこもりVOICE STATION全国キャラバン」開催概要
【開催日時、開催都市@会場】
10月18日(土)13:00~16:00
奈良県奈良市@奈良春日野国際フォーラム甍~I・RA・KA~/会議室1・2
11月8日(土)13:00~16:00
大分県大分市@大分県消費生活・男女共同参画プラザアイネス/大会議室
【スケジュール】変更の可能性あり
1部 13:00~14:25 パネルディスカッション
・ひきこもり当事者・経験者・家族の体験談のシェア
2部 14:30~16:00 ワークショップ
・当事者の声をヒントに、誰もが生きやすい地域をつくるアイデイア企画
(会場都合で変更の可能性あり)
【申込締切】各会場開催日前日17:00
パルシステムは多様な立場にある人たちへの理解を広めるため、情報メディア「KOKOCARA」や地域活動情報誌「のんびる」での記事掲載や連携団体の「ひきこもり女子会」開催に協力しています。今回の企画もパルシステムの利用者をはじめ、連携団体などと協力し、より多くの人たちへの参加を呼びかけます。
パルシステムはこれからも、さまざまな状況に置かれる人たちの声に耳を傾け、誰もが暮らしやすい地域づくりを進めていきます。

パルシステム生活協同組合連合会
所在地:東京都新宿区大久保2-2-6 、理事長:渋澤温之
13会員・統一事業システム利用会員総事業高2,604.2億円/組合員総数176.2万人(2025年3月末現在)
会員生協:パルシステム東京、パルシステム神奈川、パルシステム千葉、パルシステム埼玉、パルシステム茨城 栃木、パルシステム山梨 長野、パルシステム群馬、パルシステム福島、パルシステム静岡、パルシステム新潟ときめき、パルシステム共済連、埼玉県勤労者生協、あいコープみやぎ
HP:https://www.pal-system.co.jp/

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