三省堂書店神保町本店人文社会ランキング1位!「常時接続の世界」で私たちはどう生きるか。『スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険』増刷
株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン(本社:東京都千代田区、取締役社長:谷口奈緒美)は2022年11月18日刊行の『スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険』(谷川嘉浩・著)を増刷しました。
- スマホ時代の生き方を考察する1冊、増刷決定!
フリードリヒ・ニーチェという哲学者は、『ツァラトゥストラ』という本の中で以下のように述べています。
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君たちにとっても、生きることは激務であり、不安だから、君たちは生きることにうんざりしているんじゃないか?〔……〕君たちはみんな激務が好きだ。速いことや新しいことや未知のことが好きだ。̶̶君たちは自分に耐えることが下手だ。なんとかして、君たちは自分を忘れて、自分自身から逃げようとしている。
―
「激務」というと仕事のことを思い浮かべてしまうかもしれませんが、それだけにはとどまりません。
例えば、こんな生活も珍しくなくなってきているのではないでしょうか?
~
モニター上では、話題になっていたNetflix の新作ドラマのPVが自動で流れた状態のまま、実況者の深夜配信のアーカイブをイヤフォンで聴き、スマホ上で画像をレタッチ(加工)して友だちに送りながら、さきほど仕掛けた「ほったらかし家電」から漂ってくる角煮のにおいを感じている。
この間、スマホではさっき買った電子書籍のダウンロードがバックグラウンドで処理されていて、パソコンではDiscord で別の友人と通話をつなぎっぱなしにしている。
~
これを「激務」と呼ばずしてなんだというくらい、私たちは細かなタスクを同時並行して行っています。同時並行していることに気づいていないくらいです。
そして、ニーチェのいう「君たちは自分に耐えることが下手だ。なんとかして、君たちは自分を忘れて、自分自身から逃げようとしている。」という指摘は、「予定を詰め込み、スマホやSNSなどのインスタントな刺激で生活を取り囲み、自分の不安やもやもやに向き合わず、自己逃避している。」という私たち現代人の姿に重なっています。
本書では、ニーチェ、オルテガ、ハンナ・アーレント、パスカルなどの哲学者のほか、村上春樹やエヴァンゲリオンなど様々なものを題材にして、私たちの主体性が奪われている現状を打破するために必要な「孤独」とそれを確保するための「趣味」について論じていきます。
スマホ時代に私たちはどう生きるべきかについて、新進気鋭の哲学者が考察を重ねていく1冊です。
哲学好きの方だけにとどまらず「読みやすくおもしろい」と評価をいただき、三省堂書店神保町本店で人文社会ランキング1位(2022年12月12日付)になりました。ご好評を受け、このたび本書を増刷しました。
- 『スマホ時代の哲学』詳細
インターネットの発達、スマートフォンの普及がもたらしたものは何でしょうか。それは、いつでもどこでも他者とつながれる「常時接続の世界」です。
持ち歩けるデバイスを使って、ここではないどこかで別の情報を得たり、別のコミュニケーションに参加したりすることが可能になっています。
しかし、常時接続の世界で失われたものもあります。それは〈孤立〉と〈孤独〉です。
〈孤立〉とは、他者から切り離されて何かに集中している状態のことです。マルチタスキングにより、注意が分散し、一つのことに没頭することを妨げてしまっています。
〈孤独〉とは、自分自身と対話することです。〈孤独〉が失われるとは、退屈に耐えきれず、何か刺激やコミュニケーションを求めてしまい、自分自身と向き合うことができなくなっているということなのです。
ここでいう〈孤独〉は〈寂しさ〉とは異なります。
〈寂しさ〉は、いろいろな人に囲まれているはずなのに、自分はたった一人だと感じていて、そんな自分を抱えきれずに他者を依存的に求めてしまう状態です。
スマホという新しいメディアは、〈寂しさ〉からくる「つながりたい」「退屈を埋めたい」などというニーズにうまく応答してくれます。しかし、そのつながりは希薄なものなので、ふとした瞬間にむなしくなったり、「つながっていても一人ぼっち」だと感じさせ、〈寂しさ〉を加速させかねません。
私たちには〈孤独〉が、そして自分自身と向き合う時間が必要なのです。
本書では新進気鋭の哲学者が、哲学からメディア論、カルチャーまで、様々な切り口でスマホ時代に私たちはどう生きるべきかについて考察を重ねていきます。
- 書籍概要
【目次】
はじめに
第1章 迷うためのフィールドガイド、あるいはゾンビ映画で死なない生き方
第2章 自分の頭で考えないための哲学――天才たちの問題解決を踏まえて考える力
第3章 常時接続で失われた〈孤独〉――スマホ時代の哲学
第4章 孤独と趣味のつくりかた――ネガティヴ・ケイパビリティがもたらす対話
第5章 ハイテンションと多忙で退屈を忘れようとする社会
第6章 快楽的なダルさの裂け目から見える退屈は、自分を変えるシグナル
おわりに
あとがき
【著者情報】
谷川嘉浩(たにがわ・よしひろ)
1990年生まれ。京都市在住の哲学者。
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在、京都市立芸術大学美術学部デザイン科特任講師。
哲学者ではあるが、活動は哲学に限らない。個人的な資質や哲学的なスキルを横展開し、新たな知識や技能を身につけることで、メディア論や社会学といった他分野の研究やデザインの実技教育に携わるだけでなく、ビジネスとの協働も度々行ってきた。
単著に『鶴見俊輔の言葉と倫理:想像力、大衆文化、プラグマティズム』(人文書院)、『信仰と想像力の哲学:ジョン・デューイとアメリカ哲学の系譜』(勁草書房)。共著に『読書会の教室』(晶文社)、『ゆるレポ』(人文書院)、『フューチャー・デザインと哲学』(勁草書房)、『メディア・コンテンツ・スタディーズ』(ナカニシヤ出版)、Neon Genesis Evangelion and Philosophy (Open Universe)、Whole Person Education in East Asian Universities (Routledge)などがあるほか、マーティン・ハマーズリー『質的社会調査のジレンマ:ハーバート・ブルーマーとシカゴ社会学の伝統』(勁草書房)の翻訳も行っている。
【書籍情報】
タイトル:『スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険』
発売日:2022年11月18日
刊行:ディスカヴァー・トゥエンティワン
仕様:A5判変型/312ページ
ISBN:978-4-7993-2913-9
定価:1760円(税込)
【本書のご購入はこちら】
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