移民・難民危機:地中海中央ルートを渡る子ども・若者の77%が虐待や搾取を経験【共同プレスリリース】
ユニセフ/IOM報告書『苦しみの旅(Harrowing Journey)』発表
【2017年9月12日 ニューヨーク/ブリュッセル 発】
ヨーロッパを目指す移民・難民の子どもたち、若者たちは、重大な人権侵害に直面しており、地中海中央ルートを渡航する子どもや若者の77%が虐待、搾取、また人身売買につながるようなことを直接経験していると、本日ユニセフ(国連児童基金)とIOM(国際移住機関)が発表しました。
報告書『苦しみの旅(原題:Harrowing Journey)』は、移民・難民はみな高いリスクに晒されているとはいえ、特に子どもと若者は25歳以上のおとなに比べ搾取や人身売買の被害に遭う可能性がはるかに高く、地中海東ルートを渡る子ども・若者はおとなの2倍近く、地中海中央ルートを渡る子ども・若者はおとなより13%も、こうした被害に遭いやすいとしています。
ガンビアから子どもだけで旅してきた16歳のアイマモは、イタリアの避難施設でインタビューに応え、リビアに到着した際に人身売買業者によって数カ月にわたり過酷な肉体労働を強いられたことを話してくれました。「もし逃げ出そうとすれば、奴らは撃つ。もし働く手を止めたら、奴らは殴る。僕たちは、奴隷のようだった。そして一日の仕事が終わると、僕たちは鍵をかけた場所に閉じ込められていたんだ」
この報告書は、IOMが実施した1万1,000人の子ども・若者を含む2万2,000人余りの移民・難民へのインタビューで得られた証言をもとにまとめられました。
「いまや、地中海を渡る子どもたちは虐待され、売買され、殴られ、差別されるのが普通のことになってしまっているという厳しい現実があります」とユニセフ欧州地域事務所代表兼欧州難民危機特別調整官のアフシャン・カーンは述べました。「EUのリーダーたちは、安全で合法的な移民ルートの確保や保護された交通路の設置、移民の子どもたちの拘留に代わる代替案を見出すことなど、持続的な解決策に取り組まなければなりません」
「暴力や情勢不安、貧困から逃れるために国を後にした人々にとって、移住する要因は耐え難いものであるからこそ、自らの尊厳や幸福や命さえ犠牲にしなければならないかも知れないことを承知の上で、彼らは危険な旅に出るのです」とIOMのEU・ノルウェー・スウェーデン地域代表Eugenio Ambrosiは話しました。
「より安全な正規の移民ルートが開設されなければ、他の対策も効果のないものになってしまいます。わたしたちはまた、人々の法的立場に関わらず移民プロセスの中で最も支援を必要としている人を見つけ出して保護するメカニズムを改善し、権利に基づいた移民へのアプローチを再び活性化させなければなりません」(Ambrosi代表)
本報告書はまた、すべての移民・難民の子どもたちが高いリスクにさらされている中でも、特にサハラ以南のアフリカ出身の子どもたちは、他の地域から逃れてくる子どもたちよりも搾取や人身売買の被害に遭う可能性がはるかに高いと述べています。地中海東ルートでは、その割合はアフリカの子ども65%に対してその他の地域の子どもは15%。地中海中央ルートにおいても83%に対して56%です。この違いの背後には、人種差別が大きな潜在的要因としてあると考えられます。
おとなの同伴なく、または非常に長期間にわたって旅をしている子どもたちや若者たちは、受けられた教育のレベルの低さも相まって、その旅路の中で人身売買業者や犯罪グループによって搾取される可能性が非常に高くなります。本報告書によると、地中海中央ルートは特に危険で、ほとんどの移民・難民がいまだ犯罪や武力や無法状態で混乱しているリビアを通ってやってきます。若者は渡航のために平均で1,000米ドルから5,000米ドルを支払うため、多くの場合借金を抱えたままヨーロッパにたどり着き、それが彼らを更なるリスクに晒しています。
本報告書は、移民・難民の母国、通過する国々や目的地の国、アフリカ連合やEU、ドナーの支援を受けて活動する国際機関や各国内の機関等すべての関係者に対し、一連の行動を優先的に行うよう求めています。
その行動には以下が含まれます。
- 移動する子どもたちのための安全な正規のルートを開設すること
- 母国でも、通過点の国や目的地の国でも、移民・難民の子どもたちを保護するサービスを強化すること
- 移動する子どもたちの拘留に代わる代替案を見出すこと
- 人身売買と搾取を防ぐために国境を越えて活動すること
- 外国人嫌悪や人種差別、すべての移民・難民に対する差別と闘うこと
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ユニセフは、すべての政府に対して、難民・移民の子どもたちを保護するための6つの具体的な行動を提示したアジェンダの適用を引き続き求めています。アジェンダが掲げる行動目標には以下が含まれます:
- 子どもの難民・移民、特におとなの同伴者のいない子どもたちを、搾取や暴力から保護すること
- 問題解決につながる様々な代替策を提示することによって、難民認定や移住を求める子どもたちの拘留を終わらせること
- 子どもを保護し、法的身分を与えるための最善の方法として、家族が一緒にいられるようにすること
- すべての難民・移民の子どもたちに、学び続けられる機会と、保健やその他の質の高いサービスへのアクセスを提供すること
- 大規模な難民・移民問題を引き起こしている根本原因に対処する行動を、強く求めること
- 難民・移民が通過する国々や目的地の国々において、外国人に対する嫌悪、差別、社会的排除と闘う対策を促すこと
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■ 本信の原文(英文)版、本報告書(英文)および本信に関連する動画・画像は http://uni.cf/2xZvdtm からダウンロードいただけます。
■本信の関連動画(日本語テロップ付)は以下からご覧いただけます。
https://youtu.be/SFJjRptOo30
https://youtu.be/g_K8h_Ju7HU
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■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する34の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国34の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 (www.unicef.or.jp)
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