企業が選ぶ2025年のキーワード、 「トランプ2.0」がトップ 「値上げ」など解決が急がれる経営課題のワードも上位に
2025年の注目キーワードに関するアンケート
2025年が幕を開けた。2024年は新型コロナウイルス感染症が感染法上の5類へ移行してから1年が経過し、アフターコロナでの企業活動が本格化した。上場企業の好調さを反映して日経平均株価がバブル期に付けた史上最高値を更新したほか、賃上げの動きが活発化し、春闘では平均賃上げ率が5.10%にのぼるなどデフレ脱却の動きが前進した。また、記録的な円安を背景に訪日観光客数が過去最多を更新し、インバウンド消費が国内景気を下支えした。
一方で、円安による輸入物価の上昇などにともなう相次ぐ原材料費や食品などの値上がりが消費の拡大を阻む一因となったほか、多くの企業の収益を圧迫した。また、マイナス金利政策の解除、17年ぶりの利上げにより金融政策の正常化が図られ、長期的な国内経済へのプラスの影響が期待される一方、財務基盤が比較的弱い中小企業に与える影響が危惧されている。さらに、「2024年問題」に直面している運輸業などを含む幅広い業界で慢性的な人手不足が続いていた。
2025年は、引き続き物価の高騰への対応など企業経営における課題の解決が急がれる。「米国第一主義」のトランプ新政権の政策の行方や中東情勢なども懸念されており、注視すべき材料は少なくない。そこで帝国データバンクは、2025年の注目キーワードについて企業へアンケートを行った。
<調査結果(要旨)>
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2025年のキーワード、「トランプ2.0」が約9割でトップ。「値上げ」「賃上げ」が続く
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業界別、『不動産』で「金利のある世界」が突出して高く、『運輸・倉庫』は「中東情勢」が目立つ
※アンケート期間は2025年1月10日~15日、有効回答企業数は1,805社(インターネット調査)
2025年のキーワード、「トランプ2.0」が約9割でトップ。「値上げ」「賃上げ」が続く
2025年の注目キーワードについて尋ねたところ、第2次トランプ政権を表す「トランプ2.0」をあげた企業の割合が87.4%でトップとなった(複数回答、以下同)。
以下、食品、ガソリン、原材料などの「値上げ」(80.9%)も80%を超えて続き、「賃上げ」(74.8%)、「人手不足」(70.0%)、「円安インフレ」(57.1%)など賃金や物価の上昇に関わるキーワードが並んだ。また、企業や個人での活用が拡大している「生成AI」(52.0%)も5割を超えて、6位にランクインした。
「人口減少」「異常気象」といった社会的な問題のほか、増税・減税などに関連する「財政政策」や「年収の壁」も4割の企業が注目するキーワードにあげた。
「トランプ2.0」をキーワードに選んだ企業からは、「グローバル経済においてトランプ政権の政策が大きなポイントとなる」(機械製造)や「関税引き上げなどにともなう自社メキシコ現地法人への影響を懸念」(鉄鋼・非鉄・鉱業)といった声が聞かれた。トランプ政権の政策により直接的な影響を見込む企業のみならず、経済全体に与えるインパクトによって間接的な影響を懸念する企業も多かった。
「値上げ」や「賃上げ」を選んだ企業からは、「昨年に引き続き、原材料の値上げ分を価格転嫁できなくて採算が厳しい状況」(繊維・繊維製品・服飾品製造)や「賃上げ圧力の強まりによるコスト負担の増加は中小企業にとって会社の存続に関わる問題」(不動産)といった厳しいコメントが寄せられた。一方で、「値上げが進むとともに賃上げが実施され、実質賃金も上がる好循環を期待している」(医療・福祉・保健衛生)といった、値上げ・賃上げに対する前向きな意見もあがっていた。
業界別、『不動産』で「金利のある世界」が突出して高く、『運輸・倉庫』は「中東情勢」が目立つ
業界別に、全体より10ポイント以上高かった注目キーワードをみると、『不動産』では金利の上昇による住宅購入の抑制懸念から「金利のある世界」(40.2%、全体比+17.1ポイント)が全体を大きく上回ったほか、『運輸・倉庫』では原油価格に影響を及ぼし得る「中東情勢」(43.4%、同+13.2ポイント)が目立った。
本アンケートの結果、2025年の注目キーワードに「トランプ2.0」をあげた企業が9割近くに達し、海外取引の有無に関わらず多くの企業でトランプ政権の政策による影響を注目している様子がうかがえた。以下、「値上げ」、「賃上げ」、「人手不足」、「円安インフレ」など賃金や物価の上昇に関わるキーワードが並んだ。また、「生成AI」も5割超となり、社会全体の生産性向上を期待する声のほか、技術の進化を含め世の中の急速な変化に置いていかれないよう意識を高めたいといった前向きな意見も聞かれた。
2025年は原材料費や人件費など諸コストの上昇に加え、個人消費の低減や慢性的な人手不足など、企業経営にまつわる問題が多く残るなかでスタートした。政府が掲げる“賃金と物価の好循環”の実現への期待を持って「賃上げ」を今年の注目キーワードとして選んだ企業も少なくないが、それにともなうコスト負担増への対応も含め、解決が急がれる経営課題に関連するワードが多くあがる形となった。
また、新たな注目材料として世界経済への影響力が高いアメリカの政権交代も浮かび上がったほか、「ロシア・ウクライナ戦争」や「チャイナリスク」など海外の政治情勢を危惧する声も依然として多い。
2025年は企業を取り巻く環境に厳しさが増すなかで、企業の課題解決力とビジネス環境の変化への迅速な対応力のほか、政府・行政による経済・外交など多岐にわたる効果的な政策が問われる1年となろう。
<企業から寄せられた声>
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前回のトランプ政権時、中国とのいざこざでかなり仕事に影響が表れたため、今回どうなるかが不安。また、賃上げ、値上げは確実なのでさらに厳しい1年になりそう(機械製造)
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トランプ新政権の発足で中国などとの関係性がどうなるのか、それにより世界経済が混乱するのではないかと考えている。また、ゲリラ豪雨など異常気象の被害、トラックドライバーの激減による輸送の困難、円安にともなう物価の上昇なども懸念される(運輸・倉庫)
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原油高から始まって、大半の材料の価格が上がり、顧客への値上げ要請に苦慮する。国内経済の安定が見込めるのかが不安(飲食料品・飼料製造)
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2030年までに最低賃金を1,500円にしたいという政府の方針もあり、賃上げ圧力が強い。今後の価格転嫁が心配(繊維・繊維製品・服飾品製造)
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賃上げの努力をしているが、業種的に人が集まりづらい。市場状況が良いので人材登用を強化したいが、なかなか良い人材が来ず人手不足の状態(機械・器具卸売)
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第2次トランプ政権の影響の不透明さ。輸入商品を扱っているのでどこまで円安が続くのかも恐怖(その他の卸売)
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中小企業として切羽詰まっていることは、間違いなく「人手不足」、「賃上げ」、価格転嫁・補助金が追いつかない「物価高騰」に尽きると考える(建設)
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生成AIをうまく活用できる会社が生産性を上げ、活用できない会社が取り残される(専門サービス)
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人口減少や値上げによる影響がとても気になる。実質賃金が上昇しないなかでの値上げは厳しい。トランプ新政権の発足による物価への影響ほか、長引くロシア・ウクライナ戦争や中東問題にともなうエネルギー価格への影響が懸念される(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売)
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