「売るコメがない」米屋が苦境、廃業が2年連続で増加 米屋の約2割が「赤字」、米価高騰に転嫁追いつかず
「米穀店(米屋)」の休廃業・解散(倒産)動向(2024年度)

株式会社帝国データバンクは、いわゆる「米屋(米穀店)」における倒産・休廃業解散の発生状況について調査・分析を行った。
SUMMARY
2024年度に発生した「米屋」の休廃業・解散件数は88件となり、2年連続で増加したほか、コロナ禍以降の過去5年間では最多を更新した。コメ不足が鮮明となり、仕入れ量が確保できなかったほか、大幅な価格高騰や価格引き上げの難しさが影響して業績が悪化した米屋が目立った。経営者の高齢化も要因となり、事業継続を諦めるケースが増加しているなか、2025年度も閉店・廃業や倒産が増加する可能性が高い。
[注] 「米屋」:TDB業種細分類における「米麦卸売業」と「米穀類小売業」が対象
集計対象:倒産は負債1000万円以上、法的整理によるもの。休廃業・解散とは、倒産(法的整理)を除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態を確認(休廃業)、もしくは商業登記等で解散(ただし「みなし解散」を除く)を確認した企業
集計期間:2000年4月1日~2025年3月31日まで
「米屋」の廃業、2024年度は88件 2年連続で増加
「令和の米騒動」といわれるコメ不足を背景に、コメを専門に取り扱う「街の米屋」の廃業が目立ってきた。2024年度(2024年4月~25年3月)に発生した、米穀類の卸売や販売を手がける「米屋」の休廃業・解散(以下「廃業」)は、累計88件発生した。前年度(80件)から2年連続で増加したほか、コロナ禍以降の過去5年間では最多を更新した。

米屋はこれまで、コメ販売の自由化により大手スーパーとの販売競争が激化したことなどを背景に淘汰が進んできた。しかし、近時は天候不順や病害の発生、農家の減少から全国的なコメ不足が起こり、2024年夏以降に米屋で在庫量が不足する事態に陥るケースが発生した。その結果、予定していた量を仕入れることができなくなり、取引先からの引き合いが強くても販売ができなくなった米屋や、仕入れ価格が大幅に高騰したものの、価格へ転嫁できずに業績が悪化し、一時休業や廃業を余儀なくされる米屋が増加している。
2024年度の米屋における損益状況をみると、25.2%の米屋が前年度から「減益」となったほか、22.4%は「赤字」に転落し、赤字・減益を合わせた「業績悪化」の割合は47.6%にのぼった。コメ不足を背景に、在庫分のコメが高値で取引できたことで売り上げは増加したものの、新米の仕入れコストが想定以上に増加したことで、収益力が大幅に低下した米屋も多かった。

実際に、JAグループをはじめとするコメの集荷業者が相対で取引する価格は、2024年産の新米(出回り~2月まで)の平均で玄米60kgあたり2万4383円となり、前年産から約6割、5年間では約7割値上がりした。特に、中食や外食用に使用されることが多いほか、昨今の物価高で消費者からの支持も高かった「安い銘柄」のコメでは、5年間で2倍に高騰するなど値上がりが著しい。こうした銘柄の取り扱いや販路に強みを有する米屋では、仕入れ価格の上昇による影響を強く受けた。加えて、特に地域密着で経営してきた米屋は家族経営など小規模で運営されており、経営者や従業員の高齢化が進んでいるケースも多く、安定した経営が望めなくなり、事業継続を諦めたケースが増加した可能性がある。
足元では、仕入先を広げながら販売先を既存顧客に限定するなど、消費者の手に届くまで安定した米の供給に努める米屋も多い。ただ、品薄感が強まる食品スーパーや大型チェーン店以上に「コメが回ってこない」といった声も聞かれ、「米屋で売るコメがない」ことに対する危機感が強まっている。コメ不足を理由に廃業・倒産するケースは、2025年度も増加する可能性がある。
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