博報堂、LG電子、Tools for Humanityとともにアドフラウドを抑制し人間のみに広告を配信する「Human-Verified Ad Network」の実証実験を実施

株式会社博報堂

株式会社博報堂(本社:東京都港区、代表取締役社長:名倉健司、以下博報堂)の新規事業開発を担うミライデザイン事業ユニットとLG Electronics Inc.(本社:韓国ソウル市、CEO:趙周完、以下LG電子)、サム・アルトマン氏とアレックス・ブラニア氏、マックス・ノヴェンスターン氏によって共同発明されたWorldの主要企業である Tools for Humanity Corporation(本社:米国カリフォルニア州サンフランシスコ、共同創業者兼CEO:Alex Blania、共同創業者兼会長:Sam Altman、以下Tools for Humanity)は、この度、デジタル広告領域におけるAI時代のアドフラウド問題に対応する新たな取り組みとして、人間のみに広告を配信するアドネットワーク「Human-Verified Ad Network」の実証実験を実施しました。

長年デジタル広告業界が直面している主要な課題として、アドフラウドの蔓延、プライバシー規制の強化に伴うターゲティング精度の低下、ユーザーエンゲージメントの低下などが挙げられます。

今回の実証実験では、博報堂が長年培ってきた広告事業の知見を活かし、社会課題であるAIなどを悪用した広告費の不正搾取(アドフラウド)の解決策となるサービス全体の構想を主導しました。具体的には、博報堂が開発したミニアプリ「boba」をユーザーとの接点とし、人間証明技術「World ID」と、LG電子が開発した広告の表示履歴をブロックチェーン上に記録できるWeb3基盤広告ネットワーク「Web3 Ad Network」を活用し、真に人間に表示された広告にのみ費用が発生する、透明性の高い経済エコシステムの構築を目指しました。

本ネットワークを用いて「アプリ内で認証された人間にのみ(インセンティブを付与しない)」広告を配信した結果、無条件下での「主要なWeb2の広告メニュー」への広告配信と比較して、CTR(クリック率)が約50%、直帰率(※1)は約15ポイント改善しました。この結果は、構築した概念の有効性を示すものであり、デジタル広告業界における信頼性と効果の新たな基準を確立する一助となることが期待されます。

(※1 Webサイトに訪問したユーザーが、最初に訪れたページだけを閲覧し、他のページに遷移することなくサイトから離脱したセッションの割合)

博報堂は今後も、博報堂DYグループの横断的な AI 推進プロジェクト(HCAI Initiative)の一環として、 本ネットワークの事業化に向けた検討を加速してまいります。

■デジタル広告が直面する主要課題

・アドフラウドの蔓延

デジタル広告における最も喫緊の課題の一つは、アドフラウド、すなわち広告費の不正詐取です。悪意のあるクローラーやボットによる無効なトラフィック、インプレッションなどの要因によって、広告費が不正に詐取されている可能性があります。国内のアドフラウドは平均で5.12%に達し、最大で51.8%ものリスクを抱えるケースも存在すると言われています。(※2) さらに、生成AIの発展により、その手口は一層巧妙化する可能性があり、広告効果の維持と信頼性の確保は業界全体の急務となっています 。総務省も2025年春に、この領域に関する注意喚起を各社に促すガイダンスの素案を公表するなど、問題の深刻さが浮き彫りになっています。

(※2 出典: SPIDER AF アドフラウド調査レポート|2025年通年版より)

・プライバシー規制とターゲティング精度の低下

GDPRやCCPAといった国際的なプライバシー規制、および国内の改正個人情報保護法の施行により、サードパーティCookieの利用が制限されるフェーズに入っています。これにより、ターゲティング精度は最大40%低下すると予測されています。(※3)広告主は、ユーザーのプライバシーを尊重しながら、いかに広告の関連性を維持し、効果を測定するかという喫緊の課題に直面しています。

(※3 出典: cropink 40+ Targeted Advertising Statistics: Data-Driven Marketing Insights [2025]より)

・ユーザーのエンゲージメント低下

今日のデジタル広告は、自身の興味とずれた広告表示や、個人情報が取得されることへの警戒感などにより、ユーザーの不満も高まっています。これにより、ユーザーは広告を敬遠し、結果として広告への関心やクリックをはじめとしたエンゲージメントの低下にもつながる可能性があります。こうした状況は、広告効果の低下を招き、結果として、広告主が支払う費用に見合う効果が得られない事態を生み出すことにもつながりかねません。

「Human-Verified Ad Network」実証実験詳細

博報堂、LG電子、Tools for Humanityは、これらのデジタル広告が抱える複合的な課題に対し、新たな解決策を提示すべく、「Human-Verified Ad Network」の実証実験を実施しました。

コンセプトと機能

本ネットワークの根幹は、World IDとWeb3技術を活用し、認証された人間のみ広告を配信し、広告の表示履歴を改ざん不可能な方法で記録することにあります。これにより、真に人間に表示された広告に限り広告費が請求される仕組みを確立します。

・World IDによる人間認証

World IDは、個人情報を提供することなく、オンライン上で人間であることを証明するための匿名のデジタルパスポートです。高性能カメラ「Orb(オーブ)」によって作成・認証されたWorld IDを活用することで、広告はボットではなく、人間にのみ配信されます。

・Watch to Earn

ユーザーのエンゲージメントを高めるため、「Watch to Earn」機能を実装しました。これは、広告のクリック等の特定のアクションに対し、インセンティブ(ポイント)を獲得できる仕組みです。このインセンティブも人間にのみ付与され、その履歴はブロックチェーン上に記録されるため、インセンティブ付与に伴う費用が広告主に不正に請求されることはありません。

・ブロックチェーンによる透明性と不変性

Web3技術を基盤とするブロックチェーンは、広告の表示履歴やインセンティブ付与の記録を改ざん不可能な形で保存します。これにより、広告主は自身の費用がどのように使われたかを明確に把握でき、広告配信の透明性が飛躍的に向上します。

・自己主権型データ

ユーザーは自身の個人情報を自身で制御できます。本実証実験では、性別、生年月日、居住地域などの基本情報の提供は任意としました。これにより、ユーザーのプライバシーを尊重しつつ、広告主は適切なマーケティングアクションを実行することが可能となります。

実証実験の期間と参加者

本実証実験は、国内のユーザーを対象に、2025年7月7日から同年8月31日に行われました。広告主として10の企業・ブランドが参加し、3,500人超のユーザーが参加し、参加広告主の業界は、食品、化粧品、家電、旅行、教育など、多岐にわたりました。

ユーザー体験フロー(ミニアプリ「boba」の活用)

本実証実験では、World IDの認証機能とポイントインセンティブ機能を統合した独自のミニアプリ「boba」が活用されました。ユーザーは以下のフローで広告を体験しました。

  1. 「World App」をインストールし、最寄りのOrbを探す: ユーザーは、World IDを取得できるアプリ「World App」をスマートフォン等にインストールします。

  2. OrbでWorld IDを認証

  3. ミニアプリ「boba」の利用開始: 「World App」内のミニアプリ「boba」を起動し、World IDを連携。アカウントを新規登録します。

  4. 広告体験+情報提供: 「boba」上で表示される広告に対して、「興味を持った広告をクリック」「任意の基本情報(年齢・居住地域など)を提供」といった行動をとることでポイントを獲得できます。

  5. ポイントの交換・インセンティブの受け取り: 獲得したポイントは、各種eGiftと交換できます。

実証実験による成果

・広告効果の大きな改善とアドフラウドの抑制

「Human-Verified Ad Network」は、従来のWeb2広告と比較して、その効果において高い優位性を示しました。本ネットワークを用いて「アプリ内で人間にのみ(インセンティブを付与しない)」広告を配信した結果、無条件下での「主要なWeb2の広告メニュー」への広告配信と比較して、CTRが約50%、直帰率(※1)は約15ポイント改善しました。

この結果は、ボットや無効なトラフィックを排除し、真に人間であるユーザーにのみ広告を届けるという本ネットワークの価値が、アドフラウドによる無駄な広告費を削減し、広告主のROI(投資収益率)を最大化する可能性を示唆しています。
 また、定性的な評価としては、実証実験の参加広告主およびユーザーから、透明性の高さ、エンゲージメントの向上、そして全体的な広告体験に対する肯定的なフィードバックが寄せられました。

・インセンティブによるエンゲージメント向上
「Watch to Earn」機能は、ユーザーの広告への積極的な関与を促す上で有効であることが示されました。インセンティブの提供により、ユーザーは受動的な広告視聴から能動的なエンゲージメントへと行動を変え、広告のCTRの向上に貢献します。広告クリックに対して「(boba内で人間にのみ) インセンティブを付与する」場合と「(boba内で人間にのみ) インセンティブを付与しない」場合を比較すると、CTRが約7倍に向上しました。これは、デジタル広告が抱えるユーザーの無関心という課題に対する具体的な解決策となります。

LG電子について>

LG電子は今回の実証実験に、ブロックチェーン研究室が独自開発したWeb3基盤広告ネットワーク(Web3 Ad Network)を提供しました。この技術は広告主、メディア会社、そして視聴者を一つに繋げることにより視聴者であるオーディエンス自ら情報を提供しつつ、広告業界には正当な収益分配が行われる環境を作ります。広告主としては高精度のターゲティングやリアルタイム成果確認が可能となり、オーディエンスも自身のデータを管理出来るようになるため、より安心して参加することができます。

LG電子のブロックチェーン研究室はWeb3技術を用いて家電生態系の革新と新しい事業を発掘する組織であり、LG電子内のブロックチェーン技術開発を主導し、様々なプロジェクトを推進してきました。現在はWeb3 Ad Networkを核心プロジェクトとして推進しています。 本社は韓国ソウルに所在。

<Tools for Humanityについて>

Tools for Humanity(TFH)は、AI時代において「人間のためのテクノロジーを構築する」グローバル・テクノロジー企業です。サム・アルトマンとアレックス・ブラニアによって設立され、「World Network」の初期開発を主導し、「World App」の運営も行っています。Tools for Humanity Corporationは、カリフォルニア州サンフランシスコとドイツのミュンヘンに本社を置いています。詳細については、toolsforhumanity.comをご覧ください。

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会社概要

株式会社博報堂

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URL
http://www.hakuhodo.co.jp
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区赤坂5-3-1 赤坂Bizタワー
電話番号
03-6441-8111
代表者名
水島 正幸
上場
東証1部
資本金
358億4800万円
設立
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