「整備士がいない」車整備で淘汰急増、24年度は445件が消滅 整備業者の2割が「赤字」 部品高騰も重荷
「自動車整備業者」の倒産・休廃業解散動向(2024年度)

株式会社帝国データバンクは「自動車整備業」における倒産・休廃業解散の発生状況について調査・分析を行った。
SUMMARY
2024年度の自動車整備事業者の休廃業・解散件数は382件で、過去最多を更新し、倒産を含めると計445件が市場から消滅した。人件費やパーツ仕入価格の高騰、少子高齢化によるユーザー減少、整備士不足に加え、保険修理の単価低迷といった悪条件も重なった。大手自動車メーカーで整備士の育成や、損保会社との連携など業界の改善に向けた取り組みが進むが、整備ニーズの変化に対応できない事業者の淘汰は続く可能性がある。
集計期間:2000年4月1日~2025年3月31日まで
集計対象:倒産は負債1000万円以上、法的整理によるもの。休廃業・解散とは、倒産(法的整理)を除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態を確認(休廃業)、もしくは商業登記等で解散(ただし「みなし解散」を除く)を確認した企業
自動車整備業者の倒産・廃業、累計445件発生 過去最多に
自動車整備を担う事業者の市場撤退が加速している。2024年度(2024年4月〜2025年3月)に発生した「自動車整備」事業者の休廃業・解散(廃業)は382件となり、過去最多を更新した。前年度(334件)から約15%増加したほか、倒産(負債1000万円以上、法的整理)に至った63件を含めると、過去最多となる445件が自動車整備の現場から消滅した。

自動車整備業界では近年、パーツ仕入価格や人件費の高騰、少子高齢化による自動車ユーザー減少、整備士不足による受注制限など、厳しい経営環境に直面する事例が増加している。2024年度の損益状況では、26.2%が赤字となり、「減益」を含めた「業績悪化」企業の割合は52.9%と半数を超えた。特に、整備士不足が業績に深刻な影響を与えており、若年層の整備士志望者減少と高齢化が進んだことで人手不足が慢性化し、納期遅延や受注台数の制限を余儀なくされるケースが目立った。また、電気自動車(BEV)やハイブリッド車(HV)など電動車、自動ブレーキなどADAS(先進運転支援システム)搭載車の整備ニーズが増加している一方で、街の整備工場ではこうした電装系・センサー系整備への対応力不足から受け入れができず、メーカー正規ディーラーへの顧客流出につながるといったケースも少なくない。
さらに、近年は自動車保険を使用した保険修理の単価抑制が、自動車整備業者の収益力の低下を招く要因の一つとなった。整備士の確保に伴う人件費の上昇や、鉄鋼や樹脂など原材料価格の高騰で整備部品の値上がりが進むなど整備コストは上昇が続いている。他方で、保険修理を発注する保険会社のコスト削減も求められており、コスト上昇分の価格転嫁が思うように進んでいないことも、結果的に売り上げを一定水準確保していながら利益を計上できない事業者が増加した要因となった。

足元では、大手自動車メーカーが整備士教育で連携を始めたほか、全国の自動車車体整備事業者で構成される日車協連と大手損保の東京海上日動火災保険が整備代金の単価引き上げに合意するなど、整備事業者の経営環境改善に向けた取り組みが加速している。ただ、整備士の不足や新車の販売不振などで顧客基盤が先細りするリスクが残るほか、整備ニーズの質的変化にも対応が必要となるなど課題も多く、こうしたニーズに対応できない自動車整備業者で淘汰がさらに進む可能性もある。
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