ヒューマンタッチ総研が独自分析 建設業主要各社の2021年3月期第1四半期決算から見る市場動向
【本件のポイント】 ・6業種別主要企業各10社の2021年3月期第1四半期決算から見る建設市場動向をまとめた ・総合工事業と管工事業で厳しい決算となった一方、土木工事業においては比較的好調な決算となった ・建設業界では新型コロナウイルス感染症拡大の影響は限定的だが、中長期的には予断を許さない状況 |
<総合工事業(ゼネコン)>
■8社が減収、うち6社は減収減益の厳しい決算となる
売上高は8社が前年同期を下回り、このうち6社が純利益ベースで減収減益となっています(図表①)。10社合計を見ると、売上高は前年同期比11.8%減、営業利益が同19.7%減、経常利益が同18.5%減、純利益が同29.8%減となっており、高水準であった前年同期との比較では非常に厳しい結果となっています。
今期の業績は、東京オリンピック・パラリンピック関連需要が一段落して需要の端境期になることに加えて、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、8社が減収・純減益と予想しており、減少率も他の5業種と比べて大きくなっていることから、非常に厳しい経営環境にあると言えそうです(図表②)。
【図表① 総合工事業主要10社の2020年3月期第1四半期決算(連結)の実績】
【図表② 総合工事業主要10社の2021年3月期(連結)の業績予想】
<土木工事業>
■6社が増収、10社合計でも増収増益となり好調な決算
売上高は6社が前年同期を上回り、このうち4社は増収・純増益となっています(図表③)。10社合計を見ると、売上高は前年同期比2.8%増、営業利益が同127.6%増、経常利益が同106.7%増、純利益が同7.8%増となっており、前年同期を上回る高い水準となりました。
今期の業績予想については、公共投資による土木工事は堅調に推移すると見込まれることから5社が増収と予想しており、工事量の面では安定した経営環境にあると思われます(図表④)。ただし、純利益については9社が前年割れと予想しており、利益面では厳しい状況となりそうです。
【図表③ 土木工事業主要10社の2020年3月期第1四半期決算(連結)の実績】
【図表④ 土木工事業主要10社の2021年3月期(連結)の業績予想】
<電気設備工事業>
■6社が減収、うち5社が減収減益ながら、10社合計ではわずかに増収
売上高は6社が前年同期を下回り、このうち5社が減収・純減益となっています(図表⑤)。10社合計を見ると、売上高は前年同期比0.2%増、営業利益が同2.3%減、経常利益が同2.3%増、純利益が同7.6%減となりました。
今期の業績予想は、純利益ベースで6社が減収減益、2社が増収増益、2社が未定となっています(図表⑥)。売上高の減少率が二桁のマイナスになっているのは1社だけですが、純利益の減少率はそれより大きく、厳しい経営環境にあると見込まれます。
【図表⑤ 電気設備工事業主要10社の2020年3月期第1四半期決算(連結)の実績】
【図表⑥ 電気設備工事業主要10社の2021年3月期(連結)の業績予想】
<管工事業>
■7社が減収、うち6社が減収減益、10社合計でも大幅な減収減益の厳しい決算
売上高は7社が前年同期を下回り、このうち6社が減収・純減益となっています(図表⑦)。10社合計を見ると、売上高は前年同期比13.4%減、営業利益が同54.9%減、経常利益が同47.3%減、純利益が同33.7%減となっており、高水準であった前年同期の業績との比較では非常に厳しい結果となっています。
今期の業績についても、予想を出している9社がすべて減収・純減益の予想となっており、総合工事業と同じく非常に厳しい経営環境にあると思われます(図表⑧)。
【図表⑦ 管工事業主要10社の2020年3月期第1四半期決算(連結)の実績】
【図表⑧ 管工事業主要10社の2021年3月期(連結)の業績予想】
<住宅・不動産業>
■6社が減収、うち4社が減収減益、10社合計でも減収減益
売上高は6社が前年同期を下回り、このうち4社が減収・純減益となっています(図表⑨)。10社合計の売上高は前年同期比5.22%減、営業利益は同12.1%減、経常利益は同14.0%減、純利益は同18.3%減となっており、厳しい決算となりました。
2021年3月期の業績予想を発表した6社はすべて減収・純減益の予想になっています(図表⑩)。特に純利益については減少率が大きく、利益面では特に厳しい経営環境になると思われます。
【図表⑨ 住宅・不動産業主要10社の2020年3月期第1四半期決算(連結)の実績】
【図表⑩ 住宅・不動産業主要10社の2021年3月期(連結)の業績予想】
<プラント・エンジニアリング業>
■7社が減収、うち4社が減収減益、通期は利益面で厳しい予想
売上高は7社が前年同期を下回り、このうち4社が減収・純減益となっています(図表⑪)。10社合計の売上高は前年同期比8.9%減、営業利益は同26.1%減、経常利益は同14.8%減、純利益は同21.6%減となっており、厳しい決算となっています。
今期については、5社が増収と予想してはいますが、純利益については7社が減益と予想しており、利益面では厳しい環境にあると予想されています。
【図表⑪ プラント・エンジニアリング業主要10社の2020年3月期第1四半期決算(連結)の実績】
【図表⑫ プラント・エンジニアリング主要10社の2021年3月期(連結)の業績予想】
■ヒューマンタッチ総研所長・髙本和幸(ヒューマンタッチ代表取締役)のコメント
2021年3月期第1四半期の決算を見ると、総合工事業と管工事業で非常に厳しい結果となりましたが、土木工事業においては比較的好調な決算となっているところが注目されます。
総合工事業や管工事業では、東京オリンピック・パラリンピック関連の特需も終わり需要の端境期を迎えていることから、今期の業績予想も大幅な減収減益とする企業が多くなっており、厳しい経営環境が続くと思われます。
一方、土木工事業では売上の主力が公共工事であり、社会インフラの老朽化や多発する自然災害への対策が必須なことを背景に政府建設投資は堅調に推移すると予想されることから、経営環境は比較的良好に推移するのではないかと考えられます。
2020年6月の手持ち工事高は30兆7,732億円(前年同月比2.5%増)と高水準を維持しています。新型コロナウイルス感染症拡大の影響も現状では限定的であり、建設業全体としては豊富な手持ち工事高を背景に短期的にはそれほど大きく落ち込まないのではないかと思われます。
ただし、今後、新型コロナウイルス感染症拡大が長期化して、様々な産業の建設投資が低迷することや、財政状況の逼迫から政府の建設投資が削減される可能性もあり、中長期的には予断を許さない状況だと言えます。
ヒューマンタッチ株式会社 会社概要 ------------------------------
●代表者:代表取締役 髙本 和幸
●所在地:東京都新宿区西新宿7-5-25 西新宿プライムスクエア1F
●資本金:1億円
●コーポレートサイトURL:https://human-touch.jp/
●ヒューマンタッチ総研サイトURL:https://kensetsutenshokunavi.jp/souken/
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