「鏡」「心臓」「虹」「兎」に込められた意味とは？ 美術鑑賞がもっと面白くなる 『暗号（アトリビュート）で読み解く名画』

株式会社世界文化社は、画家たちが絵画にちりばめた寓意を読み解くための暗号（アトリビュート）を解説した書籍『暗号（アトリビュート）で読み解く名画』を3月18日（木）に刊行します。

＜アトリビュートとは？＞
西洋美術において伝説上・歴史上の人物または神話上の神と関連付けられた物。その物の持ち主を特定する役割を果たす、持物（もちもの・じぶつ）のこと。

画家たちが絵画にちりばめた寓意を読みとると、美術鑑賞がグッと楽しくなる！
17世紀には、西洋においても図像を整理して解説した本が出版されるほど、本来、誰でも知っているはずのアトリビュートの理解と勉強が必要となっていました。これでは文化と歴史が違う日本の鑑賞者にとっては、像やモチーフが明瞭に表現されている写実的な西洋美術が、逆に何を表現しているのかわかりにくいのも無理はありません。本書では、西洋美術をより深く理解するために、その重要な決まり事であるアトリビュートのなかから主要なものを選び出して紹介し、その来歴や寓意的な意味を解説しています。アトリビュートや寓意を知ることで、もうひとつ絵画を「読む」という楽しみ方が加わります。西洋美術を楽しむために、必携の1冊です。
 

• 「書物」は、学識と知性を象徴する　博学の人々のアトリビュート

書物は豊富な知識と知恵、博学を示すモチーフです。ロココ期の画家ブーシェの作品『ポンパドゥール侯爵夫人』で、書物が並んだ部屋で夫人が本を手にしているのは、百科全書の編纂に協力した彼女の高い知性を強調するためです。宗教画においては、「受胎告知」の場面によく描かれます。これは「受胎告知」の際、聖母マリアが旧約聖書を読んでいたといわれるため。この伝説にちなんで、書物が彼女のアトリビュートとなりました。また、本は律法（りっぽう）、神学の象徴ともみなされ、神学者や使徒（しと）などの多くが本を手にした姿で描かれます。
 

• 「鹿」は、優美な姿から神聖視され、神々の持物、誠実の象徴と大活躍

鹿はその優美な姿形から、世界各地で神の使いとして神聖視されてきました。 鹿は誠実な愛の象徴とされたほか、すばしこく敏感なことから、聴覚や賢明の象徴とみなされるなど、好ましいイメージで描かれています。神話画では月と狩猟の女神アルテミス（ディアナ）のアトリビュートとして有名です。これは狩人のアクタイオンが ディアナの水浴を見たため鹿に変えられ、 自分の猟犬に八つ裂きにされた逸話に由来します。 キリスト教絵画では、鹿の角の間に光る十字架を見てキリスト教に改宗したという聖エウスタキウスの持物にもなりました。

そのほか、
● 猫は悪魔の化身、兎は肉欲の象徴？
● 鍵を持つ人物は初代ローマ教皇！
● 空にかかる虹は神と人類をつなぐ契約の証！
● 燃える心臓は篤き信仰の証！
● 蠅 醜い生き物の象徴ながら、なぜか大人気の虫
● 釘を打たれた車輪は、聖女カタリナの目印！　　など。


監修者／岡部昌幸（おかべ・まさゆき）
1957年横浜生まれ。早稲田大学第一文学部美術史専攻、同大学院で学ぶ。現在、帝京大学文学部史学科、大学院文学研究科日本史・文化財学専攻教授。群馬県立近代美術館館長。西洋と日本の近世近代美術を専攻。リヴィジョニズムとグローバル・アート・ヒストリーの視点で、特に世紀転換期のアメリカ美術、アール・ヌーヴォー、アール・デコなど装飾美術、ジャポニスム、写真史などを研究。主著に『JAPAN ロバート・ブルーム画集』(芸術新聞社)、『レンブラントとフェルメール』(新人物往来社)、『すぐわかる作家別西洋絵画の見かた』『すぐわかる作家別水彩画の見かた』(東京美術)、『近代美術の都モスクワ』(東洋書店)、『迷宮の美術史　名画贋作』『盗まれたダ・ヴィンチ』など多数。訳書に『エドウィン・アーノルド著　ヤポニカ』(雄松堂出版)。「ジャポニスムのテーブルウェア」展、「サラ・ベルナールの世界」展等100 以上の展覧会の企画監修を行う。
 

＜刊行概要＞
『暗号（アトリビュート）で読み解く名画』
■監修：岡田昌幸
■発売日：2021年3月18日
■定価：1,760円（税込）
■発行：株式会社世界文化社
https://www.amazon.co.jp/dp/4418212019/
※一部書店により発売日が異なります。

＜目次＞
INTRODUCTION　女神像は誰か？－アトリビュートは美術を読み解く手がかり－
1章　名画の「小道具」　書物／鍵／鎌／コンパス／金床と金槌／車輪／財布／硬貨／旗／大工道具　他
2章　名画の「動物」　鹿／兎／牛／豚／羊／犬／猫／猿／馬／ライオン／白貂／山羊　他
3章　名画の「自然」　虹／三日月／雷／雨／アイリスとユリ／バラ／リンゴ／葡萄　　他