西部・中部アフリカ地域でHIV感染の子ども54万人、治療受けるのはわずか約2割【共同プレスリリース】
ユニセフ/UNAIDS報告書
【2017年12月5日 アビジャン(コートジボワール)/ダカール(セネガル)/ニューヨーク/ジュネーブ 発】
本日ユニセフ(国連児童基金)とUNAIDS(国連合同エイズ計画)が共同で発表した報告書「対応を急げ:西部・中部アフリカ地域のエイズを終わらせるために(原題:Step Up the Pace: Towards an AIDS-free generation in West and Central Africa)」は、HIV/エイズの流行から40年以上経過した今でも、西部・中部アフリカ地域でHIVに感染した子どもの5人に4人は命を守る抗レトロウイルス薬治療を受けておらず、またエイズ関連疾患で死亡する15歳から19歳の若者が増えていることを指摘しています。
報告書は、HIV/エイズに関するいくつかの側面では進展があったことを認めながらも、西部・中部アフリカ地域では、子どもと若者のHIV/エイズの予防、治療、およびケアに関するプログラムのほぼすべての措置に遅れが生じていることを示しています。この地域では、2016年に、新たに6万人の子どもがHIVに感染したと推定されます。
「これほど多くの子どもや若者が、検査を受けていないために、必要な治療を受けられないというのは、悲劇です」とユニセフ西部・中部アフリカ地域 事務所代表のマリー・ピエール・ポワリエが述べました。「子どもたちの早期診断を増やし、HIVの治療とケアへのアクセスを改善するために、新しい技術をより活用する必要があります。例えば、保健サービスを提供する場所での検査診断技術は、検査を子どもたちにより身近なものにし、自己検査を若者にとってより安心できる選択とすることが可能です」
この地域でHIVに感染している子どものうち、命を守る抗レトロウイルス薬治療を受ける割合は、世界で最も低くなっています。その理由は、乳児に対するHIV感染の早期検査をおこなう能力が限られている国が多いことがあげられます。子どもがHIVに感染しているかどうかを知らなければ、家族が、子どもがエイズ関連疾患で命を落とす悲劇を防ぐために治療を受けさせる可能性はほとんどないのです。
若者の置かれた状況はさらに悪く、この地域の15歳から19歳の年齢層で新たなHIV感染者数は0歳から14歳の子どもの感染者数を上回ります。これらの新たな感染のほとんどは、無防備の性的接触を通じて女子が罹ります。さらに、報告書が懸念事項としているのは、西部・中部アフリカでは、15歳から19歳の若者のエイズ関連疾患による年間死亡数が35%増加したことです。2010年から2016年の間に、エイズ関連疾患による年間死亡数が増加したのは、この年齢層だけです。
今後数十年にわたり、この地域の若者の人口が著しく増加することが予測される中、特にコンゴ民主共和国およびナイジェリアなどの国において、エイズに対する予防と治療の両方の対応を劇的に改善しなければ、HIVに感染しエイズ関連疾患により死亡する子どもや若者の数は高いままであり続けるでしょう。
報告書は、西部・中部アフリカ地域の24カ国には、世界のHIVと共に生きる0歳から14歳の子どもの25%が暮らしていることを指摘しています。
「この地域の指導者たちは、2018年末までに地域内で治療を受ける子どもを含めたエイズ感染者の数を3倍にすることを目標とした、『巻き返し計画(Catch-Up plan)』を採択しました。現在の課題は、この計画の実施を加速させることです」と国連エイズ合同計画(UNAIDS)の事務局次長Luiz Louresは述べました。「各国は直ちに、HIVの早期新生児診断のためのより効果的な戦略を打ち立て、子どもの治療へのアクセスの格差を減らすことを始めなければなりません」
報告書は、各国がHIV/エイズの拡大の阻止に向けた進展を加速するための主要な戦略を提案しています。提案には以下のことが含まれます。
- それぞれの国やコミュニティの疫学的および社会的背景の特徴に重点を置いた、それぞれに適したHIV/エイズ対応。
- HIV/エイズのケアを、保健、教育、および保護を含む主要な社会サービスに統合させる。
- HIV/エイズへの対応を、偏見を減らし、予防・治療へのアクセスを改善することにより適した、家族を含めた地域コミュニティが主体的に、そして地方自治管理のもとで行う。
- HIV/エイズのケア現場での診断、自己検査、感染前予防などの新たな診断・生体医学アプローチを含めた、支援の規模拡大の障壁を取り除くためのイノベーションに投資する。
ユニセフは先週、現在の進捗の速度では、子どもたちのエイズを終わらせるために立ち上げられた枠組み「スーパー・ファスト・トラック」で設定した2020年までの目標は、実現できないと発表しました。
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■報告書が示す主なデータ
- HIVの母子感染予防の普及率は、2010年から2016年の間に21%から49%と2.5倍に増加。現在、ベナン、ブルキナファソ、カーボヴェルデなどの国々は、HIVに感染している妊婦80%以上にこれらのケアを提供。
- 西部・中部アフリカ地域における、小児抗レトロウイルス薬治療の普及率は世界で最も低く、2016年にHIV感染している0歳から14歳の子ども54万人のうち抗レトロウイルス薬治療を受けたのは21%のみ。世界全体の普及率は43%。
- 今日、西部・中部アフリカ地域は、世界でエイズ関連疾患で死亡する子どもの37%を抱える。2016年に、西部・中部アフリカ地域で、エイズ関連疾患で死亡した子どもの数は約4万3,000人、2010年の死亡数から31%減少。
- 2016年に新たにHIVに感染した15歳から19歳の若者の数6万2,000人。2010年から変化なし。
- 若い女性が最も影響を受け続けている。西部・中部アフリカ地域でHIVに感染している10歳から19歳の若者の約5人に3人が女性。
■国連合同エイズ計画 The Joint United Nations Programme on HIV/AIDS (UNAIDS)について
国連合同エイズ計画は、HIVの新たな感染ゼロ、差別ゼロ、エイズ関連死ゼロの共通のビジョンの達成のために立ち上げられた。UNAIDSは国連の11の機関、国連難民高等弁務官(UNHCR)、国連児童基金(ユニセフ)、世界食糧計画(WFP)、国連開発計画(UNDP)、国連人口基金(UNFPA)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN-Women)、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、世界保健機関(WHO)、世界銀行(World Bank)が、持続可能な開発目標(SDGs)の一環としてエイズの流行を2030年までに終わらせるために、世界各国のパートナーと緊密に連携する。( www.unaids.org )
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■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する34の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国34の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 (www.unicef.or.jp)
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