熱中症対策の義務化、企業の55.2%が認知 建設業で認知度高く 9割超が対策を実施、クールビズやサーキュレーターの活用など「予防策」が目立つ
熱中症対策に関する企業の実態アンケート

株式会社帝国データバンクは、全国1,568社を対象に、熱中症に関する認知や対策についてアンケート調査を実施した。
SUMMARY
「熱中症対策の義務化」を認知している企業の割合は55.2%となった。なかでも、『建設』は約8割と、全体を大幅に上回っている。何らかの熱中症対策を行っている、または検討している企業は95.5%となった。対策を行っている企業のうち、「クールビズの実践」が70.5%でトップ、「扇風機やサーキュレーターの活用」が6割台で続いた。なお、「熱中症警戒アラート」という言葉を認知している企業の割合は79.9%、「WBGT(暑さ指数)」は54.8%だった。
※調査期間:2025年5月9日~5月15日(インターネット調査)
有効回答企業:1,568社
企業の半数超が「熱中症対策の義務化」を認知、特に『建設』で認知度高く
2025年6月1日より、労働安全衛生規則改正で事業者に対して熱中症対策が義務付けられる[1]など、企業における熱中症対策の強化が求められている。
そこで、「熱中症対策の義務化」について尋ねたところ、「詳しく知っている」と回答した企業は15.6%、「なんとなく知っている」は39.5%だった。合計すると、今回の義務化を『認知している』企業は55.2%となった。他方で、「聞いたことがある」は18.6%、「知らない」は26.3%だった。

『認知している』企業の割合を業界別にみると、作業環境上、義務化の対象となることが多い『建設』は79.3%と全体(55.2%)を20ポイント以上上回る結果となった。
なお、熱中症に関連する言葉の認知について尋ねたところ、「熱中症警戒アラート[2]」という言葉を「詳しく知っている」企業は21.4%、「なんとなく知っている」は58.5%だった。合計すると、『認知している』企業は79.9%と、約8割にのぼった。他方で、「聞いたことがある」は14.6%、「知らない」は5.5%だった。

また、「WBGT(暑さ指数)[3]」という言葉を『認知している』企業は54.8%となった一方で、「聞いたことがある」は24.2%、「知らない」は20.9%であり、「熱中症警戒アラート」の発表基準にもなっている「WBGT」の認知度が比較的低い結果となった。
企業の95.5%が熱中症対策を実施、クールビズなど「予防対策」が目立つ
熱中症対策について尋ねたところ、何らかの対策を行っている、または検討している企業は95.5%と9割を超えた。

対策を行っている企業のうち、「クールビズの実践(制服や作業服の変更などを含む)」が70.5%でトップとなった(複数回答、以下同)。次いで「扇風機やサーキュレーターの活用」(60.7%)が6割台、「水分・塩分補給品の支給」(55.7%)が5割超となった。「ファン付きウェアやサングラスの活用」(36.9%)および「空調設定の見直し」(30.4%)が3割台で続き、クールビズや設備・備品の充実、暑さ対策グッズの支給による「熱中症予防」に関連する対策が上位に並ぶ結果となった。
一方で、「臨時休暇の設定」(2.9%)や「営業(就業)時間の短縮」(3.9%)、「リモートワークの強化」(6.3%)など、稼働時間・柔軟な働き方に関する対策は低水準にとどまった。
また、6月1日からの義務化の措置に該当する対策をみると、「熱中症予防・重篤化防止の学習と周知」は23.1%で2割台となり、「熱中症に関する報告体制の構築」(15.2%)および「搬送先など緊急連絡先の周知」(13.0%)は1割台、「職場巡視やバディ制、ウェアラブル機器などによる熱中症の把握」(4.8%)は1ケタ台にとどまった。「熱中症の把握・対処」に関連する対策の実施割合が低い傾向となっている。なかでも、『建設』では「熱中症予防・重篤化防止の学習と周知」が49.3%(全体比+26.2ポイント)、「熱中症に関する報告体制の構築」が32.6%(同+17.4ポイント)となるなど、全体より高くなっているものの、グッズの支給など他の対策と比べると取り組み状況は十分とは言えない。企業には自社における作業環境を確認し、従業員の熱中症リスクがある場合はこれらの対応を進めることが求められる。
本調査の結果、6月1日から施行される「熱中症対策の義務化」を認知している企業は5割を上回った。なかでも作業環境上、義務化の対象となることが多い『建設』は約8割と、全体を大幅に上回る結果となった。なお、「熱中症警戒アラート」という言葉を認知している企業は8割、「WBGT(暑さ指数)」は5割超だった。
また、何らかの熱中症対策を実施・検討している企業は9割超にのぼった。具体的な対策においてはクールビズの実践や設備・備品の充実、暑さ対策グッズの支給による熱中症予防対策が上位に並ぶ結果となった。一方で、「熱中症に関する報告体制の構築」など、対象企業に義務付けられた「熱中症の把握・対処」関連対策の実施割合は低い傾向となっている。
今回の調査では、「従前より熱中症対策について就業環境整備に一定の配慮をしてきたが、年々猛暑が厳しさを増すなか、現行の対策で十分か再考の余地がある」(機械製造)といったコメントにあるように、近年の気温の上昇を受け、今後の熱中症対策の強化を課題に考える企業は少なくない。また、「エアコンの新規導入を考えているが、設備投資額が大きいため、補助金を活用できないか情報収集している」(メンテナンス・警備・検査)など、対策を強化したいものの、費用面がネックになっている様子もうかがえた。
2025年の夏の気温も平年より高いことが見込まれており、熱中症のリスクが高まっている。企業には補助金など公的支援を活用しながら、自社に合った熱中症対策を強化することが求められよう。
<参考>企業からの声
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現場作業員へウェアラブル機器を配布するほか、真夏日手当の支給で熱中症対策に充ててもらっている / 建設(左官工事)
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現場設置の自動販売機を外気温25度以上の場合、1日に2回に分けて無償配布している / 建設(大工工事)
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現場では元請けに時差出勤や休憩時間の延長をお願いしている / 建設(鉄筋工事)
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6月から9月まで熱中症対策手当を支給する / 建設(一般電気工事)
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デスクワーク中心だが、外出の際の気温差について注意喚起すべきかが今後の検討課題 / 不動産(貸事務所)
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飲料や塩飴、ファン付きウェアの支給、休憩時間の追加、クーラーの増設などに取り組んでいる / 鉄鋼・非鉄・鉱業
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屋外作業なので対策にも限界があり、始業時間を早めるしかないと考えている / 建材・家具、窯業・土石製品卸売
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6月1日より熱中症対策が義務付けられることを社内に周知徹底した / 機械・器具卸売
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7~9月の外出をともなう営業活動を自粛している。昨年はWEB打ち合わせで何とかなっていた / その他の卸売
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義務化になったことは知らなかったが、今からできることを行っていきたいと思う / 繊維・繊維製品・服飾品小売
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タクシー業であるが、通勤時や休憩時間に熱中症になる可能性もあるため、出勤時間の変更や勤務時間の時短など、自分の体調に合わせた対策をしてもらっている / 運輸・倉庫
(一般乗用旅客自動車運送) -
営業時間を1時間早くする / 娯楽サービス
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熱中症対策マニュアルを作成し、高温・多湿の現場では定期的な休憩と水分補給を取るように指示。熱中症になった場合は担当者より報告し、近隣の病院を受診することを規則化している / メンテナンス・警備・検査
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現場へ出向いての外作業がメインのため、ここ数年、倒れるまではいかないものの毎年何名かは熱中症で体調を崩している。会社も重篤事項と考えている / 医療・福祉・保健衛生
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屋外作業者に対し、エアコンを付けた2~3坪ハウスを設置した / リース・賃貸
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リモートワークの強化を積極的に推進することでリスクを抑える方向 / 広告関連
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数年前よりノーネクタイを社内標準とし、2025年度より社員制服を廃止した / 教育サービス
[1] 熱中症の重篤化を防止するため、「WBGT28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施」が見込まれる作業を対象に、体制整備・手順作成・関係者への周知が、事業者に義務付けられる
出所:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」(2025年5月アクセス)https://www.mhlw.go.jp/content/001476821.pdf
[2] 「熱中症警戒アラート」は熱中症の危険性に対する「気づき」を促すものとして、府県予報区等内において、いずれかの暑さ指数情報提供地点における、翌日・当日の日最高暑さ指数(WBGT)が33(予測値)に達する場合に発表される情報
[3] 「WBGT(暑さ指数)」は人間の熱バランスに影響の大きい「気温」「湿度」「輻射熱」を取り入れた温度の指標
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