【CCBT】2026年度アーティスト・フェロー5組を決定 !「シビック・ファッション」をテーマに都市と⾝体の新たな関係を探る
5年⽬を迎えるアート・インキュベーション・プログラム。2026年度のアーティスト・フェローは、 加藤明洋、⼩宮りさ⿇吏奈、05(牧原依⾥+和⽥夏実)、⾼橋鴻介、楊いくみ。

シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT](以下、CCBT)では、CCBTのパートナーとして活動する2026年度アーティスト・フェローの公募・選考を⾏い、5組のフェローを選出しました。
年度を通じて展開する「アート・インキュベーション・プログラム」は、国内最⼤規模のアーティスト・フェロー制度で、クリエイターに新たな創作活動の機会を提供し、そのプロセスを市⺠(シビック)に開放することで、都市をより良く変える表現・探求・アクションの創造を⽬指すものです。
2026年度は「シビック・ファッション」をテーマに、社会を映し出す記号でありながら、個の表現可能性を限りなく有するファッションの性質を⼿がかりに、市⺠の⾃発的なムーブメントによる“まだない何か” を⼀時的に形づくる企画・表現活動を募集しました(応募総数127件)。
AI・ロボット・⼈間が関与する⼈⼯物⽣態系を構想するプロジェクト、⾔葉と環境の両側⾯から⾃⼰の定義を問い直すリサーチと実践、⾝体動作や視覚表現を起点とした新たなコミュニケーションの設計、多元的な眼差しを都市に実装する試み、東洋絵画の遠近法を⼿がかりとした都市型パフォーマンス・インスタレーションの創作、それぞれ異なるアプローチから「シビック・ファッション」を考察する5組の提案が採択されました。
2026年度アーティスト・フェローおよび提案プロジェクト (タイトルは2026年6⽉時点)
加藤明洋 「ノラロボ」
⼩宮りさ⿇吏奈 「Skinsphere」
05(牧原依⾥+和⽥夏実) 「KINEOTYPE」
⾼橋鴻介 「多元性の展望台」
楊いくみ 「早春図」
主催:東京都、シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT](公益財団法⼈東京都歴史⽂化財団 アーツカウンシル東京)
1. 2026年度 アーティスト・フェロー
加藤明洋 「ノラロボ」
⾃然環境の中で⽣存を試みる⼩型ロボット「ノラロボ」を放ち、ロボット、AI、⼈間が相互に関与しながら進化を続ける「⼈⼯物⽣態系」の構築を試みるプロジェクト。ノラロボが⽣存中に記録する⽇記や遺⾔をもとにAIが次世代機の進化プランを提案し、⽣存と進化のサイクルを繰り返すことで、⼈⼯物ならではの⽣態や継承のあり⽅を探究する。その過程はワークショップや展⽰としてひらかれ、テクノロジー、環境、⼈間の新たな関係性を想像するための視点を⽴ち上げる。



加藤明洋 / Kato Akihiro
1992年愛知県⽣まれ。情報科学芸術⼤学院⼤学(IAMAS)修了。 ウェブ・エンジニアリングを基盤に、ブロックチェーン、AI、⼈⼯⽣命、映像などを⽤い、テクノロジーと社会の関係を問う作品を制作する。
審査員コメント
都市で⽣きる私たちは、環境や他者との関係の中で、無意識に⾝体やふるまいを形づくられている。本企画は、「ノラロボ」という、どこか違和感のある⼈間ではない存在を都市に介在させることで、市⺠の反応や関係性を引き出し、都市の空気や構造を可視化しようとする実験的な試みとして興味深い。⼈々はそれを避けるのか、受け⼊れるのか、関わろうとするのか、そしてロボはそこから何を受け取るのか。そのように⼈々が⾝体を通して他者や環境と関係を編み直していく⾝体性の可能性を感じた。違和感を通じて都市を読み替える試みに期待したい。(⽯川由佳⼦)
⼩宮りさ⿇吏奈 「Skinsphere」
⾝体・⾔語・環境を含む総体的な「⽪膜/interface」を纏うことの意味の再構築を通して、「⾃⼰とは何か」を問い直すプロジェクト。揺れ動くアイデンティティの⼟壌に対して、わたしたちを定義する様々な⾔葉を「⾔語環境」として再思考するとともに、⾝体に棲みつく細菌叢を通して惑星における共⽣体としての「⾝体環境」を再発⾒する⼆軸からのアプローチを図る。多様な主体との対話や協働、リサーチと実践の往還を通じて、個⼈と社会の関係性を捉え直す視点をもたらすことを⽬指す。



⼩宮りさ⿇吏奈 / Komiya Lisa Marina
クィア的視座から「新しい⽣殖の⽅法を模索する」ことをテーマに、バイオテクノロジー、パフォーマンス、映像、インスタレーション、漫画などメディアにとらわれず活動している。共同プロジェクトとして「繁殖する庭」、「FAQ?」など。
審査員コメント
ファッションを⾝体・⾔語・環境を含む総体的な「⽪膜/インターフェース」として再定義しようとする本プロジェクトは、クィア的視座からオルターナティブな⽣殖・繁殖の⽅法を検討してきた⼩宮が市⺠参加に開く初の試みである。⾝体やファッションを複数の⽣や情報が動的に交換される共⽣体として捉え、「⾔語環境」と「バクテリアを含む⾝体環境」の側⾯からリサーチ、バイオテクノロジーを⽤いたワークショップや作品制作などが構想されている。⾃⾝を⾮⼈間を含む他者そして空気などとつながる存在として発⾒することで多様な⽣を浮上させようとするコンセプト、⾝体、社会、環境を(資本の論理や社会規範に絡め取られることを回避しつつ)なだらかにつなげていくオルターナティブで批評的な⽅向性を評価した。実施においては、「⾔語」と「⾝体」環境をいかに関係づけていくかが課題と思われる。(四⽅幸⼦)
05(牧原依⾥+和⽥夏実) 「KINEOTYPE」
視覚⾔語である⼿話を第⼀⾔語として使⽤する作家らが、⾝体動作や視覚表現を起点に都市空間と⾝振りの関係性を再発⾒し、新たなコミュニケーションのあり⽅を設計・実装するプロジェクト。ろう者と聴者の協働のもと、多様な⾝振りを収集・分析し、デジタルアーカイブとして共有基盤化する。さらに、⾒通しや距離、光の活⽤等、視覚⾔語的空間設計の原理を応⽤した仕掛けを公共空間に実装し、参加型パフォーマンスを通じて⾝振りによる相互作⽤の創出を試みる。



05(牧原依⾥+和⽥夏実) / 05(Makihara Eri + Wada Natsumi)
映画作家・演出家の牧原依⾥(ろう者)と研究者・クリエイターの和⽥夏実(CODA)によるユニット。視覚⾔語⽂化拠点「5005」を拠点に、視覚⾝体⾔語の可能性を共に探求している。
審査員コメント
無数の⼈が集う東京。その数だけ⾝体があり、無限の可能性があるはずだが、私たちはそれを活かしきれているだろうか。ただ都市から⼀⽅的に価値を享受するだけでなく、⾝体を通じて⼈と⼈が真に交感し合う状況はどう作れるのか。本作品は、ろう者と聴者の対話を既存の⼿話という枠に留めず、新たな⾝体⾔語の創出に挑む意欲作である。福祉の視点を出発点としながらもその壁を越え、希薄化した現代のコミュニケーションを未踏の領域へと引き上げてくれるはずだ。本作が、現代都市に新たな気付きを与えてくれることを、深く期待している。(津川恵理)
⾼橋鴻介 「多元性の展望台」
都市に対して異なる⾝体・知覚・経験を持つ⼈々の視点を採集し、その多元的な眺め⽅を体験できる仮設建築「展望台」を都市に実装するプロジェクト。市⺠参加型のフィールドワークによる「発⾒」、採集した視点を体験へと変換する「変換」、都市空間へのインストールを⾏う「実装」の 3フェーズで構成される。異なる⾝体性から⽴ち現れる都市の豊かさをひらき、硬直した都市への眼差しを更新することを⽬指す。



⾼橋鴻介 / Takahashi Kosuke
異なる⽂化や⼈の間に、よい関わりを⽣みだすための発明とデザインを⾏っている。主な発明品に、点字と⽂字が⼀体になった書体「Braille Neue」、触覚コミュニケーションゲーム「YUBIBO」など。
審査員コメント
都市には多様な⼈を包摂する仕組みが必要だが、点字ブロック等の物理的整備は「解決すべき課題」という⽂脈に留まりがちだ。本作品は、異なる知覚を持つ⼈々の視点を困難の象徴ではなく、都市を新鮮に捉え直す「豊かな資源」として再定義している。単なるバリアフリーを超え、他者の⽬に映る世界の⾯⽩さを感性レベルで共有するこの試みは、真に多元的な包摂のあり⽅を提⽰している。ただの展覧会に閉じず、街なかでの開かれた体験を通じて多様な⼈が参加し、そこから新たな発明が連鎖していくような実践を期待したい。(関治之)
楊いくみ 「早春図」
ファッションは⾃⼰表象に有効な装置として信じられているが、「選択すること」と「与えられること」の境界は今⽇も存在するだろうかーーという問いを起点に、東洋絵画の遠近法「三遠(⾼遠・深遠・平遠)」の概念を⽅法論として都市空間に投影したパフォーマンス・インスタレーションを展開する。同時多発的に分散して⽴ち上がる状況群は、⼀つの出来事としてリアルタイムで編み直され、公開される。演者と鑑賞者の境界を揺るがしながら、冬の時代にある⾃⼰の先に訪れる「早春」の⾵景を探る。



楊いくみ / Yang Ikumi
インスタレーション、パフォーマンス、映像を横断しながら、鑑賞者の移動や知覚を含めた空間的な作品を制作している。⾝体が共同的な場へと移⾏していくトランジションの過程を可視化する。
審査員コメント
ファッションを「装い」と捉えるならば、シビック・ファッションとは「都市の装い」と呼ぶことができよう。原宿・渋⾕において同時多発的に⾏われるパフォーマンスと、それが同時中継された映像をひとつなぎに統合する映像からなる本作品において、パフォーマーと町中でそれを鑑賞する参加者はともに都市の装いの⼀要素となる。彼/彼⼥らの⾝体が都市を劇場化することによって⾒慣れた⽇常の⾵景がどのように変容するのか。そして、都市に点在するパフォーマンスがひとつの映像に統合されることでどのような鑑賞体験が作り出されるのか。本企画を通じて新しいシビック・ファッションの⼀様態が⽣まれることを期待している。(蘆⽥裕史)
*2027年3⽉までのフェローによる活動(レクチャー、ワークショップ、作品発表等)はウェブサイトおよびSNSでお知らせします。
2. CCBT アーティスト・フェロー活動とは
クリエイティブ × テクノロジーで東京をより良い都市に変える表現・探求・アクションをつくり出す、 国内最⼤規模となるアーティスト・フェロー制度
CCBTのコアプログラム「アート・インキュベーション」では、公募・選考によって選ばれたクリエイターを「アーティスト・フェロー」として委嘱しています。フェローは、CCBTを拠点に企画の具現化と発表に取り組むとともに、創作プロセスの公開やレクチャー・ワークショップの開催など、CCBTのパートナーとして多彩な活動を展開します。CCBTは、最⼤1,000万円の制作費に加え、制作スペースの提供、技術・マネジメント⾯での⽀援、メンターをはじめとする専⾨家によるアドバイスなどを通じて、フェローの活動を全⾯的にサポートします。
アーティスト・フェローの活動
(1) 新たな表現の創造・研究開発および発表
CCBTを拠点に創作活動・研究開発等を⾏い、その成果をCCBTおよび都内にて発表・展開する。
(2) 創作活動・研究プロセスの公開
創作活動およびそのプロセスの公開や、ワークショップ、レクチャー、ハッカソン等の開催を通じ、市⺠がテクノロジーを通じた創造性を学ぶ機会を創出する。
(3) 多様な⼈々との協働と共創
市⺠、アーティスト、デザイナー、エンジニア等、CCBTに集う⼈々、さらにはCCBTを取り巻く様々な主体との協働を牽引し、未来を共創する場を創造する。
フェロー委嘱予定期間
2026年7⽉1⽇から2027年3⽉31⽇まで
2026年度アーティスト・フェローの活動には、ファッション論、アーバニスト、キュレーター、シビック・テック、建築家など、多彩な専⾨性を持つメンターが伴⾛します。
2026年度メンター
・蘆⽥裕史 (ファッション論、京都精華⼤学デザイン学部教授)
・⽯川由佳⼦(アーバニスト、エクスペリエンス・デザイナー)
・四⽅幸⼦(キュレーター・批評家/⼗和⽥市現代美術館館⻑)
・関治之(⼀般社団法⼈コード・フォー・ジャパン 代表理事)
・津川恵理(建築家、ALTEMY代表)
本プログラムでは、これまでの4年間に20組のアーティスト・フェローとともに市⺠と協働し、パフォーマンスやインスタレーションなど新たな作品/表現を創出してきました。CCBTで⽣まれた作品群は独⾃の視点や実験性が⾼く評価され、作品の更新や拡張を経て、国内外の多様な都市や⽂脈において紹介されています。
アート・インキュベーション・プログラムおよびこれまでのフェローの活動について
https://ccbt.rekibun.or.jp/core-programs/art-incubation
3. 2026年度 公募概況
2026年度は「シビック・ファッション」をテーマに公募を⾏い、127件の応募がありました。 7名の審査員による書類・⾯接審査を通して、5組の2026年度 CCBTアーティスト・フェローを採択しました。
募集活動テーマ 「シビック・ファッション」
時々の社会的背景や制度を映し出す記号でありながら、多元的な個の表現可能性を限りなく有するファッション。その性質を起点に、テクノロジーによる変容可能性を⼿がかりとして既存の常識や習慣を超えた「まだない何か」を ⼀時的に“成し”、実践するあらゆるクリエイティブな企画・表現活動。
(申込受付期間:2026年4⽉1⽇〜 4⽉19⽇)
審査員
・蘆⽥裕史(ファッション論、京都精華⼤学デザイン学部教授)
・⽯川由佳⼦(アーバニスト、エクスペリエンス・デザイナー)
・四⽅幸⼦(キュレーター・批評家/⼗和⽥市現代美術館館⻑)
・関治之(⼀般社団法⼈コード・フォー・ジャパン 代表理事)
・津川恵理 (建築家、ALTEMY代表)
・⼩川秀明(CCBTクリエイティブディレクター)
*加えて、CCBTテクニカル・ディレクターも審査に参加
総評
「クリエイティブ×テクノロジーで東京をより良い都市に変える」をステートメントに掲げて活動するCCBTは、第 5 回公募のテーマを「シビック・ファッション」とした。原宿へ拠点を移した CCBT は、ファッションを市⺠が実践を通して⽣み出すムーブメントとして捉え、その応答を募集した。127件の応募に対し厳正な審査が⾏われ、市⺠に開かれた共創的な提案が選定された。⼩宮りさ⿇吏奈の「Skinsphere」は、バイオアートを通じて新たな⾝体観を問い、05(牧原依⾥+和⽥夏実)の「KINEOTYPE」は、多様な感覚と⾝体を起点に都市の⾔語を構想する。加藤明洋の「ノラロボ」は AI・ロボットによる⾃律的な⽣態系を提⽰し、⾼橋鴻介の「多元性の展望台」は市⺠共創による都市体験の更新を試みる。楊いくみの「早春図」は、街全体を舞台とした実践を展開する。これらの提案は、「ファッション」を単なる⾐服や消費の枠組みから解き放ち、市⺠とクリエイターの関係性のなかで⽣成され続けるプロセスとして捉え直す試みといえる。今後の制作を通じて、それがいかなる社会的実践として具体化されていくのかを注視したい。(⼩川秀明)
公式ウェブサイト:https://ccbt.rekibun.or.jp/core-programs/art-incubation
■シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT] https://ccbt.rekibun.or.jp/
アートとデジタルテクノロジーを通じて⼈々の創造性を社会に発揮するための活動拠点。実験と創作のための開かれたラボとして、多彩なプログラムを展開し、クリエイティブ×テクノロジーで東京をより良い都市に変える原動⼒となっていきます。
東京都渋⾕区神宮前1-14-4 1/1(ONE) HARAJUKU “K” B1、3F 電話 03-5458-2700
開館時間:13:00〜19:00 ※休館⽇: ⽉曜⽇(祝⽇の場合は開館、翌平⽇休館)
主催:東京都、シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT](公益財団法⼈東京都歴史⽂化財団 アーツカウンシル東京)
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