帝京大学町支研究室・横浜市教育委員会・ベネッセ教育総合研究所 共同研究プロジェクト 教職員の「働き方の改善」と「学びの充実」を両立できる学校づくり調査
教員一人ひとりの考えを生かし任せる学校運営が、両立の鍵 ~両立している教員は、任された環境で「仕事の意味のとらえ直し」「新しいチャレンジ」をしている~
株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山県岡山市、代表取締役社長:小林 仁)の社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所は、2021年より学校法人帝京大学(本部:東京都板橋区、理事長:冲永 佳史)の町支研究室(東京都八王子市)、横浜市教育委員会(所在地:神奈川県横浜市、教育長:鯉渕 信也)と、教職員の「働き方の改善」と「学びの充実」を両立できる学校づくりに関しての共同研究を立ち上げました。
学校教育の持続・発展のためには、教員の働き方改革で勤務時間の短縮が必要であるとともに、環境の変化に合わせて学校教育をアップデートするために、教員自身の学びの充実も必要です。しかし学びを充実させるには時間が長くなります。本研究では、この相反する二つを両立することを課題ととらえています。
そこで課題解決を目指し、2022年2月~3月に、横浜市の小学校21校に協力をいただき調査を実施しました。
その結果から、両立している教員は、同じ仕事でも「仕事のとらえ直し」をすることを通じて時間を減らしたり、新しいことにチャレンジしたり、管理職との日常の対話を「学びの充実」につなげていることがわかりました。そしてその両立している教員を支えるのは、助け合いがありながらも、「一人ひとりの考えを生かし、任せる学校運営」であることがわかりました。
【主な調査結果】
(1) 両立している教員の働き方に対する認識
■「仕事のとらえ直し」に関連する項目
・仕事をしやすくするために必要な作業を追加したり不必要な作業を減らしたりする。
両立群:82.0% ⇔ それ以外群:55.1%(26.9ポイント高い )
・自分の担当する仕事を見つめ直すことによって、自分にとってよりやりがいのある仕事に意味づけしている。
両立群:72.0% ⇔ それ以外群:58.4%(13.6ポイント高い)
■「新たなことへのチャレンジ」に関連する項目
・よりよい教育を実現するために、積極的に新しいチャレンジをしている。
両立群:74.0% ⇔ それ以外群:56.6%(17.4ポイント高い)
(2) 両立している教員の組織に対する認識
■「一人ひとりの考えを生かし任せる学校運営」に関連する項目
・全ての教職員が自分なりの目標をもって挑戦できるように支援している。
両立群:86.0% ⇔ それ以外群:68.2%(17.8ポイント高い)
・教育活動の内容や方法、判断についてはなるべく教職員に任せるようにしている。
両立群:88.0% ⇔ それ以外群:66.4%(21.6ポイント高い)
■「日常の対話が学びの場」に関連する項目
管理職との対話で学べている。
両立群:90.0% ⇔ それ以外群:72.9%(17.1ポイント高い)
※「両立している」の基準及び、調査結果の詳細は、下記をご参照ください。
【「両立している」の基準】
「働き方の改善」と「学びの充実」を両立する傾向をみるために、「勤務時間」と「教員自身の成長実感」の項目をもとに、「両立」群※と「それ以外」群に分けて分析しました。
※「両立している教員」群とは、以下2つの項目に両方を両立している回答を指します。
(i) 時間外在校時間が短い(時間外在校等時間が文科省の指針である月45時間以内)
(ii) 成長実感を持っている(成長実感を問う項目5段階の選択肢「あてはまる」~「あてはまらない」)のうち、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した)
【調査結果】
「働き方の改善」と「学びの充実」を両立している教員の特徴
■「仕事のとらえ直し」に関連する項目
・仕事をしやすくするために必要な作業を追加したり不必要な作業を減らしたりする。
両立群:82.0% ⇔ それ以外群:55.1%(26.9ポイント高い )
・自分の担当する仕事を見つめ直すことによって、自分にとってよりやりがいのある仕事に意味づけしている。
両立群:72.0% ⇔ それ以外群:58.4%(13.6ポイント高い )
■「新しいチャレンジ」に関連する項目
よりよい教育を実現するために、積極的に新しいチャレンジをしている。
両立群:74.0% ⇔ それ以外群:56.6%(17.4ポイント高い)
両立している教員の特徴を表す項目の全体は、次の図1の通りです。
以上より、「両立している」教員は、①仕事のやり方を変えたり、よりやりがいのある仕事に意味づけたりすることなど仕事を工夫している。さらに②働き方改革の先にある「よりよい教育」にむけて、新しいチャレンジをしているという特徴があると言えます。
「働き方の改善」と「学びの充実」を両立している教員の組織に対する認識
■「一人ひとりの考えを生かし任せる学校運営」に関連する項目
・全ての教職員が自分なりの目標をもって挑戦できるように支援している。
両立群:86.0% ⇔ それ以外群:68.2%(17.8ポイント高い)
・教育活動の内容や方法、判断についてはなるべく教職員に任せるようにしている。
両立群:88.0% ⇔ それ以外群:66.4%(21.6ポイント高い)
■「日常の対話が学びの場」に関連する項目
管理職との日常の対話で学べている。
両立群:90.0% ⇔ それ以外群:72.9%(17.1ポイント高い)
両立している教員の組織に対する認識を表す項目の全体は、次の図2の通りです。
以上より、「両立している教員」を支える組織の特徴は、まず①働き方の改善が推奨されていること。そして、②個人の想いが反映された目標であり、そのもとで一人ひとりが判断を任されてチャレンジできるように支援されていること。さらに、③助け合い心理的安全性のある職場がそのチャレンジを支え、④日常の対話が学びの場になっていることと言えます。
【考察】
これらの結果をふまえると、両立する個人と組織の在り方について、次の4つのポイントがあることが考えられます。
1.「よりよい教育」のための働き方改善
現在「働き方改革」というと、得てして労働時間を短くすることが目的になりがちです。もちろん、現状の長時間労働の状況をふまえると、それ自体は実現せねばなりません。しかし両立している教員は、単純に「時間短縮」を目的にやることを減らすことに注力するのではなく、目的を「より良い教育を実現するため」と捉えています。
2.「仕事のとらえ直し」とチャレンジ
その目的のもとで、前例踏襲とはせずに、自分なりの目標を持ったりそれぞれの活動の意味を問い直したりしながら、より効率的で効果的な別の方法を探ったり、新たなやり方を取り入れたり、チャレンジしたりしています。
3.一人ひとりの考えを生かし、任せる学校運営
その改善を支えているのは、①組織の目標が共有されているだけでなく、その策定に全員が参加し、個々の思いが反映されたものになっていること、②その目標に向かうプロセスは組織によって統制されているのではなく、個別のやり方や判断は、教員一人ひとりに任されていることの2点です。つまり「自分の考えが反映され、任されている」と教員自身が感じられる学校運営になっていることが大切であるといえます。
4.心理的安全性のある「日常の対話」が学びの場
また上述した通り、一人ひとりの考えを生かし任せる組織のもとで、各教員は仕事の意味を問い直しながら、柔軟に新たなチャレンジをしています。これらが同時に学びにつながるのは、心理的安全性のもとで忌憚のない意見を本音で言い合うことができ、その対話から有益なフィードバックが得られるからだと考えられます。結果として、管理職や同僚との日常の対話の中で学べていると考えられます。
【調査概要】
https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5809
そこで課題解決を目指し、2022年2月~3月に、横浜市の小学校21校に協力をいただき調査を実施しました。
その結果から、両立している教員は、同じ仕事でも「仕事のとらえ直し」をすることを通じて時間を減らしたり、新しいことにチャレンジしたり、管理職との日常の対話を「学びの充実」につなげていることがわかりました。そしてその両立している教員を支えるのは、助け合いがありながらも、「一人ひとりの考えを生かし、任せる学校運営」であることがわかりました。
【主な調査結果】
(1) 両立している教員の働き方に対する認識
■「仕事のとらえ直し」に関連する項目
・仕事をしやすくするために必要な作業を追加したり不必要な作業を減らしたりする。
両立群:82.0% ⇔ それ以外群:55.1%(26.9ポイント高い )
・自分の担当する仕事を見つめ直すことによって、自分にとってよりやりがいのある仕事に意味づけしている。
両立群:72.0% ⇔ それ以外群:58.4%(13.6ポイント高い)
■「新たなことへのチャレンジ」に関連する項目
・よりよい教育を実現するために、積極的に新しいチャレンジをしている。
両立群:74.0% ⇔ それ以外群:56.6%(17.4ポイント高い)
(2) 両立している教員の組織に対する認識
■「一人ひとりの考えを生かし任せる学校運営」に関連する項目
・全ての教職員が自分なりの目標をもって挑戦できるように支援している。
両立群:86.0% ⇔ それ以外群:68.2%(17.8ポイント高い)
・教育活動の内容や方法、判断についてはなるべく教職員に任せるようにしている。
両立群:88.0% ⇔ それ以外群:66.4%(21.6ポイント高い)
■「日常の対話が学びの場」に関連する項目
管理職との対話で学べている。
両立群:90.0% ⇔ それ以外群:72.9%(17.1ポイント高い)
※「両立している」の基準及び、調査結果の詳細は、下記をご参照ください。
【「両立している」の基準】
「働き方の改善」と「学びの充実」を両立する傾向をみるために、「勤務時間」と「教員自身の成長実感」の項目をもとに、「両立」群※と「それ以外」群に分けて分析しました。
※「両立している教員」群とは、以下2つの項目に両方を両立している回答を指します。
(i) 時間外在校時間が短い(時間外在校等時間が文科省の指針である月45時間以内)
(ii) 成長実感を持っている(成長実感を問う項目5段階の選択肢「あてはまる」~「あてはまらない」)のうち、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した)
【調査結果】
「働き方の改善」と「学びの充実」を両立している教員の特徴
■「仕事のとらえ直し」に関連する項目
・仕事をしやすくするために必要な作業を追加したり不必要な作業を減らしたりする。
両立群:82.0% ⇔ それ以外群:55.1%(26.9ポイント高い )
・自分の担当する仕事を見つめ直すことによって、自分にとってよりやりがいのある仕事に意味づけしている。
両立群:72.0% ⇔ それ以外群:58.4%(13.6ポイント高い )
■「新しいチャレンジ」に関連する項目
よりよい教育を実現するために、積極的に新しいチャレンジをしている。
両立群:74.0% ⇔ それ以外群:56.6%(17.4ポイント高い)
両立している教員の特徴を表す項目の全体は、次の図1の通りです。
<まとめ>
以上より、「両立している」教員は、①仕事のやり方を変えたり、よりやりがいのある仕事に意味づけたりすることなど仕事を工夫している。さらに②働き方改革の先にある「よりよい教育」にむけて、新しいチャレンジをしているという特徴があると言えます。
「働き方の改善」と「学びの充実」を両立している教員の組織に対する認識
■「一人ひとりの考えを生かし任せる学校運営」に関連する項目
・全ての教職員が自分なりの目標をもって挑戦できるように支援している。
両立群:86.0% ⇔ それ以外群:68.2%(17.8ポイント高い)
・教育活動の内容や方法、判断についてはなるべく教職員に任せるようにしている。
両立群:88.0% ⇔ それ以外群:66.4%(21.6ポイント高い)
■「日常の対話が学びの場」に関連する項目
管理職との日常の対話で学べている。
両立群:90.0% ⇔ それ以外群:72.9%(17.1ポイント高い)
両立している教員の組織に対する認識を表す項目の全体は、次の図2の通りです。
<まとめ>
以上より、「両立している教員」を支える組織の特徴は、まず①働き方の改善が推奨されていること。そして、②個人の想いが反映された目標であり、そのもとで一人ひとりが判断を任されてチャレンジできるように支援されていること。さらに、③助け合い心理的安全性のある職場がそのチャレンジを支え、④日常の対話が学びの場になっていることと言えます。
【考察】
これらの結果をふまえると、両立する個人と組織の在り方について、次の4つのポイントがあることが考えられます。
1.「よりよい教育」のための働き方改善
現在「働き方改革」というと、得てして労働時間を短くすることが目的になりがちです。もちろん、現状の長時間労働の状況をふまえると、それ自体は実現せねばなりません。しかし両立している教員は、単純に「時間短縮」を目的にやることを減らすことに注力するのではなく、目的を「より良い教育を実現するため」と捉えています。
2.「仕事のとらえ直し」とチャレンジ
その目的のもとで、前例踏襲とはせずに、自分なりの目標を持ったりそれぞれの活動の意味を問い直したりしながら、より効率的で効果的な別の方法を探ったり、新たなやり方を取り入れたり、チャレンジしたりしています。
3.一人ひとりの考えを生かし、任せる学校運営
その改善を支えているのは、①組織の目標が共有されているだけでなく、その策定に全員が参加し、個々の思いが反映されたものになっていること、②その目標に向かうプロセスは組織によって統制されているのではなく、個別のやり方や判断は、教員一人ひとりに任されていることの2点です。つまり「自分の考えが反映され、任されている」と教員自身が感じられる学校運営になっていることが大切であるといえます。
4.心理的安全性のある「日常の対話」が学びの場
また上述した通り、一人ひとりの考えを生かし任せる組織のもとで、各教員は仕事の意味を問い直しながら、柔軟に新たなチャレンジをしています。これらが同時に学びにつながるのは、心理的安全性のもとで忌憚のない意見を本音で言い合うことができ、その対話から有益なフィードバックが得られるからだと考えられます。結果として、管理職や同僚との日常の対話の中で学べていると考えられます。
【調査概要】
名称 : 教職員の「働き方の改善」と「学びの充実」を両立できる学校づくり
調査テーマ : 「働き方の改善」と子どもたち及び教師の成長につながる「学びの充実」の両立のための研究
調査時期 : 2022年2月~3月
調査方法 : Webによるアンケート調査(無記名)
※本調査では、教職員に「出勤時刻」と「退勤時刻」の回答を求める形を採り、その回答から一日の勤務時間を算出しました。その上で、ひと月あたりの平均的な平日の日数である22日をかけて、月あたりの勤務時間を概算しました。なお、横浜市教育委員会では、ICカードで時間外在校等時間を把握しており、例年「横浜市立学校 教職員の働き方改革プラン」の取組状況を公表しています。
調査対象
●横浜市小学校21校
●小学校管理職・教職員(有効回答数:264)
調査項目
●教職員の働き方(労働時間、well-being等)
●教職員の学び方(学びにつながった経験、成長実感等)
●ベネッセ教育総合研究所のホームページに、本資料と調査結果レポートを掲載しています。
https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5809
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