なぜ『古事記』では敬われるが、『日本書紀』では蔑まれるのか? 古代史研究の鬼才、関裕二さんがスサノヲの謎に迫った『スサノヲの正体』が発売されます!
『日本書紀』でスサノヲは「悪神」として生まれるのに対して、『古事記』では「貴子」として誕生します。また、スサノヲが高天原を去る場面についても、意味付けに差があります。どちらも亡き母親がいる「根の国」に行くように父イザナキから促されるのですが、『古事記』では「派遣する」という意味の言葉が使われているのに対して、『日本書記』では「追放する」という意味の言葉が使われています。
なぜこうした違いが出てくるのでしょうか。著者の関さんは、その理由をスサノヲの子孫の存在にあると論じます。『日本書紀』編纂の中心にいたのは、中大兄皇子(のちの天智天皇)とともに乙巳の変(大化の改新)で蘇我入鹿を滅ぼした藤原鎌足の子どもである藤原不比等。そして、スサノヲが蘇我氏の祖先だとすれば……。藤原氏は政敵である蘇我氏の祖神であるスサノヲを徹底的に貶め、そのつながりを消すことに全力を尽くしたというのです。
本書ではスサノヲの正体を探っていく中で、なぜ実在の初代王と言われる崇神天皇はアマテラスを伊勢に追いやったのか、そもそも伊勢にいる神はアマテラスなのか、なぜ歴代天皇は明治になるまで伊勢神宮を訪れなかったのか、明治天皇が東京に遷御したあとスサノヲの祀られる氷川神社(現さいたま市)を武蔵国の鎮守勅祭の社と定めたのはなぜなのか、大阪の住吉大社にある「住吉大神と神功皇后が夫婦の秘め事をした」という言い伝えは何を意味するのか……などなど、多くの謎を解いていきます。
古代史研究の鬼才による謎解きにご期待ください。
■目次
序 章 スサノヲはどこに祀られているか
氷川神社は出雲の流れを汲む/天皇家とスサノヲの不思議な関係/なぜ伊勢ではなく熊野なのか/大自然と同じ恐ろしい神/弥生的ではなく縄文的
第一章 なぜ古事記で敬われ、書紀で蔑まれるか
考古学が示した「出雲国譲り神話」の現実味/本居宣長から始まるスサノヲ研究史/『古事記』は『日本書紀』のウソを告発する書
第二章 ヤマト建国の立役者は誰だったのか
ヤマト建国の地・纏向に北部九州の土器は流れ込んでいない/建国のきっかけは近江・東海の勃興/『播磨国風土記』に残された出雲とタニハの戦い/住吉大神と神功皇后の秘め事/崇神が神武・応神をヤマトに呼び寄せた
第三章 天皇家の祖神はスサノヲなのか
「アマテラスと大物主神は一体分身」/なぜ崇神はアマテラスを遠ざけたのか/持統の伊勢行幸に反対した三輪氏/明治まで歴代天皇は伊勢に参っていない/スサノヲと蘇我氏の共通点/新羅王子のアメノヒボコ
第四章 なぜスサノヲは「抹殺」されたか
スサノヲはタニハからやって来た/タニハと新羅/「出雲の国譲り」タケミカヅチは尾張系?/発展しなかった尾張/ 天香具山とナガスネビコ/住吉大社が続ける神事の意味/持統天皇の万葉歌の真意/ヤマトの真の太陽神
終章 甦る縄文の魂とスサノヲ
縄文の神/文明的価値体系への疑問/スサノヲの問いかけ/古代人のシンボル的存在
■内容紹介
アマテラスの弟スサノヲは、天上界では乱暴狼藉を働いて追放される悪玉だが、地上界では八岐大蛇を退治して人々を助ける善玉になる。そのキャラクターは『古事記』と『日本書紀』とで大きく異なり、研究者の間でしばしば論争となってきた。ヤマト建国への関与、祭祀をめぐる天皇家との関係、縄文文化のシンボル……。豊富な知識と大胆な仮説で古代史の謎を追ってきた筆者が、スサノヲの正体に鋭く迫る。
■著者紹介
1959(昭和34)年、千葉県柏市生れ。歴史作家、武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。仏教美術に魅了されて奈良に通いつめ、独学で古代史を学ぶ。『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『神武天皇vs.卑弥呼』『古代史の正体』など著書多数。
■書籍データ
【タイトル】スサノヲの正体
【著者】関裕二
【発売日】7月18日発売
【造本】新書版
【本体定価】836円(税込)
【ISBN】 978-4106110054
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