「上場企業」の平均年収、2024年度は671.1万円 「過去20年で最高」更新 4年連続で前年上回る 業界最高は「海運業」の1052万円
上場企業の「平均年間給与」動向調査(2024年度決算)

株式会社帝国データバンクは、2024年度決算期(2024年4月-2025年3月期)を迎えた上場企業のうち、有価証券報告書に「平均年間給与・従業員平均年齢・勤続年数」の記載がある企業を対象に調査を行った。
SUMMARY
2024年度の上場企業の平均年間給与は671万1000円で、過去20年で最高。前年の651万4000円から3.0%増と、4年連続で増加した。産業別では海運業が1052万3000円で最高。市場別では東証プライムが763万3000円で最高。人手不足や物価高を背景に賃上げが進む一方、今後は米国の関税政策が影響し業績悪化のリスクも考えられる。2025年度の賃上げ動向に注目が集まる。
持ち株会社などの業態、社員数などで対象を限定していない。業種分類は金融庁の定めに準じた
「上場企業」社員の24年度平均給与は671.1万円、過去20年で最高
2024年度決算期(2024年4月-25年3月期)の全上場約3800社における平均年間給与(平均年収、提出された有価証券報告書に基づく)は671万1000円だった。4年連続で前年度を上回った。2023年度の651万4000円に比べて19万7000円・3.0%増となり、平均給与・前年度からの増加額・伸び率ともに過去20年で最高となった。なお、2024年度平均給与額が最も高い企業は、投資ファンドの「インテグラル」(2577万円、東証グロース)。

2023-24年度の増減を比較すると、前年度から平均年間給与が「増加」した上場企業の割合は75.0%を占め、過去5年で最高となった。増加率でみると「(2.5%以上)5%未満」が最も多く、全上場企業の23.7%を占めたほか、「(5%以上)10%未満」(19.4%)、「10%以上」(9.5%)の増加率となった企業もあった。この結果、厚生労働省の調査(「令和6年 民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」)に基づく2024年の平均賃上げ率(妥結額ベース)5.33%を上回る上場企業は4社に1社を占めた。人手不足を背景とした処遇改善目的の賃上げ機運が高まったことなどから、上場企業における平均給与額は上昇傾向が目立つた。

産業別にみると、上場する製造業で平均681万2000円(前年度661万円、+20万2000円・+3.1%)、非製造業で平均665万1000円(前年度645万8000円、+19万3000円・+3.0%)となった。製造業・非製造業ともに、平均給与額および前年度からの増加額が過去20年で最高となった。このうち、最も平均年間給与が高い業界は「海運業」(1052万3000円)だった。全業界で唯一、1000万円を超えた。平均給与額が1400万円台の「商船三井」「日本郵船」(東証プライム)をはじめ、対象となる海運企業すべてで上場企業平均を上回る水準だった。

前年度から最も伸び率が高かった産業は「陸運業」で、13.7%増の645万円だった。集計可能な2003年度以降で、初めて陸運業の上場企業平均で600万円台を記録した。宅配便などの物流企業のほか、鉄道・バスなど旅客輸送を含む陸運業では、ドライバー不足の解消を目的に、大卒初任給や既存給与テーブルを大幅に引き上げる動きが目立ち、各平均給与にもこうした賃上げの動きが反映されたとみられる。
全市場で平均年収が500万円を突破、2022年度以来
上場市場別にみると、最も平均年間給与が高かったのは「東証プライム(市場)」上場企業で、平均763万3000円となった。次いで高かったのは「東証グロース」の629万円となり、前身となる旧東証ジャスダック・マザーズ両市場時代を含め、2年連続で600万円を超えた。また、全市場(東証・名証・福証)で平均500万円を超えた。全市場のうち、前年度からの伸び率が最も高かったのは「名証」で、5.0%・29.0万円増となった。最も低かったのは「福証」(1.2%・6.3万円増)。

好調な企業業績を背景とした賃上げ、「トランプ関税」で委縮するリスクも
多方面で表面化した人手不足への対応などを背景に、上場企業でも賃上げによって人材を確保する動きが進んできた。2024年度における上場企業の給与水準は平均671.1万円となり、過去20年間で最高額を更新した。厚生労働省が集計した、民間主要企業における2024年の平均賃上げ率(5.33%)に比べると伸び率は見劣りするものの、依然として3%を超える高い水準の給与アップの動きが続いた。
2025年度も引き続き、物価高のほか、人材確保を目的に初任給など給与テーブルを大幅に引き上げる事例が目立つ。他方で、輸出関連の製造業を中心に米国の関税政策の影響などで企業業績を下押しする不安材料もあり、好調な業績に支えられてきた賃上げムードが委縮する可能性もある。持続的な賃上げの動きが続くか、2025年度の給与動向が注目される。
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