シリア危機:守られない休戦、希望は幻想に【報道参考資料】

支援や治療を待ち続ける子ども200万人

 

滞在する仮設テントの前に立つハヤちゃん(3歳)とサビーンちゃん(5歳)。(2017年11月撮影) © UNICEF_UN0154715_Donnell滞在する仮設テントの前に立つハヤちゃん(3歳)とサビーンちゃん(5歳)。(2017年11月撮影) © UNICEF_UN0154715_Donnell

【2018年3月2日 ジュネーブ発】

 本日、国連ジュネーブ事務所の定例記者ブリーフィングで、ユニセフ(国連児童基金)中東・北アフリカ地域事務所代表ヘルト・ カッペラエレが報告した、シリアの子どもたちの置かれた最新状況を抜粋してお伝えします。

* * *

 先週土曜日、世界はシリアの子どもたちに、過去何年もシリアを覆っていた漆黒の闇を照らすような、かすかな希望の光を与えました。

 約1週間前に満場一致で採択された国連安保理決議は、何十万人もの子どもたちに、彼らが強いられてきた残忍かつ終わることのない暴力から、ようやく一時的に解放される機会を提供しました。

 私たちは、今回の決議は、ユニセフやパートナー団体が、シリア全土で必要としている子どもたちに、彼らの命を守る緊急支援を届ける絶好の機会と考えました。

 この決議の採択を受けたシリアの母親、父親たちは、「私たちの子どもたちが生き残れる」とすぐに考えました。重度の栄養不良に陥っている子どもたちや、緊急に医療ケアが必要な子どもたちが、治療や支援を受け、最も基本的な権利を得ることができると思いました。

 しかし、日が経つほどに、この期待は幻想に変わり、この機会の窓は私たちの目の前で閉じられたのでした。

 シリアの子どもたちの状況は、何も変わりませんでした。何ひとつとして。

 国内の数カ所で暴力が続き、激化し、炎上しています。暴力が続くイドリブ、アフリン、デリゾール、ダマスカス、アレッポの一部地域や東グータでは、子どもの死傷が報告されています。

 シリア国内で起きている子どもに対する戦争が、止む様子はありません。シリアは、子どもにとって最も危険な場所であり続けています。
 

栄養不良の検査を受ける男の子。(2017年6月撮影) © UNICEF_UN069840_Souleiman栄養不良の検査を受ける男の子。(2017年6月撮影) © UNICEF_UN069840_Souleiman

 シリアと周辺国の現場で活動するユニセフの支援チームは、昼夜を問わず活動しています。

 私たちは、命を守る医薬品、栄養不良に陥った子どものための栄養補助剤、小児科医や助産師のための医療キット、子どものための暖かい冬服、衛生キットなどの基本的物資をすでに準備しています。

 これらの物資は、アフリン、イドリブ、東グータ、ダラアなどの包囲されている町や支援が届けにくく、私たちが過去数カ月間入ることができなかった場所に届けるために用意されました。これらの地域に暮らす2百万人近くの子どもたちのほとんどが、基本的人権を奪われ、支援を受けられずにいます。これらの各地域でユニセフと複数のパートナー団体は協力して、子どもが子どもらしくいられるように、日々努力を続けています。

 これらの活動以外に、ユニセフはシリア全土で必要としている530万人の子どものために支援活動を続けています。活動には、命を守るための予防接種や安全な飲み水の提供、そして学用品の提供、被害を受けた学校への机やいすなどの提供、地雷や不発弾の危険性に関する啓発教育、500カ所以上の子どもにやさしい空間の設置などの教育および学習機会を提供する支援を含みます。

 今年初めの2カ月間は、子どもたちにとって特に悲劇的なときでした。私たちは、今年に入ってからだけでも、1,000人以上の子どもの死亡あるいは重傷を負った報告を受けています。

 これらの報告は、そのすべてを確認できないものの、シリアの子どもたちに対する戦争を直ちに終わらせなければならないことを、私たちにあらためて思い起こさせるものです。

 シリアの国内の状況に注目が集まる中、シリア周辺国も紛争の代償を払っていることを忘れてはなりません。トルコ、レバノン、ヨルダン、イラクおよびエジプトに暮らすシリア難民の子どもは260万人を超えます。

 彼らの中には、戦争でふるさとを奪われ、一度もシリアを訪れたことがない子どもたちがいます。

 これらの国で暮らす多くの家族は、貧困や貯金の減少により、生計を立てるのがほとんど不可能になっています。

 ユニセフ・ヨルダン事務所が実施した調査によれば、周辺の受け入れ国のキャンプ以外に暮らす難民の85%以上が、貧困下に暮らし、子どもに教育を受けさせることも含め、基本的ニーズを満たすこともままなりません。
 

子どもたちの未来への願い。(2017年12月撮影) © UNICEF_UN0155567_Penttila子どもたちの未来への願い。(2017年12月撮影) © UNICEF_UN0155567_Penttila

 最後に、ユニセフはシリアの何百万人の子どもたちに代わって、次のことを求めます。

 ユニセフは、シリア国内の紛争当時者、そして彼らに影響力を持つすべての者に対して、武器を置き子どもに対する戦争を終わらせるよう再度求めます。

 ユニセフとパートナー団体が、必要とするすべての子どもたちのもとに、たとえ彼らがどこにいようとも、緊急かつ命を守る人道支援を届けることを認め、保証することを求めます。

 私たちの要求は、またも無視されるのでしょうか?

 シリアの子どもたちは、あまりに長い間待ち続けています。

 世界は、シリアの子どもたちを、何度も裏切ってきました。

 世界は、シリアの子どもたちをこれ以上裏切ってはなりません。あなた方と私、国際社会、紛争当事者、そして彼らに影響力を持つ者たちは、これ以上シリアの子どもたちを裏切ってはならないのです。

 この裏切り行為は、歴史によって裁かれることでしょう。

* * *

■ユニセフについて
 ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する34の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■日本ユニセフ協会について公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国34の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(www.unicef.or.jp)

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会社概要

URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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