シリア危機7年:2017年は子どもの被害が過去最大~障がいを負った子どもたち、疎外の恐れ【プレスリリース】
ユニセフ、子どもを優先した復旧・復興支援求める
【2018年3月12日 ベイルート(レバノン)/アンマン(ヨルダン)/ダマスカス(シリア)発】
シリア紛争が開始から7年が経過することを受け、ユニセフ(国連児童基金)は、紛争によって負傷した子どもたちに関する新たなデータをまとめたインフォグラフ発表しました。
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シリア紛争が続く中、障がいを負った子どもたちは社会から疎外され忘れられる危険に晒されています。
2017年もシリア紛争は弱まることなく続き、2016年を50%上回る過去最大の子どもの犠牲者を出しました。2018年の1月と2月だけでも、暴力の激化により1,000人の子どもが死傷しています。今では紛争が、この国の若者の代表的な死亡原因となりました。
サミ(14歳)は、シリア南部ダラア出身で今はヨルダンに難民として暮らしています。彼は「いとこたちと雪で遊ぼうと外に出たら、爆弾がさく裂した。目の前でいとこの手が吹き飛んだ。僕は両足を失った。いとこ2人が死んで、1人は両足を失くした。
「紛争下において、障がいを負った子どもは最も弱い立場にあります」とユニセフ中東・北アフリカ地域事務所代表ヘルト・カッペラエレは話しました。「多くの場合彼らは特別な治療とケアを必要とします。子どもが必要とするケアはおとなとは違います。容赦ない紛争が続く中、ケアを受けられず、学校に通えず、車椅子などの補助器具が得られない多くの障がいを負った子どもたちは、社会から疎外され、無視され、非難される危険に直面します。
爆発型兵器の使用および人口密度の高い場所への無差別攻撃は、子どもたちの犠牲を増加させ、今では一般市民の犠牲者の4分の1を占めます。これらの数字は国連が確認できた件数のみで、実際はさらに多い可能性があります。
- シリア国内には推定330万人の子どもたちが、地雷、不発弾、簡易爆発装置を含む爆発物の危険に晒されています。
- 150万人以上の人々が、戦争の影響により治ることのない身体的障がいを負い、そのうち8万6,000人が手足を失いました。
- レバノンおよびヨルダンに暮らすシリア難民が負った傷の80%は紛争の直接的な影響によるものです。
- 適切な医療および心理的ケアを受けられなかったことが、多くの子どもたちのけがや障がいにつながる状況を長引かせあるいは悪化させました。
- 障がいを負った子どもたちは、暴力に晒される危険が高まり、保健や教育などの基本的サービスを受けることも難しくなります。
- 障がいを負った子どもたちに対する暴力、搾取、虐待、無視は、ケアをしてくれる人の死や別離により高まります。
- 紛争下や危機下において、障がいを負った子どもがいる家族は、子どもが必要とする補助器具を与える手立てや能力を持ち合わせていないことがあります。
- シリアからの難民の90%を受け入れている近隣諸国は、情勢不安や経済の停滞により脆弱です。難民の流れは、サービスの提供に膨大な負担を課し、シリアの人々にとっても受け入れコミュニティの人々にとっても、基本的なサービスへのアクセスを難しくしています。
- シリア内でそして近隣諸国でふるさとから逃れることを余儀なくされた何百万人もの子どもたちが送る避難生活は、障がいのある者にとって、道路交通や河川、そして不発弾などの危険が高めます。
医療施設や教育施設が受けた大規模な破壊や攻撃により、国の保健と教育制度は崩壊しました。2017年に国連は、教育・医療施設および関係者に対する175件の攻撃を確認しました。最も強く影響を受けたのは障がいを負った子どもたちです。多くが特別なケアや彼らの大志を実現するための教育を受けられなくなりました。
しかし、7年間の紛争による破壊的な損失を受けたにも関わらず、シリアの子どもたちの決意は揺るぎません。
「けがや避難生活にも関わらず、シリアの子どもたちの大志は限界をしりません」カッペラエレは言いました。「障がいを負った子どもたちとその家族は、彼らに必要な支援とケアサービスを受けられたとき、直面する困難を乗り越え、子ども時代、尊厳そして夢を取り戻すために、驚異的な偉業を成し遂げるのです。
シリア危機は、前例のないほどの複雑化、残忍化そして長期化し、今までのように解決せずに続けていくことは出来ません。障がいを負った子どもたちおよびシリアの紛争の影響を受けるすべての子どもたちの代わりに、ユニセフは、すべての紛争当事者、彼らに影響力を持つ者、および国際社会に対して、シリア国内および近隣の受け入れ国にいる子どもたちのために以下の行動をとることを求めます。
- 子どもたちの命を守るケア、そして心理社会的ケアおよび精神保健ケアを含む長期的なリハビリケアの提供に投資すること。
- 保健・栄養、教育、子どもの保護および水を含む包摂的な基本的サービスへのアクセスを改善すること。
- 障がいを負った子どもたちのための、また彼らが参加できるプログラムを設計すること。公的サービスが包摂的になるよう資源を投入すること。
- 車いす、杖、義足などの補助器具の提供が受けられるように、障がいを負った子どもを持つ家族に対する財政支援を増加させること。
- コミュニティと協働して、非難の問題に取り組み、障がいを負った子どもたちを受け入れること。
- 障がいを負った子どもと家族が特別なケアサービスをより受けやすくすることを含めて、子どものニーズを満たす柔軟性のある、無制限かつ複数年の資金を提供すること。シリア国内や近隣諸国で紛争の影響を受けている子どもたちを支援するため、ユニセフは2018年の事業に13億円米ドルが必要であると要請している。
- 障がいを負った子どもを含めて、子どもたちのニーズを優先させた復興・復旧を支援すること。復興および持続可能な平和とは、建物の再建に止まらず、コミュニティをまとめるために、切れてしまった社会の絆を結び直し、寛容と多様を尊重する文化を築き直すこと。
- 子どもの命を奪い、けがをさせ、また徴兵および学校や病院に対する攻撃といった甚大な侵害を終わらせること。
- 政治的解決により紛争を終わらせ、人道支援の提供に対するあらゆる制限を解除すること。
シリア国内および近隣諸国に暮らす家族の財産は、7年間の戦争によって使い果たされ、枯渇し、危険なレベルまで落ち込み、生き延びるために極端な手段を取らざるを得ない状況に陥っています。早婚、子どもの徴兵・徴用、児童労働が、全体的に増えています。2017年に戦闘に駆り出された子どもの数は2015年の3倍になりました。
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■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する34の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国34の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(www.unicef.or.jp)
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