イエメン:紛争開始から3年~栄養不良児倍増、コレラ再流行の恐れ【プレスリリース】
子ども200万人学校に通えず
【2018年3月25日 アンマン(ヨルダン)発】
本日、アンマンでのプレスブリーフィングで、紛争が始まって3年が経過するイエメンを訪問したユニセフ(国連児童基金)中東・北アフリカ地域事務所代表ヘルト・カッペラエレの報告を抜粋してお伝えします。
* * *
先週イエメンの南部と北部を廻り、戻ってきました。そこで目撃したことをお話します。また、3年間のイエメン危機と何十年にもわたる慢性的な開発の遅れがイエメンの1,100万人の子どもたちに与えている影響についてもお話します。
2017年には、毎日少なくとも5人の子どもが殺害、あるいは重傷を負わされていました。また同年は、命の危険もあるコレラとジフテリアが流行し、何百人もの子どもたちがその犠牲になりました。今、イエメンのすべての子どもが緊急人道支援を必要としていると言えます。
3年間におよぶイエメンでの戦争は、重度の急性栄養不良に陥る子どもの数を倍増させました。2015年には、イエメンの開発の遅れから、20万人の子どもが生命を危険に晒す重度の栄養不良に陥っていました。今日、3年間の残虐な戦争によって、その数は倍増し、イエメンは世界で最も急性栄養不良の子どもの数が多い3つの国のひとつとなりました。重要なのは、今後それがさらに悪化する可能性があるということです。
私たち国際社会は、イエメン現地の保健員・人道支援従事者と共に、数カ月かけてコレラの流行を止めることができたことに誇りを持って良いでしょう、そして、過去2週間にジフテリアの予防接種キャンペーンを実施できたことについても誇りを持って良いでしょう、しかし、忘れてはならないのは、コレラはまた流行するということです。数週間後には、また雨季が訪れ、迅速に大規模な投資がなされなければ、コレラはふたたびイエメンの子どもたちを直撃するでしょう。
イエメンの保健危機は、話題にのぼることがあります。しかし、話題になる機会が少ないのはイエメンの教育危機です。
今日のイエメンには、3年前に比べて、50万人以上多くの子どもが学校に通えなくなっています。今では、イエメンの子どもたち200万人近くが、学校に通っていないか、一度も通ったことがありません。
その原因はいくつかありますが、ひとつは言うまでもなく残虐な戦争です。今では2,500校が教育施設として機能していないことが確認されています。学校は、戦争により破壊され、軍事的目的で使用され、あるいは避難所として使用されています。
貧困も重要な原因のひとつです。今日、イエメンの人々の80%近くが深刻な貧困状態にあり、子どもを学校に通わすのに必要な最低限の費用を捻出することが出来ません。
先週サヌアの路上で、子どもたちが物乞いをしていることに衝撃を受けました。私は何年か前にユニセフ・イエメン事務所の代表をしていました。その時に見ていたものとは、まったく違いました。小さな子どもたちが手を伸ばして、少しのお金、少しの食事を求めているのです。
親は、家族1人分の食事を減らすために、子どもたちを幼いうちに結婚させるという、難しい選択を迫られています。今日、イエメンの女の子の75%が18歳になる前に結婚しています。50%が、15歳未満で結婚します。イエメンの父親と母親は望んで、子どもたちに物乞いさせ、働かせ、若いうちに結婚させているわけではありません。彼らは、残虐な戦争のせいで、そうせざるを得ないのです。
問題は、教育を受けられるかどうかだけではなく、教育の質にもあります。私は、12、13歳の女の子グループの1人に教科書を投げつけられたときのことを決して忘れません。彼女は、「イエメンではこれで勉強しなければならないの。教科書は30、40年も前のものよ」と言いました。世界の子どもたちがインターネットから学べているのに、イエメンの子どもたちは何十年も前の教科書で学んでいます。
女の子は続けました。「これで学ぶ必要があるの?これで学んで一体どうやって私たちは、イエメンが切実に必要としている医師、教師、技術者になれるというの?」
イエメンの教育セクターは、崩壊寸前です。学校が破壊されただけではなく、イエメンの教員の大半は1年以上給料が支払われていません。南部・北部の教員は、政治的指導者が何をしようとも、自分たちはあきらめてはいけないと信じているから学校に通っていると話しました。
最後にいくつかお願いがあります。
最初のお願いは単刀直入です。子どもに対する残虐な戦争を終わらせてください。明日ではなく、今すぐに。子どもたちにとっては、何の意味のない戦争です。到底、子どもたちの未来をより良くするものではありません。いかなる時もいかなる場所でも確実に子どもたちを保護するという、国際社会が何十年も前に満場一致で合意した聖なる原則は、イエメンにはもう存在しません。
イエメンの100万人の子どもたちの代わりにする次のお願いも、同様に単刀直入です。イエメン全土のすべての当局に対して、人道支援を含めたあらゆる支援を無条件で許可することを求めます。私たちが人道支援を提供することを妨げる条件を課す各当局と、交渉することで時間を奪われています。一例として、昨年、100万人以上の人々がコレラと急性水様性下痢症に罹りました。私たちはその予防方法を知っています。飲料水を提供し、コレラの予防接種を受けられるようにすることです。しかし、私たちは何週間も、何カ月も、コレラの予防接種をするための交渉に費やしました。先週、ようやく当局が合意したことを嬉しく思いますが、貴重な時間を失いました。
人々が緊急に必要としている人道支援物資の提供は、交渉してはならない、すべきではないものです。
私の最後のお願いは教育に関するものです。教育を奪われた200万人の子どもの未来とはどのようなものでしょうか?もし、教育に一定の質を保証し、子どもたちが医師、技術者、教師になるための競争力を身に着けられなければ。教育への投資は極めて重要であり、私は国際社会に対して、今後も寛容であり続け、教育分野を優先するよう求めます。教育は、人道危機的状況下で見過ごされることがよくあります。しかし、これは子どもたちの未来を危険に晒すことなのです。
最後に、イエメンはかつて「アラビアのフェリックス」、幸福なアラビアと呼ばれました。しかし今日、そこに多くの幸はありません。私たちが子どもたちに投資し、残虐な戦争を終わらせ、教育に投資して初めて、イエメンに幸福は戻ってくるのです。
* * *
■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する34の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国34の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 (www.unicef.or.jp)
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザーログイン既に登録済みの方はこちら
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像