クリーニング店が苦境、「倒産・廃業」最多ペース コスト高で3割超「減益」 「カジュアル化」「資材高」「節約志向」の三重苦に直面
「クリーニング店」の倒産・休廃業解散動向(2025年1-9月)

株式会社帝国データバンクは、「クリーニング店」の倒産発生状況について調査・分析を行った。
SUMMARY
2025年1-9月に発生したクリーニング店の倒産は18件、休廃業・解散は34件で、合計52件が市場から退出した。テレワークの普及に加え、オフィスウェアのカジュアル化、家庭用洗濯機の高機能化といった要因が重なり、クリーニング需要の減退が続く。資材高など運営コストも上昇したが、客離れを危惧して十分な価格改定に踏み込めず、業績が悪化するケースが増えている。
集計期間:2000年1月1日~2025年9月30日まで
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産。なお、休廃業・解散とは、倒産(法的整理)を除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態を確認(休廃業)、もしくは商業登記等で解散(「みなし解散」を除く)を確認した企業
クリーニング店の「倒産・廃業」最多ペース コスト高打撃
2025年1-9月に発生した「クリーニング店」経営業者の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は18件、休廃業・解散(以下「廃業」)が34件にのぼり、合計で52件が市場から退出した。倒産は9カ月間の累計で前年(17件)を既に上回ったほか、コロナ禍後も需要が戻らず「あきらめ倒産・廃業」が増加した2023年(53件)に並ぶ高水準で、通年で過去最多となる可能性がある。零細事業者の閉店なども含めば、実際はより多くのクリーニング店が市場から退出しているとみられる。

クリーニング店の倒産では、コロナ禍を機に導入が進んだテレワークや、クールビズなどをきっかけにカジュアルなビジネスウェアが普及したことに加え、水洗いできるスーツなど衣類の高機能化、単価が低く手軽なコインランドリーの普及、高機能な家庭用洗濯機の普及でホームクリーニングが容易になったことなどが重なり、クリーニング需要の減退に直面した。他方で、クリーニング事業の運営にかかるコストが近年急激に上昇し、「低利益・大量作業」でビジネスを展開してきたクリーニング店ほど収益性の悪化に直面している。
実際に、クリーニング店の2024年度(2024年4月~25年3月期)における業績をみると、「減益」となった事業者が3割を超えたほか、「赤字」も2割を占め、全体の半数超が業績悪化となった。クリーニング店の多くが、ドライクリーニング用の洗剤のほか、ハンガーや包装用ビニールなどの資材、ボイラー用燃油の価格高騰に直面した。また、慢性的な工場作業員の不足を背景とした給与水準の引き上げも行ったことで、多くの企業がサービス価格の改定を実施した。そのため客単価が上昇し、収入高は増収となったものの、価格改定だけでは上昇したコストを完全に吸収しきれず、「増収減益」傾向での推移となった。こうした環境のなか、創業から数十年が経過したクリーニング店などでは、店主の高齢化といった課題を抱える中で、洗濯機械の故障や設備更新のタイミングを機に事業を畳むケースも少なくない。

足元では、インバウンド需要の回復に伴い宿泊業向けのリネンサプライ部門で受注を強化する動きや、アプリ会員向けの割引などで集客を強化する取り組みも進んでいる。ただ、資材や人件費の高騰が今後も続くと見込まれるなか、収益確保に向けた値上げは大きな課題となる一方、「ワイシャツで200円を超えたあたりから客足が鈍くなった」「客離れを懸念して値上げが一部しかできない」といった声もあり、値上げに慎重なクリーニング店は少なくない。そのため、当面は限られた需要を競り合う我慢比べの状態が続くとみられ、「カジュアル化」「資材高」「節約志向」の三重苦を前に経営体力が限界に達した中小クリーニング店で「あきらめ倒産・廃業」がさらに増加する可能性がある。
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