「モノづくり」の立役者 金型産業が苦境「倒産・廃業」4年連続増加 金型メーカーの6割が「業績悪化」、コストアップを転嫁できず苦境
「金型製造業」の倒産・休廃業解散動向(2025年1-9月)

株式会社帝国データバンクは、「金型製造業」の倒産発生状況について調査・分析を行った。
SUMMARY
2025年1-9月に発生した金型メーカーの倒産は36件、休廃業・解散は90件で、合計126件が市場から退出した。金型技術者や経営者の高齢化に加え、原料価格の高騰と価格転嫁の難しさを背景に、2024年度の業績では「赤字」が37.3%、「減益」が23.0%で、業績悪化が6割を占めた。
集計期間:2000年1月1日~2025年9月30日まで
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産。なお、休廃業・解散とは、倒産(法的整理)を除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態を確認(休廃業)、もしくは商業登記等で解散(「みなし解散」を除く)を確認した企業
「金型産業」の倒産・廃業、4年連続で増加 「モノづくり」危機
日本の「モノづくり産業」を黒子として支える金型産業で、市場から退出する企業が増加している。2025年1-9月に発生した「金型メーカー」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は36件、休廃業・解散(以下、「廃業」)が90件発生し、合計で126件が市場から退出した。倒産、廃業ともに過去10年で最多ペースとなったほか、前年同期比で4年連続の増加となるなど、製造業の空洞化が加速したリーマン・ショック以来の淘汰が進んでいる。

金型は、金属や樹脂、ゴム素材などの成形に使用する「型枠」で、製造業を支える重要な産業の一翼を担う。ただ、近時は金型技術者や経営者の高齢化により人材難が続いているほか、金型需要も自動車産業をはじめ取引先の海外移転や内製化へのシフト、鋼材や樹脂などの原料価格の高騰と価格転嫁の難しさといった諸問題を背景に、中小零細規模の金型メーカーで事業を畳む事例が増加した。実際に、2025年9月までに倒産・廃業となった金型メーカーの約6割を資本金「1000万円未満」の事業者で占めた。
金型メーカーの2024年度(2024年4月~2025年3月期)業績をみると、「赤字」となった事業者が37.3%で最も多く、「減益」(23.0%)を合わせた「業績悪化」の割合は6割を占めた。業績悪化の割合は2020年度(71.7%)をピークに低下傾向で推移しているものの、依然として多くの金型メーカーが慢性的な赤字経営を余儀なくされている。大口需要先となる自動車向けの金型は、「脱エンジン」による長期的な需要減、半導体不足などに起因した新車のモデルチェンジの遅れ、減産といった影響を受けたほか、スマートフォンや家電向けなどのプラスチック成型の需要が落ち着いた事業者が目立った。
他方で、納品先(完成品メーカー)との力関係から、鋼材や樹脂といった原材料や人件費、金型保管に必要な空調管理をはじめとする光熱費など、各種製造工程のコストアップ分を納入価格に転嫁できるほどの交渉力がなく、結果的に自社努力で吸収せざるを得なくなったことで、経営体力を急激に損耗した中小零細の金型メーカーも多かった。実際に、金型製造業での価格転嫁率は2025年7月時点で37.0%と、製造業全体の水準(42.9%)と比べても低い水準にとどまった。
足元では、今後の受注増が見込める電子光学や航空宇宙、建設用金型にシフトしたことで売り上げを伸ばした企業もあるものの、設備投資による減価償却負担が重く、人手不足や資材高もあり「黒字化が精一杯」といったケースは多い。生産ラインの停止や納期遅延、品質問題といったトラブルを未然に防ぐ、高い技術力やノウハウを有する国内金型産業の保護が欠かせない。
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