アニメ制作の倒産・廃業、3年連続で増加へ 収益悪化、人手不足も打撃 秋アニメ「放映延期」で苦境が表面化 人材育成・定着が課題

「アニメ制作業界」の倒産・休廃業解散動向(2025年1-9月)

株式会社帝国データバンク

株式会社帝国データバンクは、「アニメ制作会社」の倒産・休廃業解散について調査・分析を行った。

SUMMARY

2025年1-9月に発生したアニメ制作会社の倒産は2件、休廃業・解散は6件で、計8件が市場から退出。元請・グロス請企業が目立ち、受注急増や円安による外注費高騰が収益悪化の要因。市場規模は拡大しているが、制作コストの高騰や人件費増加、制作遅延により「利益なき繁忙」状態が続く。2024年度の業績は元請制作の約6割が悪化。適正な取引環境の構築や人材育成が急務であり、持続的な成長には支援策が必要とされる。

集計期間:2000年1月1日~2025年9月30日まで

集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産。なお、休廃業・解散とは、倒産(法的整理)を除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態を確認(休廃業)、もしくは商業登記等で解散(「みなし解散」を除く)を確認した企業


アニメ制作会社の倒産・廃業、3年連続で増加へ 

 2025年1-9月に発生した「アニメ制作会社」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は2件、休廃業・解散(以下「廃業」)が6件発生し、計8件のアニメ制作会社の退出が判明した。年間で過去最多だった2018年(16件)と同水準で推移しており、3年連続での増加が見込まれる。ごく小規模な受託制作やフリーのアニメーターなども含めると、より多くのアニメ制作会社が市場から退出したとみられる。

アニメ制作会社の倒産や廃業は、二次受託(下請け)となる専門スタジオ業態以外に、直接制作を受託・完成させる能力を持つ「元請・グロス請」に属するアニメ制作会社の発生が目立った。過去5年間に市場から退出したアニメ制作会社のうち、約半数は「元請・グロス請」だった。グロス請を担当していた「エカチエピルカ」(北海道、7月破産)や、『ささやくように恋を唄う』などの放映延期で話題となった「クラウドハーツ」(東京、2024年12月破産)、3DCGアニメーションの制作を手掛けた「5(ファイブ)」(東京、2024年6月破産)などが経営破たんした(『ささやくように恋を唄う』はその後、別企業が制作を引き継いだ)。コロナ禍の受注減から一転して受注が急増したことで供給能力が追いつかず、補填するために発注した海外への制作外注費が円安で高騰したことも重なって収益性が悪化したケースもみられた。

アニメ制作産業は、海外での高い評価を背景とした需要増を背景に、市場規模が過去最高を更新するなど拡大を続けている一方、制作現場ではコスト増を価格へ転嫁できない「利益なき繁忙」状態へ陥りつつある。帝国データバンクの調査では、元請制作の約6割が2024年度の業績が「悪化」となった。制作現場では、増収ペースを上回る制作コストの高騰や人件費の増加といった状態が鮮明となり、IP(版権)収入など安定した収益基盤を持たない中小制作ほど苦境が鮮明となっている。こうしたなか、2025年秋に放映が予定されていたアニメの延期が相次ぎ発生し、業界全体でアニメーターなどのマンパワー不足も顕在化しつつある。

足元では、製作委員会に出資する企業を中心に制作費の値上げには柔軟に応じる姿勢もみられるなど、高騰するコストに対応した努力が続けられている。ただ、中小制作会社では二次受託として制作に携わるケースが少なくないほか、IPを有しない制作会社では作品のヒットによる恩恵が乏しい。また、収益力が低く資金面で不安定な体質を抱えたままのケースも多い。アニメ制作産業の持続的な成長に向けた適正な取引環境の構築や、アニメーターなどの人材育成といった支援策が急務といえる。

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ビジネスカテゴリ
シンクタンク漫画・アニメ
キーワード
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業種
サービス業
本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 信夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月