2025年10月の倒産件数、今年最多の965件 12年ぶりに年間1万件超へ ― 全国企業倒産集計2025年10月報
負債総額は1423億2200万円、2カ月連続で前年を下回る

株式会社帝国データバンクは、2025年10月の企業倒産件数(負債1000万円以上の法的整理が対象)について集計し、分析を行った。

概況・主要ポイント
■倒産件数は965件(前年同月925件、4.3%増)と2025年で最多となり、5カ月連続で前年を上回った。10月としては2009年(1070件)以降で最多となり、1000件に迫る高水準で推移した。2025年1-10月の累計は8584件で、前年同期(8219件)を365件・4.4%上回った。緩やかな増加傾向が続いており、12年ぶりに年間1万件超えが見込まれる
■負債総額は1423億2200万円(前年同月1755億6800万円、18.9%減)となり、2カ月連続で前年を下回った。負債額トップは、太陽光発電設備の設置工事などを行っていた、総合建設業者の「中川企画建設㈱」の222億2200万円
■業種別にみると、7業種中4業種で前年を上回った。『サービス業』(前年同月237件→243件、2.5%増)が全体の25.2%を占め、2000年以降で3番目に多かった。『小売業』(同188件→210件、11.7%増)は、10月としては2008年(231件)以来17年ぶりに200件を上回った
■地域別にみると、9地域中4地域で前年を上回った。最も件数が多かったのは、『関東』(前年同月317件→334件、5.4%増)で、5カ月連続で前年を上回り、10月としては過去10年で最多となった
■「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は69件判明し、今年最多となった
■「人手不足倒産」は42件判明し、通年で過去最多を更新した
■「後継者難倒産」は41件判明し、2025年1-10月の累計は425件となった
■「物価高倒産」は93件判明し、2025年1-10月の累計は805件となった
集計期間:2025年10月1日~2025年10月31日
発表日: 2025年11月11日
集計対象:負債1000万円以上、法的整理による倒産
次回発表日は12月8日(月)13時30分を予定しております。
『サービス業』が8半期連続で増加、2000年度以降で最多
業種別にみると、7業種中4業種で前年を上回った。『サービス業』(前年同月237件→243件、2.5%増)が最も多く、全体の25.2%を占め、2000年以降で3番目に多かった。最も高い増加率を示した『不動産業』(同28件→38件、35.7%増)は、5カ月連続で前年を上回り、過去10年で最多となった。『小売業』(同188件→210件、11.7%増)は、10月としては2008年(231件)以来17年ぶりに200件を上回った。
業種を細かくみると、『サービス業』では、「自動車整備・駐車場、修理」(前年同月1件→6件)や「医療」(同12件→19件)の増加が目立った。『小売業』では、人件費や原材料費の高騰などの影響を受け、「飲食料品小売」(同19件→39件)が大きく増加した。

『不況型倒産』が794件、全体の8割超
主因別にみると、「販売不振」が784件(前年同月752件、4.3%増)で、10月としては過去10年で最多となった。「不良債権の累積」(前年同月1件→3件、200.0%増)は2カ月ぶりに前年を上回った。このほか、「売掛金回収難」(同3件→2件、33.3%減)などを含めた『不況型倒産』は794件(同763件、4.1%増)となり、全体の82.3%を占めた。2025年1-10月の累計は7126件で前年同期(6804件)から増加し、5期連続で前年を上回った。
「経営者の病気、死亡」(前年同月39件→37件、5.1%減)は、10月としては2000年以降最多だった前年に次ぎ、過去2番目に多かった。

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を『不況型倒産』として集計
「破産」が900件に迫り、全体の92.8%占める
倒産態様別にみると、『清算型』倒産は934件(前年同月902件、3.5%増)となり5カ月連続で前年を上回った。『再生型』倒産は31件(同23件、34.8%増)発生し、2カ月連続で前年を上回った。
『清算型』では、「破産」が896件(前年同月864件、3.7%増)で最も多く、全体の92.8%を占めた。「特別清算」は38件(同38件)で、10月としては前年に並び、2000年以降最多タイとなった。
『再生型』では、「民事再生法」が30件(前年同月23件、30.4%増)となり、法人は8件、個人は22件発生した。「会社更生法」は1件(同0件)発生した。

負債「5000万円未満」の倒産は579件、全体の6割占める
負債額を規模別にみると、「5000万円未満」が579件(前年同月554件、4.5%増)と2カ月連続で前年を上回り、全体の60.0%を占めた。「5000万円以上1億円未満」も156件(同152件、2.6%増)と、4カ月連続で前年を上回り、中小零細規模の倒産が目立った。
資本金を規模別にみると、『個人+1000万円未満』の倒産が714件(前年同月643件、11.0%増)となり、10月としては2000年以降最多となった。

業歴「30年以上」が305件、全体の31.6%占める
業歴別にみると、「30年以上」が305件(前年同月296件、3.0%増)と全体の31.6%を占め、最多となった。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は12件(同16件、25.0%減)発生した。
業歴10年未満の『新興企業』〈「3年未満」(前年同月29件→28件、3.4%減)、「5年未満」(同65件→57件、12.3%減)、「10年未満」(同193件→190件、1.6%減)〉は275件(前年同月287件、4.2%減)となり、2カ月ぶりに前年を下回った。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同85件→91件、7.1%増)が最も多く、「小売業」(同71件→60件、15.5%減)、「建設業」(同69件→54件、21.7%減)が続いた。

9地域中4地域で前年を上回る 『関東』が5カ月連続で前年を上回る
地域別にみると、9地域中4地域で前年を上回った。最も件数が多かったのは、『関東』(前年同月317件→334件、5.4%増)で、5カ月連続で前年を上回り、10月としては過去10年で最多となった。一方、『東北』(同66件→43件、34.8%減)は、2カ月ぶりに前年を下回った。
最も増加率が高かったのは、『近畿』(前年同月225件→261件、16.0%増)で、2カ月連続で前年を上回った。「京都」(同30件→42件)や「奈良」(同9件→14件)が大幅に増加し、10月としては過去10年で最多。『九州』(同84件→92件、9.5%増)は4カ月連続で前年を上回り、10月としては2008年(118件)に次いで過去2番目タイとなった。
単月でみると、47都道府県中24都府県が前年を上回った。

注目の倒産動向
ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産は69件判明 今年最多も前年を下回る
「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、69件(前年同月77件、10.4%減)判明し、今年最多の件数となったものの、6カ月連続で前年を下回った。業種別にみると、『小売業』が18件で最も多く、『製造業』が15件、『卸売業』が13件で続いた。2025年1-10月の累計は541件となり、前年同期(629件)を14.0%下回るペースで推移している。

人手不足倒産は42件判明 通年で過去最多を更新
「人手不足倒産」は、42件(前年同月29件、44.8%増)判明し、5カ月連続で前年を上回った。業種別にみると、『建設業』『サービス業』が各11件で最多、『製造業』が9件、『小売業』が4件で続いた。2025年1-10月の累計は359件と、通年で最多だった前年(342件)をすでに上回り、過去最多を更新した。

後継者難倒産は41件判明 2025年1-10月の累計は425件
「後継者難倒産」は、41件(前年同月63件、34.9%減)判明し、2カ月連続で前年を下回った。業種別にみると、『建設業』(9件)が最も多く、『小売業』(8件)、『サービス業』(7件)、『製造業』『卸売業』(各6件)が続いた。2025年1-10月の累計は425件となり、前年同期(455件)を6.6%下回った。

物価高倒産は93件判明 2025年1-10月の累計は805件
「物価高倒産」は、93件(前年同月91件、2.2%増)判明し、3カ月連続で前年を上回った。業種別にみると、『小売業』が25件で最多、『建設業』が19件、『製造業』が17件、『卸売業』『運輸・通信業』が各12件で続いた。2025年1-10月の累計は805件となり、前年同期(795件)を1.3%上回った。

今後の見通し
5カ月連続で前年を上回る、今年最大の建設業の倒産が発生
2025年10月の全国企業倒産は965件発生し、前年(925件)を40件(4.3%増)上回った。5カ月連続で前年を上回り、今年最多となった。2025年1-10月の累計は8584件となり、前年同期(8219件)を365件・4.4%上回った。一方、負債総額は1423億2200万円となった。前年(1755億6800万円)を332億4600万円(18.9%減)下回り、2カ月連続で前年を下回った。
主な事例では、総合建設業者の中川企画建設㈱(大阪市中央区)が10月9日に大阪地裁へ会社更生法を申請した。近年メガソーラー工事の受注を増やしていたが、売り上げ代金の回収長期化などを背景に不適切な会計処理を行っていた。負債は約222億2200万円で、建設業として今年最大の倒産(全倒産では4番目)となった。
米関税の影響で日産自動車が2750億円の営業赤字、本社売却へ
10月30日、日産自動車は2026年3月期の通期連結業績予想について、米関税の影響(2750億円)などで営業損益が2750億円の赤字になること、さらに11月6日には2026年3月期の連結中間決算で5年ぶりの最終赤字となり、グローバル本社(横浜市)の土地・建物を売却することを発表した。日産自動車のサプライチェーン企業総数は、2025年9月末時点で全国に1万9141社存在。Tier1:1800社、Tier2:1万2259社、Tier3以降:5082社で構成されており、そのうち売り上げが判明した企業の73.1%が年商10億円未満となっている(帝国データバンク『日産自動車の全国サプライチェーン実態調査(2025年10月)』)。米関税が自動車関連事業者にどのような影響を及ぼしていくのか注目されるなかで、日産自動車の取引先の動向がより注目されることになる。
医療機関の倒産が過去最多ペースで推移
医療機関(病院・診療所・歯科医院)の動向に注意が必要だ。2025年10月は9件(診療所5件、歯科医院4件)の倒産が発生し、2025年1-10月の累計は56件(病院10件、診療所23件、歯科医院23件)となった。過去最多となった2024年(通年で64件=病院6件、診療所31件、歯科医院27件)の同期(55件)を上回っており、業態別では、「病院」が2010年以来、15年ぶりに2ケタとなったほか、「歯科医院」は過去最多(2024年=27件)を上回るペースで推移している。赤字経営となる病院が増え続けるなか、収益悪化の要因となっている物価高や賃上げに見合った診療報酬の引き上げ、補助金措置などの支援がどう進むのか、注目される。
増え続ける「あきらめ型倒産」
コロナ禍をゼロゼロ融資の導入などで乗り切ったものの、物価高や人手不足といったアフターコロナで直面する新たな問題を解決できずに事業継続を断念する「あきらめ型倒産」が発生し続けている。とりわけ建設関連事業者や飲食店を中心とした負債5000万円未満の小規模倒産が目立っている。ゼロゼロ融資を受けた際に返済猶予の据置期間(最長5年)を長く設定した事業者ほど、返済開始と物価高による収益悪化が重なり厳しい資金繰りに陥っている。
また、アフターコロナで増加が目立っている粉飾決算発覚による倒産の中には、回収できない取引先への貸付金が資産計上されたままになっているケースも散見される。そうした問題は代表の死去によって発覚するケースも少なくなく、今後、「経営者の病気、死亡」が倒産増加に拍車をかける可能性もある。
倒産件数は引き続き緩やかな増加傾向が続き、2025年(通年)の倒産件数は1万400件前後になるとみられる。
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