【話題の書】脚本家・監督が激論! 世間で評判のいい映画は本当に面白い!?『映画評論家への逆襲』
勝手に観るな、この映画はこう観ろ!
映画の観方はそれでいいのか?
4人の映画監督、脚本家が歯に衣着せぬ物言いでが激論を繰り広げる映画評論集がいま話題になっている。2020年春、コロナ禍で苦戦する全国のミニシアターを応援するプロジェクト「SAVE the CINEMA」。「ミニシアターを救え!」の掛け声の下に、署名が9万筆に達したり、連動したミニシアター・エイド基金がクラウドファンディングで3億円を集めたり。さらには、その発起人である荒井晴彦、森 逹也、白石和彌、井上淳一の4人の脚本家・映画監督が、ミニシアター押しかけトーク隊 「勝手にしゃべりやがれ!」というユニットを結成して全国各地の劇場、ミニシアターを中心にオンライントークショーを開催。ひとクセもふたクセもある、この4人のこと、単なる作品論、監督論を逸脱して、かつてない映画座談会となった。
本書はその内容をまとめたものだ。
«当然、文字にする過程で原稿チェックをするのだが、この4人の凄いところはより過激に赤を入れてくることだ。本当に何の忖度も自主規制もない。
この本は、そんな4人、劇映画監督、ドキュメンタリー監督、脚本家と出自も在り方も違う4人がガチンコトークした一部始終です。共通するのは、映画と社会への誠実な向き合い方のみ。今のぬるま湯に浸かったような日本映画界に少しでも爪痕を残せたなら幸いです。»
(井上淳一氏/本書「はじめに」より)
これは、映画を作る側から、映画評論家、そしてSNSで映画感想文を垂れ流すモノ言う「観客」への逆襲である。荒井氏は「相撲、野球で解説するのは元力士や選手だけど、映画だけはその辺のバカが観ただけで語っている。ある時期から新聞も週刊誌でも、けなす映画評が載らなくなった」とポピュリズム渦巻く現代の映画評論に異議をとなえる。
ならば、脚本家、映画監督はどんな視点で映画を観るのか。
昨年アカデミー賞を受賞したポン・ジュノ作品から巨匠マーティン・スコセッシにまでかみつき、クリント・イーストウッドや高倉 健にも言いたい放題。
- 「『パラサイト』を観て格差社会について深く考える人ってまずいないと思うんです」(森氏)
- 「格差社会っていうのはまず家族が崩壊するんだよ。あんな一致団結した家族ってありえないよ」(荒井氏)
世評の高いヒット作をこき下ろし、大物と呼ばれる監督や俳優を疑う。それでいて、名優や名作の〝味〟や〝豆知識〟についても熱く語る。
- 「俺、イーストウッドで一番、印象的で泣きそうになったのは、『マディソン郡の橋』。雨の中でずぶ濡れになって頭の毛がもう剥げてきているのに、ずっと立っている。あのイーストウッドはよかったなあ」(荒井氏)
- 「髪の毛が張りついてね。あそこは原作にないんですよね。あそこの雨のすれ違いだけ、映画的に、脚本で足しているんですよ」(井上氏)
また、コンプライアンス、ハラスメントなど変わりゆく映画の現場についても激論を交わす。
- 「たとえば役者に同じ芝居を100回やらせる監督がいたとして、これは役者がいじめられていると感じれば、それはハラスメントになっちゃうわけですね。そういう自由がなくなっているというのは明らかなことで。そのある程度の範囲のなかでやるしかない。この時代に平気でやっていたこと、これより以前に平気でやっていたことが、今後できなくなることも当然あると思うし、その代わり、映画を作っていくうえで、たとえば技術的なことで、昔できなかったことを手に入れてもいるわけですから、それは映画の作り方が変わってきているんだろうなと感じながらやっています」(白石氏)
映画の観方が変わる痛快評論集。
〈目次〉
第1章 『仁義なき戦い』は国家と戦争を告発する
第2章 ポン・ジュノ監督、あるいは表現と時代の奇しき関係について
第3章 若松孝二監督の伝説と生身
第4章 憲法映画論、そして加害と被害をめぐるドキュメンタリーの核心へ
第5章 デニス・ホッパーとアメリカン・ニューシネマ、または自由の行方について
第6章 高倉健VSイーストウッド、顔に刻まれた男の来歴
第7章 評論家への逆襲、さらに映画の闘争は続く
小学館新書 『映画評論家への逆襲』 定価:990円(税込) 発売日2021/6/3 判型/頁:新書判/288頁 ISBN978-4-09-825399-9 小学館より発売中(6/3発売) 本書の紹介ページはこちらです↓↓↓ https://www.shogakukan.co.jp/books/09825399 |
【著者プロフィール】
荒井晴彦 (あらい・はるひこ)
1947年、東京都出身。季刊誌『映画芸術』編集・発行人。若松プロの助監督を経て、77年『新宿乱れ街 いくまで待って』で脚本家デビュー。『赫い髪の女』(79年、神代辰巳監督)、など日活ロマンポルノの名作の脚本を執筆。以降、日本を代表する脚本家として活躍。『Wの悲劇』(84年、澤井信一郎監督)、『リボルバー』(88年、藤田敏八監督)、『ヴァイブレータ』(03年、廣木隆一監督)、『大鹿村騒動記』(11年、阪本順治監督)、『共喰い』(13年、青山真治監督)の5作品でキネマ旬報脚本賞受賞。また脚本・監督作品として『火口のふたり』(19年、キネマ旬報ベストテン・日本映画第1位)がある。
森 達也 (もり・たつや)
1956年、広島県出身。立教大学在学中に映画サークルに所属し、テレビ番組制作会社を経てフリーに。地下鉄サリン事件後のオウム信者たちを描いた『A』(98年)は、ベルリン国際映画祭など多数の海外映画祭に招待され世界的に大きな話題となった。続く『A2』(01年)で山形国際ドキュメンタリー映画祭特別賞・市民賞を受賞。『i‐新聞記者ドキュメント‐』(19年、キネマ旬報ベストテン・文化映画第1位)。
白石和彌 (しらいし・かずや)
1974年、北海道出身。中村幻児監督主宰の映像塾に参加。以降、若松孝二監督に師事し、若松作品で助監督を務める。2010年『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編デビュー。13年、ノンフィクションベストセラーを原作とした映画『凶悪』が、第38回報知映画賞監督賞、第37回日本アカデミー賞優秀監督賞・脚本賞などを受賞。21年8月、『孤狼の血 LEVEL2』公開予定。
井上淳一 (いのうえ・じゅんいち)
1965年、愛知県出身。大学入学と同時に若松孝二監督に師事し、若松プロ作品に助監督として参加。90年、『パンツの穴 ムケそでムケないイチゴたち』で監督デビュー。その後、荒井晴彦氏に師事。『戦争と一人の女』(13年)で監督再デビュー。慶州国際映画祭、トリノ国際映画祭ほか、数々の海外映画祭に招待される。白石和彌監督の『止められるか 俺たちを』(18年)で脚本を執筆。19年、監督作『誰がために憲法はある』を発表。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザーログイン既に登録済みの方はこちら
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像