保守メンテナンス手法の変革の取り組みについて
~車両データを活用した新たな検査(在来線)~
JR西日本では、人口減少や少子高齢化、人材確保の困難などの様々な社会課題に対して、持続可能な社会の実現に向けて「鉄道事業の活性化と構造改革」の一つとして保守メンテナンス手法の変革の取り組みを進めています。
車両部門においては、決められた時期・内容での検査に加え、車両状態を常時監視・把握し、必要な時にメンテナンスする「モニタリング保全」というCBMの仕組みを取り入れることで、安全性・生産性の向上を目指しています。
モニタリング保全を実施するために「MiyoCca(見よっか)」と総称するシステムを導入しました。これによって、様々なデータを活用し「データによる検査置換」「車両不具合の予兆把握」「故障発生時の即時対応」というモニタリング保全の具体的な取組みを実現していきます。
※CBM:Condition Based Maintenance
1.車両のモニタリング保全
(1)概要
車両では、運転台制御や空気圧力、室内温度など様々な情報データが機器間で伝送されており、記録されています。記録されたデータを地上システムに伝送、蓄積しビックデータとして活用しています。また、地上設備による遠隔監視やデータ活用も実施しており、これらを総称してモニタリング保全としています。
(2)それぞれの特長
【データによる検査置換】
車両データを用いて、車両の機能を高頻度で判定し、人の手を介さずに検査を実施します。これは「モニタ状態監視システム」を使用することで、車両の様々なデータを取得し、クラウド上に構築した「状態判定システム」というアプリで、車両の機能を自動で判定する仕組みとなっています。
例えば、取得した車両の空気圧からクラウド上のシステムで状態を判定することで、ブレーキ機能に問題がないかを検査することが可能です。これにより、これまで定期検査として90日以内に1回行っていた検査を、運行中に毎日検査することができ、車両品質が一層向上します。
このたび、一部の検査項目にて実施可能となり、10月より、近畿圏内の一部車両で開始しています。
【車両不具合の予兆把握】
車両データから、装置の劣化状況を予測し、先手の修繕を行うことで車両不具合を未然に防ぐものです。こうした車両不具合の予兆把握は、蓄積された膨大な車両データを分析し、修繕を行う閾値(目安)を特定することで可能になっています。例えば、車両の空調機器に供給する電流の膨大なデータを分析し、電流値の低下から機器の劣化傾向を把握し、関係機器の取替えなど修繕を行います。そうすることで空調装置の停止を防ぐなど先手の修繕を行うことが可能になります。
【故障発生時の即時対応】
運行中の車両情報を遠隔地にいる地上職社員にリアルタイムに伝えるものです。これは「モニタ状態監視システム」を使用することで実施可能となります。
これにより、万が一、走行中に車両故障が発生した場合、地上職社員が故障箇所を速やかに把握した上で、対処方針を決定し、乗務員をサポートすることで、お客様への影響を最小限に抑えることが可能となります。
(3)対象車両
207系(1991年~)以降に製造した電車車両
2.MiyoCca(見よっか)の概要
人の手を介さずに車両状態を把握・判定できる次の4つのシステムをMiyoCca(Multi innovative monitoring systems for our CBM to continue advance)と総称しています。
【モニタ状態監視システム(2019年8月発表済)】
・車両・機器のデータを取得、蓄積するシステム
・故障発生時の運転台の画面を遠隔でリアルタイムに確認可能
【状態判定システム(2024年10月より新規導入)】
・モニタ状態監視システムのデータを基に、自動で判定を実施するシステム
【車両状態監視装置(地上)(2018年6月発表済)】
・パンタグラフなど車両の屋根上機器及び車輪状態を自動で測定、記録する装置
【屋根上画像診断システム(開発中)】
・画像認識技術により、車両状態監視装置(地上)の取得データから屋根上機器の
状態を自動で判定するシステム
今回ご案内の取り組みは、SDGsの17のゴールのうち、特に 9番、11番に貢献するものと考えています。
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