『建設HR』独自分析 2022年度国土交通省予算概算要求から見る建設市場

~国土強靭化に向けての予算規模はさらに上積みか~

ヒューマン

総合人材サービス会社のヒューマンリソシア株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:御旅屋 貢、以下「当社」)が運営する、建設業界のお困りごとに寄り添うオウンドメディア『建設HR』は、2022年度の国土交通省予算概算要求から見る建設市場動向をまとめました。
【本件のポイント】
●2022年度の公共事業関係費の要求額は2020年度とほぼ同規模の6兆2,492億円
●国土強靭化に向けての公共事業への予算要求の増加傾向が続く
●省エネ住宅の普及や道路整備を推進

 

■2022年度の公共事業関係費の要求額は2021年度比118.8%で、2020年度とほぼ同規模
2022年度の予算概算要求における国土交通省の公共事業関係費の要求額は、6兆2,492億円(前年度予算比118.8%)と2020年度とほぼ同規模になりました(図表①)。2021年度の概算要求額は、前年度同額を基本とし、そのうえで緊要な経費については、別途、所要の要望を行うこという方針でした。そのため、要求額は5兆2,579億円と2020年度より減少していましたが、最終的に2021年度の公共事業関係費の予算額は、7兆1,929億円(前年度比101.0%、補正予算込み)となりました。よって、公共事業予算の増加傾向は続いていると考えられます。

【図表① 予算概算要求における公共事業関係費の要求額の推移】

出典:国土交通省「予算概算要求概要」(各年度版)より作成出典:国土交通省「予算概算要求概要」(各年度版)より作成


■国土強靭化のために前年度を上回る予算を要求
国土交通省の予算概算要求での三本柱は、「国民の安全・安心の確保」、「社会経済活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大」、「豊かで活力ある地方創りと分散型の国づくり」であり、それぞれのテーマにおいて建設市場に影響を与える公共事業の予算が要求されています。
その中の「国民の安全・安心の確保」のための主な要求額をみると、「災害に屈しない強靱な国土づくりのための防災・減災、国土強靱化の強力な推進」というテーマのもとに、図表②にあるような項目で前年度予算を上回る予算を要求しています。
近年においては今までにない大雨による甚大な災害が頻発化しているとともに、地震や火山噴火といった自然災害の脅威も大きいことから、国土強靭化の必要性、重要性は高く、国土交通省としても重点的に予算を要求する姿勢が鮮明になっています。

【図表② 「国民の安全・安心の確保」のための主な要求額】

出典:国土交通省「2022年度予算概算要求概要」より作成出典:国土交通省「2022年度予算概算要求概要」より作成


■2050 年カーボンニュートラル等グリーン社会の実現に向けて省エネ住宅の普及を推進
「社会経済活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大」のための主な要求額をみると、「2050 年カーボンニュートラル等グリーン社会の実現に向けた施策の展開」の一環として「ZEH・ZEB の普及や木材活用、ストックの省エネ化など住宅・建築物の省エネ対策等の強化」に前年度予算の1.36倍となる1,384億円が要求されていることが注目されます(図表③)。
具体的な施策として、「LCCM 住宅、ZEH、ZEB、長期優良住宅等の整備への支援等の強化」、「既存ストックの省エネ改修への支援等の強化」、「優良な都市木造建築物等の整備や地域の気候風土に応じた建築技術・CLT 等の新たな部材を活用した先導的な取組への支援の強化」、「地域の中小工務店等の連携体制による省エネ性能等に優れた木造住宅の整備への支援の強化」、「省エネ住宅・建築物の普及の加速に向けた中小住宅生産者等による体制整備への支援」、「大工技能者等の担い手確保・育成、都市木造建築物を担う設計者への支援」が実施されることになっており、省エネ住宅の普及を政策的に推進する姿勢が見て取れます。

【図表③ 「社会経済活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大」のための主な要求額】

出典:国土交通省「2022年度予算概算要求概要」より作成出典:国土交通省「2022年度予算概算要求概要」より作成


■分散型の国づくりの一環として道路整備を推進
「豊かで活力ある地方創りと分散型の国づくり」のための主な要求額をみると、分散型の国づくりの一環として「地域・拠点の連携を促す道路ネットワークの整備」に前年度予算の1.24倍となる5,319億円が要求されています(図表④)。この中で、「地域・拠点をつなぐ高速道路ネットワークの構築」、「IC や空港・港湾等へのアクセス道路の整備に対する安定的な支援」といった項目が掲げられており、道路整備への投資は堅調に推移するのではないかと考えられます。
また、「既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」に前年度予算の1.74倍となる393億円、「多様な世帯が安心して暮らすことができる住宅セーフティネット機能の強化」に前年度予算の1.11倍となる1,209億円が要求されており住宅リフォームが政策的に推進される方向性にあります。

【図表④ 「豊かで活力ある地方創りと分散型の国づくり」のための主な要求額】

出典:国土交通省「2022年度予算概算要求概要」より作成出典:国土交通省「2022年度予算概算要求概要」より作成


■まとめ
2022年度の国土交通省の公共事業関係費の予算要求額は6兆2,492億円(前年度予算比118.8%)と2020年度とほぼ同規模になりました。最終的な公共事業関係費の予算額をみると、2019年度が7兆1,307億円、2020年度が7兆1,234億円、2021年度が7兆1,929億円(いずれも当初予算+補正予算)と3年連続で7兆円超えとなっており2022年度についても公共投資は堅調に推移すると考えられます。
国土交通省は、防災・減災及び老朽化した社会インフラ対策を中心とした国土強靭化計画について、喫緊の重要課題であると認識しています。また、毎年のように数多くの自然災害を受けていることから国民のコンセンサスも得やすいため、一定の予算規模は今後も確保されると推測されます。
また、2020年 12 月に閣議決定された「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」では政府全体で約15兆円程度を目処とした事業規模を、2021年度から2025年度までの5か年で追加的に必要としています。この予算は、事項要求をおこなう予算編成過程で検討することになっているため、国土強靭化に向けての予算規模はさらに上積みされると考えられます。



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●代表取締役:御旅屋 貢
●所在地:東京都新宿区西新宿7-5-25 西新宿プライムスクエア1階
●資本金:1億円      
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代表者名
佐藤 朋也
上場
東証スタンダード
資本金
12億9990万円
設立
2002年08月