主要スタジアム・アリーナの2024年度「売上高合計」 コロナ禍前から18%増 Bリーグ、観客動員数で過去最多を更新 アリーナ開発がけん引
スタジアム・アリーナ運営主要50社の動向調査(2025年)

帝国データバンクは、国内のスタジアムおよびアリーナ施設の運営を手掛ける主要企業50社について調査・分析を行った。
SUMMARY
スタジアム・アリーナ運営主要50社の2024年度の売上高合計は3,851億円となった。音楽ライブの再開やプロスポーツの観客動員数の回復により2019年度から18%増と急拡大を遂げている。施設開発においてもBリーグの成長が新設・改修を後押ししている。今後は、スタジアム・アリーナを社会インフラとして位置づけ、地域特性に応じた整備と持続可能な運営を実現できるかが地域の競争力を左右する重要な課題となる。
[注] スタジアムおよびアリーナ施設は、最大収容人数1万人以上の施設について、それぞれ主要25施設ずつの運営企業50社を対象に集計。事業内訳の判明している企業については、運営にかかわる事業でのカウントとした。各企業の売上高は 2025 年 12月時点における帝国データバンクが保有する企業概要ファイル( COSMOS2 、約150 万社収録)、および企業信用調査報告書( CCR 、約 200 万社収録)、外部情報などを基に集計
19年度比で売上高18%増、成長軌道に乗るアリーナ運営
スタジアム・アリーナ運営主要50社の売上高推移をみると、コロナ禍で一時的に大きく落ち込んだものの、その後は段階的に回復し、2023年度以降は成長フェーズに入っている。2024年度の売上高合計をみると、3,851億円(スタジアム2,434億円、アリーナ1,417億円)となり、コロナ禍前の2019年度から18.7%増と2ケタ増の伸び率となった。背景には、大型音楽コンサートの本格再開に加え、プロスポーツの観客動員回復、展示会や企業イベントの復活が重なり、稼働日数が増加したことなどがあげられる。さらに、VIP席や、ラウンジなどのホスピタリティエリアの設置、飲食スペースの拡充といった付帯サービスが伸び、来場者一人当たりの消費単価が上昇している点も売上高拡大に寄与している。
運営主体の内訳を見ると、スタジアム・アリーナの約6割が「指定管理者制度」を採用している。この制度は、自治体が所有する施設の管理運営を、指定した民間事業者やNPO法人などに委ねる仕組みである。国内の体育施設は、もともと学校教育や地域スポーツの場として整備されてきた経緯があり、現在も自治体が所有者となっているケースが多い。

一方、自治体が単独で運営する場合、イベント誘致や興行主との交渉、繁忙期に応じた柔軟な人員配置などを行うことは容易ではない。そこで、営業力や運営ノウハウを持つ民間事業者を指定管理者とすることで、コスト管理と利用者サービス向上を両立しやすくなる。
近年では、こうした流れをさらに進めた「コンセッション方式」を採用する施設も登場している。これは、一般的に3~5年程度と比較的短期間で更新される指定管理者制度と異なり、長期契約を前提に、民間が運営と投資の双方を担う方式である。短期的な収支改善ではなく、施設価値の継続的な向上を通じて投資回収を図れる点が特徴である。また、民設民営のアリーナでは、複数の事業者が連携し、開発から運営までを一体としたプロジェクトを組成する動きが広がっている。こうした共創型の取り組みにより、アリーナは単なるイベント会場ではなく、地域に人の流れを生み出し、経済活性化に貢献する存在へと進化しつつある。それにともない、運営スキームも従来より柔軟で長期的なものへと変化している。
アリーナ開発も活発に、Bリーグがけん引
スタジアム・アリーナの運営に加え、開発も引き続き活況を呈している。2025年には、「TOYOTA ARENA TOKYO」(東京都)や「IGアリーナ」(愛知県)、「GLION ARENA KOBE」(兵庫)、「あなぶきアリーナ香川」(香川)など、新たなアリーナが相次いで開業した。こうした開発ラッシュをけん引しているのが、2016年に発足した男子プロバスケットボールリーグ(以下、Bリーグ)である。Bリーグの観客動員数は2024―25シーズンに485万人に達し、3シーズン連続で過去最高を更新した。
Bリーグは、週末を中心に安定した集客が見込めるプロスポーツとして定着し、アリーナ運営における基盤コンテンツの役割を担いつつある。安定した興行が存在することが、アリーナへの施設投資を後押しする好循環を生んでいる。Bリーグは発足当初から、プロバスケットボールを「見るスポーツ」「稼ぐスポーツ」として定着させることを掲げ、アリーナの高度化を重視してきた。従来の日本のバスケットボールは市民体育館などを主な会場として行われてきたが、これらの施設は競技利用を前提として整備されており、観客席数や演出設備、飲食・物販スペースといった興行向けの機能は十分とは言えなかった。Bリーグは、こうした環境では安定した集客や収益拡大が難しいと判断し、リーグ全体としてアリーナの高度化を求める方向へかじを切った。その象徴が、2026―27シーズンから本格的に始動する新たなリーグ区分「B.PREMIER」である。B.PREMIERでは、試合成績だけでなく、クラブの経営基盤や財務の健全性に加え、一定規模以上の収容人数、VIP席やラウンジなどのホスピタリティ機能、アクセスの良さなど、ホームアリーナの水準が重視される。
これらの要件を満たすため、各地でクラブや自治体、民間事業者が連携し、アリーナの新設や大規模改修に踏み出す動きが広がっている。近年はスポーツに加え、音楽ライブや展示会など多用途での活用も期待されている。一方、5,000~8,000席規模のアリーナは、Bリーグの本拠地としては適しているものの、音楽興行では採算確保が難しいケースもあるといわれ、地域の需要を踏まえた運営戦略が不可欠である。加えて、建設費や運営費の負担が大きいことから自治体と民間が役割分担を行うPPPやPFIといった官民連携手法の重要性も高まっている。今後は、スタジアム・アリーナを単なるイベント会場としてではなく、地域経済や観光、雇用創出に貢献する社会インフラとしてどのように位置付け、運営していくかが、地域の競争力を左右する重要なテーマとなるだろう。
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