凸版印刷、量子カーネルを活用し、肉眼で判別できない不良検知法を開発
量子コンピューティングの国際会議「QCE23」ポスターセッションに、論文2件が採択
■論文について
(1) Quantum kernels for difficult visual discrimination
著者:Takao Tomono, Kazuya Tsujimura and Takumi Godo
(2) Tensor network-based continuous variable quantum circuit optimization for preparation of GKP state
著者:Ryutaro Nagai (blueqat inc.), Takao Tomono (Toppan Inc.)
■研究の背景
近年、高い演算処理能力と高セキュリティ性を有する次世代のコンピュータとして、量子コンピュータへの期待が高まっています。現在、より高性能な量子コンピュータの実現を目指して、超電導方式、イオントラップ方式、光量子方式など、様々なタイプのハードウエアの研究・開発が進められています。特に、光量子方式は演算機能だけでなく、量子データの送受信に関わる通信に活用されるため、重要な技術の一つとなっています。
昨今では、量子コンピュータの実用化に向けた開発も加速しており、このたび、凸版印刷は量子カーネル法(※2)を活用し、長野県のリンゴ農家と「ICT KŌBŌ 飯綱」と連携し、リンゴの品質を非破壊で判別する方法を開発しました。
また、量子コンピュータ向けのソフトウエア開発のリーダー的な企業であるblueqat社と連携して光量子方式の量子コンピュータに向けた取り組みで、誤り訂正に必要なGKP状態(※3)の生成に新しい計算手法を盛り込む提案を行いました。
これらの成果が認められ、QCE23のポスターセッションに採択され、発表することになりました。凸版印刷では、量子コンピュータの時代に先んじ、光量子方式の量子コンピュータの高速演算機能だけでなく、量子データの送受信に不可欠な光量子通信に関する研究、および社会課題解決に向けた量子機械学習の技術開発に取り組みにより、DX(デジタルトランスフォーメーション)事業を通し、将来に向け安全・安心なデジタル社会の実現に貢献していきます。
■ 論文の概要
(1) Quantum kernels for difficult visual discrimination
肉眼で判別できない対象物を量子カーネル法による分類に関し、具体的には、リンゴを2つに分割しないと判断できない内部ツル割れ不良(※4)を検知することのトライアルを実施。その結果、リンゴの品質を非破壊で判別することが可能なことが示唆された。
(2) Tensor network-based continuous variable quantum circuit optimization for preparation of GKP state
凸版印刷とblueqat株式会社(本社:東京都渋谷区、代表:湊 雄一郎)が共同で開発している新しい計算手法に関する論文である。この計算手法を用いることで、光量子計算(※5)における誤り訂正(※6)に応用可能な、新たな回路最適化手法を開発しました。
■ 今後の展開
光量子計算手法やアルゴリズムなどの基礎研究と、量子機械学習を用いた製造における異常検知の研究開発を通して製造DXを推進していきます。
■ QCE23について
「QCE」は量子産業に向けた量子コンピューティングとエンジニアリングの世界最大級の年次国際会議として、2020年から開催されています。量子コンピューティングの科学とそれを取り巻く産業の発展に向け、論文発表やポスターセッションが行われます。第4回目となる「QCE23」は2023年9月17日(日)から22日(金)、Hyatt Regency Bellevue on Seattle's Eastside(Washington, USA)で開催されます。
https://qce.quantum.ieee.org/2023/
■ blueqat株式会社について
本社:東京都渋谷区渋谷2-24-12 39F wework内
代表者:湊 雄一郎
事業内容:量子コンピュータ向けのソフトウエア開発キットの提供
公式ウエブサイト:https://blueqat.com/
※1 IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)
アメリカ合衆国に本部を置く電気・情報工学分野に関する世界最大の学術研究団体であり、世界160か国以上に423,000人以上の会員がいます。URL:https://jp.ieee.org/
※2 量子カーネル法
カーネルトリックと呼ばれる古典カーネル法と比べて、量子回路で作成された量子カーネル法の方が、複雑な特徴空間を表現できる特徴を持ちます。
※3 GKP状態
Gottesman-Kitaev-Preskill状態の略語で、誤り耐性のあるユニバーサルな光量子計算を実現するのに必須の状態と期待されています。
※4 内部ツル割れ不良
図に示すようなリンゴを2つに割って初めて、内部不良の一つである内部つる割れが分かります。外部ツル割れは開花時期の気温や、実の成長期である夏場の雨量なども関係していると言われ、中身の成長の早さに表皮が追い付かないことなども発生要因と考えられていますが、今回のような、内部つる割れは、外部に見えない状態での発生であり、蜜糖度等の味の点ではほとんど良品と遜色はありません。
※5 光量子計算
ここでは、光の粒子(光子)を使った量子コンピュータの方式の一つです。
※6 誤り訂正技術
データ伝送において発生するデータの欠落を予測して置き換える技術で、この技術によって記憶装置やデジタル通信・信号処理の信頼性が確保されています。
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以 上
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