2025年の休廃業・解散、6万7949件 過去10年で2番目の多さ 「黒字」休廃業の割合、初の50%割れ 中小零細の「静かな退場」広がる
全国企業「休廃業・解散」動向調査(2025年)

株式会社帝国データバンクは、2025年に発生した企業の休廃業・解散動向について調査・分析を行った。
SUMMARY
2025年に全国で休業・廃業、解散した企業は6万7949件となった。年間で最多だった前年(6万9019件)から1.6%減少し、3年ぶりに前年を下回ったものの、過去10年では2024年に次いで2番目に多い水準となった。
休廃業した企業のうち、直近損益で「黒字」の企業が調査開始から初めて5割を下回った。資本金別では資本金「100-1000万円未満」の割合が最も高く(44.7%)、コロナ禍前を上回る水準で推移するなど、中小零細企業の「静かな退場」が水面下で進行している。
■ 帝国データバンクが調査・保有する企業データベースのほか、各種法人データベースを基に集計
■ 「休廃業・解散企業」とは、倒産(法的整理)を除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態を確認(休廃業)、もしくは商業登記等で解散(但し「みなし解散」を除く)を確認した企業の総称
■ 調査時点での休廃業・解散状態を確認したもので、将来的な企業活動の再開を否定するものではない。また、休廃業・解散後に法的整理へ移行した場合は、倒産件数として再集計する場合もある
[注] X年の休廃業・解散率=X年の休廃業・解散件数/(X-1)年12月時点企業数
企業の休廃業・解散、3年ぶり減少 「黒字」は初の50%割れ
2025年に全国で休業・廃業、解散を行った企業(個人事業主を含む、以下「休廃業」)は6万7949件となった。年間で最多だった前年(6万9019件)から1.6%減少し、3年ぶりに前年を下回ったものの、過去10年では2024年に次いで2番目に多い水準となった。

休廃業した企業の雇用者数(正社員)は少なくとも累計9万3272人に及び、前年(8万7003人)から約6000人増加し、2016年以降で最多を更新した。すべての雇用機会が消失したとは限らないが、2025年は経営者を除く約9万人を超える従業員が転退職を迫られ、コロナ禍の2020年以降で累計約50万人分の雇用が失われた計算になる。また、消失した売上高の合計は2兆4909億円に上り、前年(2兆9493億円)から減少した。

2025年に休廃業となった企業のうち、保有資産の総額が債務を上回る状態で休廃業した件数=「資産超過型」の割合は63.4%となり、2年ぶりに前年を下回った。また、休廃業する直前期の決算で当期純損益が「黒字」だった割合は49.1%となった。2020年(57.1%)をピークに5年連続で低下し、遡及可能な2016年以降で初めて50%を下回った。この結果、「資産超過」状態かつ当期純損益が「黒字」となった企業の割合は15.2%となり、2年連続で低下した。2025年の休廃業・解散動向は総じて、足元の物価高や人件費などのコスト上昇を受け、損益が悪化した企業の割合が高まった点が特徴といえる。

中小零細事業者の「静かな退場」増加傾向
資本金が判明した休廃業・解散企業(個人事業主を含む)をみると、2025年は資本金「100-1000万円未満」が最も多く、44.7%を占めた。前年(43.9%)を0.8pt上回ったほか、コロナ禍前の2019年(44.0%)も上回った。資本金「100万円未満」(8.8%)も年々上昇傾向が続き、2025年は資本金1000万円未満の企業による休廃業・解散が半数を超えた。総じて、2025年の休廃業・解散は、小規模・零細規模の企業を中心に多く発生した1年となった。

2020年から2022年にかけて、企業の休廃業・解散件数は持続化給付金や雇用調整助成金など「給付」による手厚い資金繰り支援策が功を奏し、コロナ禍の厳しい経営環境下でも抑制された水準で推移してきた。しかし、2023年以降はこれらの支援策が徐々に縮小されたほか、電気代などエネルギー価格をはじめとした物価高、代表者の高齢化や後継者問題、人手不足など四重・五重の経営課題が押し寄せた。
こうした厳しい事業環境のなかで、事業再生ガイドラインをはじめ、近時は経営者の再挑戦や、引退後の生活基盤の保証などを目的とした「円満な廃業」を後押しする動きが進み、官民による廃業支援が充実してきた。ただ、自社の事業や業界全体の将来性が見通せず、現状のままではさらなる業績悪化が避けられないと判断した中小零細企業を中心に、水面下で手元資金に余裕があるうちに会社を畳む「静かな退場(廃業)」を決断した可能性がある。
「80代以上」の割合、過去最高 休廃業企業の「高齢化」加速
休廃業・解散時の経営者年齢は、2025年平均で71.5歳となった。前年に続き5年連続で70代となったほか、前年から0.2歳上昇し、過去最高を更新した。最も休廃業が多い年齢も、2025年は76歳と、前年からは1歳、15年前(2010年:63歳)からは13歳上昇するなど、休廃業・解散を決断する経営者の年齢層は上昇傾向が続いた。

年代別にみると、「80代以上」と「50代」で前年から割合が上昇した。このうち、「80代以上」(24.4%)の割合は過去10年で約2倍に増加し、過去最高を更新した。「50代」(11.3%)は2年連続で上昇し、コロナ禍の2020年以降で最高だった。このほか、「70代」(39.3%)が最も高いものの、2023年(42.6%)をピークに2年連続で低下した。この結果、70代以上が占める割合は63.7%、60代以上では84.1%を占めるなど、休廃業・解散を決断する経営者の高齢化が加速した。体力面からも後継者への事業承継活動が困難となり、休廃業・解散を余儀なくされた可能性がある。
このほか、「40代」(3.7%)、「30代」(0.8%)など若手経営者の休廃業・解散は前年から低下した。
26道県で「減少」 東京都が唯一1万件台
地域別の発生状況では、「北陸」など3地域で増加、「北海道」など6地域で減少した。都道府県別の発生状況では、21都府県で前年から増加、26道県で減少した。件数ベースで最も多いのは「東京都」の1万5804件で、全国で唯一1万件を超えた。次いで「大阪府」(4411件)、「神奈川県」(4117件)、「愛知県」(3946件)と続いた。大阪府が2番目に多かったのは2023年以来、2年ぶり。全国で1000件を超えた都道府県は合わせて18を数え、前年から1県減少した。総じて、企業総数に比例して休廃業数も多い大都市圏での発生が目立った。最も発生が少なかったのは「鳥取県」(290件)だった。

前年からの増加率が最も高かった都道府県は「佐賀県」で、前年比16.9%の増加となった。前年比2ケタの増加は佐賀県のみで、前年に全国で最も少なかった反動増とみられる。このほか、「山梨県」(8.2%増)、「福井県」(7.5%増)、「石川県」(5.5%増)などで増加し、総じて地方部での増加が目立った。
他方で、前年から最も減少したのは「秋田県」(435件、22.9%減)だった。
3年連続で全7業種が増加 件数最多は「建設業」
業種別にみると、その他(詳細不明を含む)を除く7業種すべてで前年から増加した。全7業種が前年比増となるのは、2023年・24年に続き3年連続となる。最も件数が多い「建設業」(8217件)は、前年から0.7%増加し、過去10年では2016年(8420件)に次いで多かった。前年からの増加率が最も高いのは「サービス業」(8165件、前年比7.0%増)で、「製造業」(3310件、同6.0%増)が続いた。「運輸・通信業」(715件、同1.7%増)は、トラック輸送などを中心とした運輸業での増加が目立ち、過去10年で最多となった。「製造業」も、2024年(3122件)を上回って過去10年で最多件数だった。

「宝石卸」の廃業が急増 金価格の高騰など打撃
業種を細かくみると、前年から最も増加率が高かったのは宝石卸などの「貴金属製品卸売」(60件、前年比62.2%増)で、前年比6割を超える大幅増加となった。金や銀、プラチナなどの地金が安全資産として取引され、仕入れ価格が短期間で高騰したことに加え、業界をけん引してきた中国人観光客向けの販売が停滞し、売上単価が上がっても数量が伸びず、結果的に利益が残らない状況に直面している。販売先となる宝飾店など小売でも、ネット販売の普及に加え、メーカー直販体制や、特にリユース市場では消費者からの買取販売が浸透、宝飾店の後継者不在による廃業などから受注が減少しているケースもあり、先行き不安から廃業などで事業を畳んだ宝石卸売業者が多かったとみられる。
貴金属製品卸売に次いで「映画・ビデオ制作」(61件、前年比56.4%増)も、前年から大幅に増加した。コロナ禍で規模の縮小や開催見送りが続いたライブイベントが復活し、関連する映像制作では追い風となった一方で、テレビ離れの進行と広告費の構造変化で制作費の削減に直面し、動画作成ソフトの進化などで同業者間の競合が激化するなど経営環境は厳しさを増している。また、特にアニメ制作やCM制作では人手不足が深刻で外注依存度が高く、制作単価の低下とコスト増の板挟みに直面しているケースが多いことも、経営体力の乏しい中小映像制作業者の休廃業・解散が増加した要因とみられる。
最も減少率が高い業種は「型枠大工工事」(71件、前年比23.7%減)だった。「その他一般機械器具卸売」(80件、同22.3%減)、「配管・暖房・冷凍装置・同付属品卸売」(69件、同17.9%減)が続いた。
「能登半島地震」から2年
奥能登の「休廃業・解散」、震災前から倍増
最大震度7を観測した令和6年能登半島地震の発生から2年が経過した。こうしたなか、震源に近く、被害が甚大だった奥能登2市2町の「奥能登」地方における休廃業・解散件数は48件判明した。前年から7件・17.1%増加し、震災前の過去5年平均(2019~23年:23件)から倍増、過去10年で最多だった。奥能登を含めた「能登地方 」全体の休廃業・解散は160件発生し、前年から減少となった。

奥能登の休廃業・解散を業種別にみると、最も多かったのは「サービス業」(12件)で、前年から倍増したほか、「建設業」(8件)や「製造業」(4件)など幅広い産業で発生した。政府による資金繰り支援策に加え、地元自治体による仮設店舗の設置など営業再開を後押しする政策が実行されたものの、地震により観光業や漁業などの第1次産業へのダメージが大きかったうえ、震災以降に発生した豪雨被害など度重なる被災により、域外に避難した当地住民が多かったことも影響したとみられる。能登地方全体では、「建設業」(25件)が最も多く、以下「サービス業」(21件)、「製造業」(15件)、「小売業」(13件)が続いた。
地震被害からの復興が道半ばの能登地方では、生活基盤の再建で手いっぱいとなり、企業経営まで手が回らない、または事業再建のプランを描く段階まで復興していないケースが少なくない。こうしたなか、地域経済の空洞化による企業規模の縮小、他地域への避難も含めた人口の流出といった経営環境の変化で、震災前の業況回復が期待できないことから経営をあきらめたケースも発生した。産婦人科「桑原母と子クリニック」を運営していた医療法人社団向陽会(七尾市)は、震災後の人口流出による妊婦減少で経営が悪化したことも背景に事業継続を断念した。
安定した事業環境や生活環境の確保ができなければ、地震によって失われた商流が戻らないといった影響も危惧される。今後の能登地方の休廃業・解散は、破損したインフラなどの再整備などによる事業再建への「期待度」がカギを握る。
中小零細企業で“ひっそり”事業を畳む「静かな退場」増加へ
2025年の休廃業・解散動向は3年ぶりに前年から減少したものの、年間では過去10年で2番目に多い高水準で推移した。年間で1万件を超える見通しとなる企業倒産(2025年11月末時点の見込み)を合わせると、年間8万社に迫る企業が市場から退出した計算となる。休廃業・解散では、平常時であれば安定した事業継続が可能な「資産超過」の割合が低下したほか、損益面で「黒字」の割合が50%を下回った。なかでも、特に中小零細規模の企業で休廃業・解散を選択するケースが増えるなど、2024年と比べると休廃業・解散の「質」の変化もみられた。急速に進む物価高や人手不足によるコスト増に加え、設備の老朽化や後継者難といった経営面での課題も背景に、ひっそりと事業を畳む中小零細規模の企業が増加している。
足元では、中小企業支援の軸足が「資金繰り」から、抜本的な「事業再生」へと変化するなかで、M&Aなどを活用して事業を第三者に引き継ぐ「前向きな廃業」の考え方が広まり、業界大手の企業が自主廃業を決断するといった事例も出始めている。他方で、原材料や人件費の高騰で収益性が極端に低く、老朽化した設備の更新もままならないといった零細企業では、代表者の体調不良や機械の故障を「潮時」と考え事業を畳む、先行き悲観の「あきらめ」による廃業もみられた。収益力が厳しい中小企業では「自力での事業継続」「円満な廃業」か、将来を見据えた経営判断を迫られるなか、比較的経営体力に余力のある中小企業が手厚いサポートを受けて廃業を回避できる選択肢がある一方、厳しい経営環境下にある零細企業では支援の輪に入ることができず、価値ある事業や経営資産を有しながらひっそりと市場から姿を消す「二極化」が、今後より鮮明となるだろう。
総じて、2026年は、人手不足の解消や後継者の選定といった既存課題に加え、利上げによる借入金の利払い負担増といった局面に直面するなど、経営環境は一層厳しさを増していく。業績回復や「筋肉質」な収益基盤への再構築が遅れた企業や、後継者問題や事業改革などビジネスモデルに課題を多く抱えたままの零細企業を中心に、退職金の支払いなど企業体力に余力があるうちに、周囲に悟られることなくひっそり会社をたたむ「静かな退場」が2025年以上に増加する可能性がある。
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