『ベストカー水野和敏SPECIAL』の一部を公開!
日産GT-Rの元開発責任者として開発、企画から収益、販売までをすべて統括し、「ミスターGT-R」として世界にその名を轟かせた水野和敏氏。彼は今、「アジア開発圏」の構築を目指し、日本と台湾で新たなクルマ造りを始めています。そんな水野氏の思考のすべてが詰まった『ベストカー水野和敏SPECIAL』が好評発売中です。
「今ある情報はすべて過去。過去は絶対に未来に勝てない」をモットーに、新たな世界戦略車を開発している水野氏は、門外不出の「水野式クルマ開発法」をこの本で公開してくれています。その一部を抜粋して特別に公開します!
「今ある情報はすべて過去。過去は絶対に未来に勝てない」をモットーに、新たな世界戦略車を開発している水野氏は、門外不出の「水野式クルマ開発法」をこの本で公開してくれています。その一部を抜粋して特別に公開します!
クルマは造るな、マーケットを創れ!
私とほかのエンジニアとの一番の違いは、私は「クルマは変わるもの」と思っていて、ほかの人は「ほぼ完成された商品」だと思っていることでしょう。
クルマのキーワード、本質は「自由」です。2シータースポーツからワンボックスまでどう編集してもいいものなのに、カテゴリーで分類してそのなかに閉じ込めようとする。そこをテンポラリーなものとして捉えているのがほかの人と私の一番の違いだと思います。
人のさらなる欲望やわがままなどの心変わりと共にクルマは変化するものであり、カテゴリーも変わっていくと私は思っています。クルマは4つのタイヤの上にボディがあり、それは自由に編集していいものなのに、多くの人はそれを既存のカテゴリーでくくって見てしまうのです。
自由なクルマの自由な編集でマーケットは変化するものです。だから私はいつも「クルマは造るな、マーケットを創れ」と言っています。これは非常に重要なキーワードです。
今のクルマは10年前の思考でできている
私は一般的、常識的にやられているベンチマーク手法や調査会社のリサーチ結果による、今あるカテゴリーのなかで優秀なクルマを造ろうなんて開発は絶対にやっていません。既存のマーケットやカテゴリーを否定するところから私のクルマ造りは始まります。立ち位置、つまり原点が違うのです。
普通は今あるクルマをベンチマークにして、それよりもいいクルマを造ろうとしますが、私は違います。だから私が創ったクルマはすごく誉めてくれる意見とすごく批判する意見が混在します。当然です。新しいものは必ず批判されるものだからです。新しくないものは話題にもなりません。
よく価格帯やカテゴリーをマッピングして、例えばSUVの300万円台が今このくらいあり、セダンは縮小しているなどと分析することがありますが、実はこのマップは遠い過去のものなのです。そこに出てくるクルマは10年前に構想して3年ほどかけて開発して、3~4年売っているわけです。ところがみんな、これを現在であり将来であると思っています。違います。今あるこのマップの思考は、実は10年前の思考なのです。
ものごとを時系列、時間軸で見ることが私の一番の特徴です。みんなは今のクルマを現在だと思っている。私は10年前に考えたものだと思っている。それと今本当に求められているものを比べると、市場がどう変化したかが見えてきます。当たったものと外れたものを取捨選択し、そこから次の10年を予想するのです。
そのためには世の中の動向や経済の動き、どんな産業やジャンルが発展しているかなどを知っておかなければなりませんし、また、ファッションや持ちモノ、人の時間の使い方やレジャーがどう変わるかも考えなければなりません。そして、最も重要なのがお客さまのナマの声。外部の市場調査では出てこない本音を分析することです。
技術なんてあとの話なのです。技術なんてものはただの手段であり、やり方です。大事なのは目標の設定で、現状のマーケットで最高のクルマを造ろうとするのと、未来に対して新しいマーケットを創ろうとするのでは、クルマの考え方はまったく違ってきます。「クルマなんて造るな、マーケットを創れ」というのはそういうこと。マーケットを創るための商品手段として、クルマがあるだけなのです。
今の日本車に必要な「頭領」の存在
クルマの開発でもうひとつ重要なのは、全体をまとめられる能力のあるリーダーという人材です。日本のクルマも個々の技術は確かに進化したでしょう。でも、フィロソフィとトータルコーディネイトがない。これが最大の欠点なのです。
今の日本車に必要なのは「頭領」の存在です。日本には昔からいろんな業界に「頭領」がいて、すべてを見ていたものですが、今は分業制が主流になりました。ところが、ドイツではメルセデスベンツにもBMWにもポルシェにも「頭領」が居るのです。会社としてそういう人材の必要性を認識し、育てる教育システムを持っているからです。「頭領」というのはデザインもメカニズムも仕事のマネジメントも予算も、すべてを見られる人。そういう人が居て、はじめてフィロソフィが生まれるし、ブランドになれるのです。
商品というのはモノではなく「欲しいと思う心を創ること」なのです。廉価なクルマなら多様性、スーパーカーなら圧倒的な動力性能や感動、ほかにはない価値などカテゴリーによってそのキーワードは異なりますが、共通しているのは「販売店に見にいこう」と思う心を創ること。商品開発というのは、欲しいと思う心を創ることであって、いいモノを造ることではないのです。いいクルマを造ろうという発想をするから、みな同じようなものになってしまう。常識でものを考えない。それが私のクルマ開発法の最も重要なテーマなのです。
このほか、開発者目線による国内外最新モデル70車の試乗&採点や、来るべき自動運転時代への重大な警告、また仕事のこと、生きることへの水野理論が満載。クルマ好きのみならず、前向きに生きたいと願うすべての人に読んでいただきたいムックです!
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