シリア危機:子どもの半数、平和を知らず~町に戻った家族に不発弾の脅威【プレスリリース】

3割の子どもが学校を中退

公益財団法人日本ユニセフ協会

ドゥーマの中央モスク近くで、がれきの中に腰掛ける子どもたち。(2018年12月10日撮影) © UNICEF_UN0264256_Sanadikiドゥーマの中央モスク近くで、がれきの中に腰掛ける子どもたち。(2018年12月10日撮影) © UNICEF_UN0264256_Sanadiki

 

 

 

【2018年12月13日 ニューヨーク/アンマン/ベイルート/ダマスカス発】

 約8年前に紛争が始まってからシリアで生まれた子どもは推定400万人にのぼり、国の子どもの半数は紛争しか知らないまま成長していると、ユニセフ(国連児童基金)は本日述べました。子どもたちがどこにいようと、今、そして将来必要としている支援を届けることが喫緊の課題です。

 「シリアの8歳の子どもたちは、危険、破壊や死に囲まれて成長してきました」とユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォアは、紛争により荒廃したシリアへの5日間の訪問最終日に述べました。「子どもたちは学校に戻り、ワクチンの接種を受け、安全で守られていると感じられなければなりません。私たちは、彼らを助ける手段を持っていなければなりません」

 フォアはまず、家族、子どもやコミュニティに対し紛争がどのように影響を及ぼしているのかを見るために、シリアの中で新たにアクセスが可能となったいくつかの地域を訪問しました。

 東グータ地区のドゥーマでは、5年間の包囲が終了して数カ月の間に、避難していた家族がすでに戻り始め、現在町の人口は推定20万人に達しています。多くの家族は損傷を受けた建物に再び住み始めましたが、不発弾の危険は至るところに潜んでいます。2018年5月以来、東グータ地区では26人の子どもたちが、爆発性戦争残存物により死傷したと報告されています。
 

ユニセフが支援するドゥーマの小学校を訪問し、女の子と話をするヘンリエッタ・フォア事務局長。(2018年12月10日撮影) © UNICEF_UN0264217_Sanadikiユニセフが支援するドゥーマの小学校を訪問し、女の子と話をするヘンリエッタ・フォア事務局長。(2018年12月10日撮影) © UNICEF_UN0264217_Sanadiki

 「ドゥーマでは、家族が、がれきの中、水や食料、冬をしのぐための暖かさを必死で確保しながら暮らし、そして子どもたちを育てています」とフォアは述べました。「学校が20校ありますが、すべての学校には定員を上回る生徒が在学しており、若い教師の研修、本、学用品、ドア、窓や電気が不足している状態です」

 このように荒廃した状況の中、ドゥーマでは、ユニセフの支援の下、パートナーNGOが損傷を受けたモスクの大広間に非公式の診療所を開いています。

 また、ハマでは、ジェンダーに基づく暴力にどのように対抗するかを子どもたちが学ぶセンターを訪問しました。

 「紛争が始まってから、子どもや若者はどんどん暴力的になりました」と定期的にセンターに通う15歳のゼインさんは述べました。「いじめ、ハラスメント、殴打、児童婚―これらのすべての形態の暴力が増えました。子どもや若者は至るところで暴力を目にし、それを普通のことだと思っています。私たちは、より良い行動をどのように示すかについて認識の向上に努め、そうした暴力をなくさなければなりません」

 訪問の最終日、フォアは約100万人の人々が暮らすダルアーを訪問しました。本地域における避難率は高く、限られたサービスをさらに圧迫しています。

 地域のプライマリ・ヘルス・ケアセンター100カ所のうち半分は、損傷を受けているか破壊されています。

 ダルアーの町に水を供給する二つの給水所は以前戦闘が起きた地域に位置しているため、断水が頻繁に生じ、人々は給水車のサービスに依存しています。ユニセフは、20万人に安全な水を届ける16kmのパイプの設置を支援しました。

 地域の学校約1,000校の少なくとも半分が修復を必要としています。教室は定員数を超えています。戦争により数年間学校に通えなかった子どもがいるため、1年生の生徒の年齢にはばらつきがあり、6歳~17歳の幅があります。生徒の多くが学校を中退しており、シリア全土における中退率は29%です。

 「学校は、社会的統合の種がまかれる場所です」とフォアは述べました。「子どもたちが学校に行きたくなり、学校に通い続けたくなるような、質の高い教育を提供することが必要です」
 

ヘンリエッタ・フォア事務局長と一緒に手を振る、小学校に通う女の子たちと。(2018年12月10日撮影) © UNICEF_UN0264226_Sanadikiヘンリエッタ・フォア事務局長と一緒に手を振る、小学校に通う女の子たちと。(2018年12月10日撮影) © UNICEF_UN0264226_Sanadiki

 アクセスの改善により、ユニセフは保健、栄養及び子どもの保護における支援を拡大し、学校をサポートし、数年間学校に通えなかった生徒には加速学習プログラムの機会を提供し、教師への研修を行い、下水道ネットワークや水のパイプライン、浄水場を修復しています。

 そして、いまだアクセスが難しい地域について、ユニセフは、通常の、無条件でのアクセスを保障するようあらためて呼びかけ、それが可能な時には、パートナーと協力し即時に支援が届けられるよう取り組んでいます。

 シリア全土において、ユニセフは常に子どもの保護を呼びかけ、数年もの争いによって引き裂かれた社会構造を再びつなぎ合わせる必要性を強く訴えています。

 「紛争が始まって8年が経とうとしていますが、いまだ支援に対する需要は大きいです」とフォアは述べました。「しかし、紛争のさなかに生まれ、暴力に囲まれて成長してきた数百万もの子どもたちは、待っているのです。学びたい、遊びたい、元気になりたいと」

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■ユニセフについて
 ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。( www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する34の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■日本ユニセフ協会について
 公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国34の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。( www.unicef.or.jp )

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会社概要

URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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