はしか世界で流行:2018年、98カ国で前年より増加【プレスリリース】
ユニセフ、予防接種と啓発活動の必要性訴える
【2019年3月1日 ニューヨーク 発】
ユニセフ(国連児童基金)は本日、世界ではしかの流行が警戒すべき高いレベルで急増しており、増加数の74%が10カ国に集中し、過去にはしか根絶を宣言した国にも拡大していると警鐘を鳴らしました。
世界の98カ国が2018年のはしか症例数が2017年と比較して増加したと報告しており、予防可能であるものの死に至る可能性のあるこの病気の根絶に向けた前進を後退させています。
2017年と比べて2018年のはしかの症例数が最も増えたのはウクライナ、フィリピン、およびブラジルで、ウクライナだけでも2018年に3万5,120件のはしかの症例が報告されています。政府によると、2019年の1月―2月の2カ月間だけで、新たに2万4,042人が感染しました。フィリピンでは今年に入って(2月23日までに)、はしかの症例が1万2,736件、死亡例は203件で、2018年1年間の1万5,599件を大きく上回る勢いです。
「これは私たちへの警鐘です。この感染力の高い病気に対する、安全で、効果的で、安価なワクチンがあります。ワクチンはこの20年間、毎年百万人近くの人々の命を守ってきました」とユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォアは述べました。「この流行は一夜にして起こったわけではありません。現在の深刻な流行が2018年に始まっていたように、今日行動しなければ、明日、子どもたちに悲惨な結果を招くことになります」
はしかの感染力は、エボラ出血熱、結核やインフルエンザよりも高く、感染者がいた部屋では、感染者がいなくなったあとも最大2時間も他者が感染する可能性が続きます。空気感染により呼吸器に感染し、栄養不良の子どもたちや予防接種を受ける前の新生児の命を奪います。はしかに感染すると特定の治療方法がないため、子どもたちにとって予防接種が命を救う手段なのです。
ユニセフとパートナー団体は、これらのはしかの流行に対応するために、各国政府による数百万人の子どもを対象とした予防接種を支援しています。
ウクライナでは、ユニセフは現在実施中の全国での定期予防接種の前倒しおよびワクチンに対する躊躇への取り組みに加え、2017年から30人の命を奪った最近の集団感染を止めるための支援を行っています。保健省はユニセフと協力して2月に、最も感染が深刻な西部ウクライナのリヴィウ州の学校やクリニックで予防接種強化を開始しました。予防接種に対する比叡的な考え方や、以前のワクチン供給不足などの影響で、予防接種率が低かった地域です。
- フィリピンでは、政府、ユニセフおよびパートナー団体が協力して、17地域の900万人の子どもたちを対象にはしかの予防接種キャンペーンを実施します。キャンペーンは、ソーシャルメディアを使用して両親や保健員に対する予防接種の奨励を計画しています。
- ブラジルでは、2018年8月から9月にかけて、政府による5歳未満児1,100万人以上を対象としたポリオとはしかの予防接種キャンペーンが実施されました。ユニセフは予防接種を受けるよう啓発活動を行い、ベネズエラ人移民の仮設住居で活動する保健モニター員に研修を行いました。ユニセフはまた、1,924の自治体全域を対象とするMunicipal Sealプログラム(子どもの権利や福祉を実現するための地方自治体の能力強化を図る取り組み)にはしかの予防接種を含めています。
- イエメンでは、数年におよぶ紛争が原因ではしかの集団感染が発生し、2月には地方当局が、ユニセフ、WHO(世界保健機関)、GAVIアライアンスの支援を受けて、1,150万人以上の子どもに予防接種を実施しました。
- マダガスカルでは、昨年9月3日から今年2月21日までの間に、7万6,871人がはしかに感染し、928人が死亡しました。死亡者の大半は子どもです。政府はユニセフなどのパートナー団体と協力し、全114地区を対象とした予防接種キャンペーンを1月に開始し、25地区の子ども200万人以上が予防接種を受けました。2月には子ども140万人が予防接種を受け、3月には新たに390万人が受ける予定です。
脆弱な保健制度・施設、国内紛争、コミュニティの意識の低さ、油断や予防接種への躊躇などが、先進国、開発途上国の双方において集団感染を引き起こす要因となっています。例えば米国では、2018年のはしかの症例が791件と、2017年と比べて6倍になりました。最近では、ニューヨーク州とワシントン州で集団感染が発生しています。
「これらのほとんどの症例は予防可能なのです。しかし、子どもたちは感染する理由がない場所ですら、感染しています」とフォアは言いました。「はしかは感染する病気ですが、多くの場合、真の感染は、誤った情報、不信感や油断です。私たちはすべての子どもたちに安全に予防接種を受けさせるために、すべての親に対して正しい情報を伝えるためのさらなる努力に努めなければなりません」
ユニセフははしかと闘うために、各国政府、保健従事者、および両親に対して、病気の根絶のために次の行動をとるよう緊急に呼びかけています。
- ワクチンが安全かつ効果的で、子どもの命を守るものだということを理解すること
- 集団感染が発生している間は、生後6カ月から5歳までのすべての子どもたちに予防接種をすること
- 保健員が質の高いサービスを提供できるように研修し、必要な機材を提供すること
- 命を守るすべてのワクチンを届けるために、予防接種プログラムを強化すること
1. ウクライナ: 30,338
2. フィリピン: 13,192
3. ブラジル: 10,262
4. イエメン: 6,641
5. ベネズエラ: 4,916
6. セルビア: 4,355
7. マダガスカル: 4,307
8. スーダン: 3,496
9. タイ: 2,758
10. フランス: 2,269
<2017年にはしかの症例の報告がなく、2018年に顕著な数の症例がある国>
ブラジル: 10,262
モルドバ: 312
モンテネグロ: 203
コロンビア: 188
東ティモール: 59
ペルー: 38
チリ: 23
ウズベキスタン: 17
* WHO(世界保健機関)による世界194カ国におけるはしか・風疹のデータ(2017年・2018年)による分析。
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◆「はしか・風疹イニシアティブ」について
「はしか・風疹イニシアティブ」は、はしかと風疹の根絶に向けた世界的な努力を牽引している5つのグローバル・パートナー、ユニセフ、WHO、米国疾病予防管理センター(CDC)、国連財団、米国赤十字社による官民連携パートナーシップです。
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■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。( www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する34の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国34の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。( www.unicef.or.jp )
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